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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case10.ねじれた結婚相手と目覚めの婚約者
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10-6.諦めたくない

「そこは、ルーカスとの仲を見せつけてやる、ってなるところでは?」


ベンジャミンのツッコミにも構わず、マリアンヌは両手を叩いて喜んだ。


「素晴らしいですわ! クロエ様! 私、是非とも応援いたします! それでこそクロエ様です!」

「え、ちょっと、マリアンヌ様も、それはないでしょ? 俺たちはクロエとルーカスの……」


再度のベンジャミンの言葉にも、マリアンヌは心を動かさなかった。


「それはそれ、これはこれですわ。私はお二人のファンでもありますが、クロエ様お一人のファンでもあります。いつだって私を助けてくださいましたし、お優しく、強くあられました。ええ、クロエ様がお幸せになるために、ルーカス様が必要でしたから応援しておりましたのよ! ですから、クロエ様が御心のままに生きられるのが、一番いいのですわ!」

「嘘だろ……」


ベンジャミンが明らかに肩の力を抜いている。おかしい、変なことは誰も言っていないはずだ。


「マリアンヌ様、励ましていただけるなんて、そのお心遣いに感謝いたしますわ」


クロエはマリアンヌの手を掴み、胸の前で合わせた。


「でもね、私を応援する以上にマリアンヌ様も身を守らねばなりませんわ。マリアンヌ様は男爵家出身ですもの、その存在感から王太子殿下の候補になられたとしても、茨の道でしたでしょうね。ですから、愛されると同時に、あんな風に嫉妬や横恋慕でいじめられたりしたのですわ。王太子殿下のお相手候補となれば、正攻法ではなかなか勧められませんもの……でしょう、ベン」

「えぇーと……うん、……そう……だね……」


ベンジャミンが言葉を詰まらせ、マリアンヌが驚きに目を見開いて、ベンジャミンに振り向いた。


「まぁ! 私も候補に?」

「そうでした。はい、今でも」

「まさか……だって私、男爵令嬢ですよ?」

「もし王太子殿下が気にいることがあれば、一度、縁のある伯爵以上の貴族の家へ養子に入ることになるでしょう。それだけです。お膳立ての方法は決まっています」

「他にどれだけの候補が?」

「……初期は八人ほど。入れ替わり立ち替わり、五年経って、その器があるとされているのは、四人」


クロエの問いに、ベンジャミンが指を四本立てた。


「四人……私とマリアンヌ様と、あと二人。マリアンヌ様は王太子妃になりたい?」

「いいえ、考えたこともありませんわ! 私の地位にすれば大それた考えです。そんな……そりゃ素敵な方ですけど、私が王太子妃だなんて。いくらなんでも、無理がありますわ。あえて言わせてもらえれば、愛人程度ならなんとか?」

「愛人なんて、そんなこと、誰が許すの? あなたには王妃になる器があると見なされてるわ。遠国の使者からも言われていたわよね。私もそう思うの。あなたは愛らしいし、人に流されない強さもあるし、正義感もある。私がなりたくないから言ってるわけじゃないのよ。庶民に近い男爵という地位も、支持される可能性が高いわ。あなたのような方が、将来の王妃になる方がいいかもしれない。ねぇ、ベンはどう思う?」


ベンジャミンは目を瞬かせ、言葉を濁した。


「俺は……何も……」


クロエはその先を待たず、決意表明として宣言することにした。


「私は国に帰っても、何があっても、王太子殿下と結婚なんかしないわよ。例え、身分を剥奪されても断固として結婚を断るわ。むしろその方が、再出発しやすいってものだわ。ルーカスと陛下の約束なんて知るもんですか。私の将来を勝手に決めて、諦めたり期待したりしないで欲しいわね。そうよ、ルーカスと結婚しようとしまいと、プラントハンターを目指すわ!」


ベンジャミンが唖然としてクロエを見つめた。視線を避けるように、クロエはマリアンヌに顔を向けた。


「マリアンヌ様はどういたします?」

「私?」

「私が抜けたら候補は三人よ。うち一人、確実に次の候補になってるでしょう。私と同じように、標的にされていたんですもの。ねぇ、マリアンヌ様」

「私は……私も、嫌です! だって、私、私……」


そう言って、マリアンヌは目を潤ませてベンジャミンを見上げた。だが、ベンジャミンは首を傾げただけだった。


「マリアンヌ様も結婚願望がないんですか?」


違うでしょう。


マリアンヌを観察してきたクロエの勘が訴えている。あなたじゃないの? とクロエは言ってやりたくなったが、それはこちらの話だ。


「ベンはマリアンヌ様のお話を聞いてあげてくださいませ。どうするかお考え下さい。私はルーカスのところへ行ってきますから」


クロエはマリアンヌに微笑むと、ぽっと頬を赤くした彼女をおいて、温室を急いで出た。ベンジャミンが何か言っていたが、遠くて聞こえない。


以前、ベンジャミンが言っていた言葉を思い出したなんて言ってやらない。


『……手紙を随分やりとりして、親しいと思っても、それに自惚れるなってこと?』


ベンジャミンの言葉は、比喩ではなく、マリアンヌのことだ。


”自分以外の男に、彼女は手紙のやり取りそんなことをしない”、そう希望していたってことだ。つまりそれは、マリアンヌにすっかり惚れ込んでいる以外に何もない。本人は認めないでしょうけどね。


クロエはそのまま、勢い込んで自分の部屋に戻った。だが、部屋には誰もいなかった。当たり前だが、ルーカスは本人の部屋に戻ったらしい。


クロエはそのままルーカスの部屋に向かった。






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