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十二 今後の方針。天秤に未来をのせろ。

 八月二十六日。昼前。


 各人寝不足なようだが、補充された食料による豪華な――遅めの――朝食に笑顔がこぼれる。レトルト食品や粉末のインスタントスープだが在庫を気にせず、腹一杯食べられる!


 やはり人間、食事が一番か。三大欲求は食欲・性欲・睡眠欲。俺は真ん中の欲求を満たせていません。誰に相談したらいいのかな?


 食事が終わった頃合いで(今回の皿洗いはねねだ)三郷さんが、


「朝春君達に相談があるんですが……」


 奇遇ですね。俺も貴方に相談があったんですよ。


 三郷さんに食事の必要は無いが、コーヒー(ブラック!)を楽しんでいた。『飲食の必要が無い』と『飲食が出来ない』は違う。味覚が残っているから食事は嗜好品扱いだそうです。それも良し悪しか?


 俺の部屋から持ってきた椅子に座った彼女は食事中に質問攻めを喰らった結果、ひとまず歓迎されたようだ。あえかは複雑な表情だが、あえかはアレだし。放っておいてもいいだろう。


「今すぐにとは言いませんが、拠点を移しませんか?」


 言いたい事はよく分かる。プレッパーとして拠点の防衛工作を怠ってきた俺も彼女と同意見だ。いつ、こちらの相談を持ち掛けようか、ソワソワする。


「でも食料は朝春が取ってきてくれるし、三郷さんが居るからゾンビは襲ってこないんでしょ?」

 ねねが戻ってきた。


「そうねぇ。それに三郷さんが傍に居ても、移動中にゾンビに見付かったらアタシ達は襲われるんでしょ?」


 母さんの言葉を肯定し、三郷さんは続ける。俺はソワソワ。


「駅直結のデパート。地下食料品店の食材を保管している大型冷凍倉庫。そこが無事なら一年程。市役所の災害備蓄食料が手つかずなら数年程。あなた方は生き延びられます。その間に日本が、世界が復興すれば良いのですが」


 周辺諸国、アメリカからの救助が無かった理由。八月三日に突如発生したゾンビパンデミックはほぼ、世界同時発生だったらしい。日本のような島国は他国からのゾンビ流入が無い分、『まだマシな国』に分類されている。


 だがしかし。

 ミサイル迎撃システムや航空戦力など、ゾンビ相手に役立つはずもなく。対人兵器保有量(弾薬含む)が少ない自衛隊の苦労が忍ばれる。


 ライフラインが停止しても飲み水さえ確保できればあまり問題は無い。

 ――その『確保』が難しいんだけど。


 結局の所、食料問題へと帰結するのだ。

 ――新たな問題を抱えて。


「新たな問題って?」

 ちょっとは考えろ、ねね。俺はソワソワで忙しいんだ!


「食料を奪いに来る人間への対応だよ」


 むしろこれは最初からの問題だった。俺達に出来た事はネットで自分の居場所と、それをに繋がる情報を書き込まない。夜間は照明を付けずに早めの就寝。明かりが灯れば生存者がここに居ますよと、宣伝しているのと同じだからだ。


 もし、武装した連中がやって来たらどうなっていたか……。食料は全て奪われ、女性陣は慰み者。最初に殺されるのはもちろん俺。


 ねねの母親は娘の居場所が蘭堂家だと知っていた。彼女から情報が漏れて世紀末ヒャッハー達によるお宅訪問。これが一番の気掛かりだったが、杞憂に終わって何よりだ。ふぅ。

 ねねの母親からの連絡は途絶えている。彼女は少し溜息を吐きつつ、我等の生活に笑顔で共に居る。


「ゾンビ達をマンション周辺に大量に配置したらどうでしょうか? 三郷さんなら可能ですよね?」


「あえかさん、それは無理です。ゾンビは夜間や雨天時はコンビニやスーパーに集まる習性があるんですよ。というか、屋根があって明るい場所が好きなんだそうです」

 チートゾンビのクセに惰弱だ。


「……あ、逆に言えばそういった場所はゾンビに守られてる。そうとも言えるのね?」


「はい。ついでにこの付近のコンビニやスーパーの腐った生鮮食料品の廃棄もお願いしてあります」

 チートゾンビのクセに働き者だ。


「ゾンビって便利なのねぇ……」

 うちにも一人欲しいわぁ。なんて物騒な冗談が出て来た。母さん、三郷さんもゾンビ経験者ですよ。今は彼等の上司のカーミラだけど。


「エントランスに収まる程度でしたら配置できますけど、どうします?」


「お願いします。なるべく強面なので」


「あれ? 朝春なら可愛い女の子ゾンビの方が良いんじゃないの?」


 黙れねね。俺の美少女達がヒャッハー共に傷付けられる可能性があるから不許可だ。


 その気になればマンションには何処からでも侵入出来るが、気休め程度にはなるだろう。ソワソワ。


「どっちにしても根本的な解決にはならないけどね。……俺としては、三郷さんは食料自給を問題にしていると思っているんですけど?」


「はい。自分がいれば拠点であなた方を守るのは難しく無いのですが、長期的な観点から見ればやはり自給が望ましいかと」


 ちゃんと理解している。俺は。自給生活が成立するまで大変だろうなぁ……。


「じゃあ、今後の方針として」


 俺と三郷さんで食料&その他の調達。

 女性陣三人はネットで農業関連のお勉強&情報収集。畜産系もかな。あと水産系もお願いします。

 知らない人が来ても対応しない事。


「これくらいかな?」


「農業関連って家庭菜園を作れば良いの?」


「ここに居る間はベランダでプランター栽培かな? 引越し後は畑で各種野菜、可能なら米も欲しいけど麦栽培のが楽なんだよなぁ。今後の主食、パンと麺でいい?」


 農業機械も何時まで使えるか。ガソリン的な意味で。ソワソワ。


「うぇー、畑仕事かぁ……。あたし虫苦手なんだよねー」


「私もです。でもいつまでも兄さんだけに頼るのは良くないと、三郷さんは言いたいんですよね?」


「……はい。家事も大事な仕事だと理解はしていますが、やはり労働は分担するべきです」


「やっぱり一家に一人ゾンビを……」


 母さん! ボケはあなたの役割じゃないよ!


「引越し先も考えないといけませんね。山にするか、海にするか」


 難易度でいうなら海の幸がノーマルモード。でも山菜や川魚も同難易度かな?


 いや、飲み水を考えると川の上流の水が綺麗な場所が……いや、海の幸や何より塩を……塩は消費期限が無いからスーパーにある分で一生分賄えるかも。いや、畑のある場所が望ましいし、猪や鹿も狩って……ソワソワ。


「兄さん、魚はともかく、獣はどうやって捕まえるんですか? あと、さっきから鬱陶しいです。

 よく分かりませんけど、あんまりソワソワしないで下さい」


 スミマセン。


「罠か鉄砲……だよなぁ。三郷さん詳しい?」


 言葉遣いから徐々に距離を詰める作戦だ! 幸いにしてこの女は既に俺無しでは生きていけない身体だしな! ハハハ!


 女性陣から冷ややかな目で総スカンを喰らう。また新しい扉が開かれそうだ。なんだかゾクゾクしてきた!


「……ハァ。狩猟用の主な鉄砲だと空気銃や散弾銃、ライフル銃がある……としか。罠は目標によって色々種類があるようですし、どちらにしても獣の習性を学ぶ必要があります」


 ですよねー。ジビエは一日にして成らず。ジビエの道も一歩から。


「長々と話していても仕方在りません。朝春さん、今日はスーパーに行ってみましょうか?」

 俺の性欲の相談は!?


「三郷さん。欲しい物リストです。……息子をお願いします」

 俺のムスコの相談は!?


「心配無用です。今日の目標は冷凍肉です。期待していて下さい! ……あと、自分のことは『あきら』と呼んで下さると、嬉しい……です」


 ライダー風、巨乳美女がモジモジ。これが『萌え』なんだね。男、朝春、十七歳。夏の日の2021。萌えを知る。


 それより俺のソワソワはどうなるの!?




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