表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case11.追求される助手見習いと提案する悪役令嬢
97/157

11-8.それは求婚とは言えないのでは

クロエが慌ててルーカスにしがみつくと、ルーカスはクロエを抱きとめてベンジャミンに向いた。


「クロエが言うなら仕方ない。もう聞けないな。それじゃベンジー、そろそろ席を外してもらえるか?」

「あら、どうして?」


対策の話はまだ終わっていない。


クロエが首をかしげると、ルーカスはにっこりと笑った。


「練習するからさ」

「練習?」

「イチャイチャする練習」

「でもしないって……」

「そんなこと言ってない。無理はさせたくないって言っただけ」

「無理を」

「今、してないよね? 自分から抱きついてくれたし」

「抱きついてなんて」

「だからベンジー、席を外して? お前がいるとクロエが恥ずかしがるから」

「元々そのつもりだ。せいぜい練習成果を期待してるよ。おっと、俺には見せなくていい、俺のいない舞踏会かなんかで頼む」


ベンジャミンが言いながら席を立った。


「え、ちょっとベン、待って。私、練習なんてできないし!」

「内容はルーカスに聞いてくれよ。文字通り、手取り足取り教えてくれるさ。俺は当てられたくないから部屋に戻るね」


ベンジャミンが席をさっさと離れていく。


「ベン! ちょっと!」


イチャイチャの練習って? 何? 


……逃げよう! 


クロエは慌ててベンジャミンの後を追おうとした。だが、ルーカスはクロエの手を握って離してはくれなかった。


クロエはルーカスをキッと睨んだ。


「何、なんでなの? しなくてもいいようにしたいって、ルーカス、あなたが言ってくれたじゃないの!」


信じて損したわ……クロエが半泣きでいうと、ルーカスはしょんぼりと、クロエの眥に溜まった涙を指で拭った。


「僕は……考えなしかな?」

「そうね……私相手では、あなたはいっつもそうよ。立派な侯爵令息にならないから……やっぱり、よくないんじゃないかしら?」


クロエがふてくされて言うと、ルーカスはクロエの両手を握り直した。


「逆だ。僕は、クロエといると、それだけで元気が出るんだよ。気持ちだってとても落ち着くし、幸せな気持ちになれる。だから、ずっと一緒にいて欲しいって思っているんだ」


なんと。十歳の時と同じセリフだ。ベンジャミンの言葉を聞いてたのかというくらいに。


あれから変わってないのか、回り回ってその考えに落ち着いたのか。


近づいてきたルーカスの髪が頬に触れ、クロエは思わずルーカスの髪を指で梳いた。


クロエの憧れの植物、ツル科の植物ホルコスールより、柔らかで、ずっと触っていたくなる優しい髪の毛。


思えば、ホルコスールを見たときに、クロエはルーカスを思い出していたような気がする。カサカサと震える葉の様子が、ルーカスの揺れる髪のようで。


クロエはびくりと髪から手を離した。


やだ。そんなこと思ってたんだ。ひどい……ルーカス病だ。


「どうしたんだい?」


ルーカスが顔を上げ、クロエの髪をゆるりと引っ張った。


「な……なんでもないわ……」


ルーカスはどうして、こんなに近づいて動揺しないのかしら。クロエにはそれが疑問だった。でも、動揺しているのは隠しておこう。面白がって、慣れるためと言って距離を縮めてくるに決まってるし、その上、甘やかしてくるに決まってる。クロエはどちらにも慣れてないのだ。


「……花を贈ってもいいかい」


不意にルーカスが言い、クロエは思わず切り返した。


「言っておくけど私、切り花より咲いている花の方が好きよ」

「知ってるよ。でもプロポーズした時に受け取ってくれたのは、花束だったからね。最初からやり直したいんだ」

「何を?」

「プロポーズを」


クロエはルーカスをじっと見つめた。


「今度はなんて言うつもり?」


すると、ルーカスは少し考え、ふっと笑った。


「まずは……『僕をプラントハンター、クロエ・ソーンダイクの秘書にしてほしい』」


いや、それ、プロポーズじゃないからね。クロエは相変わらずの調子に呆れながら、話を促した。


「それで、どうするの?」

「もちろん、君に探偵してもらうんだ。植物採集に行く先々で、謎を解決してくれるような、ね」


それはずいぶん面白そうだ、それがクロエでなければ。クロエは肩をすくめて戯言に付き合うことにした。


「探偵にはならなくていいって言ったのに」

「うっかり探偵もしてしまうプラントハンターだよ。僕が君を守るから、危険なことはないよ。いいだろう?」

「それじゃ、秘書の報酬は何がいいかしら?」


すると、ルーカスはにっこりと微笑んで即答した。


「君との結婚」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ