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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case10.ねじれた結婚相手と目覚めの婚約者
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10-3.僕の愛する悪役令嬢

しばらく睨み合うように見つめ合ったあと、ベンジャミンは頭を下げた。


「……はい……嘘です……」


嘘をつくなんて。信頼していたのに。だから相談したのに、ベンジャミンだってルーカスだって、自分には大切なことは何も言ってくれないんだ。


「どうして」

「私がお願いしましたの!」


追求しようとするクロエの腕に、マリアンヌが抱きついた。


「まぁ、マリアンヌ様が? どうして?」

「私、異国の舞踏会で、偶然にベンジャミン様にお会いして、クロエ様とルーカス様の幼馴染であると聞いて知り合ったのです」


やっぱり。クロエは思ったが、マリアンヌが黙っているなんて不思議だ。


「婚約なさってから自然に知り合ったようにするつもりでしたのに、今日はお二人が心配で失敗してしまいました……ベンジャミン様、申し訳ありません」

「いや、俺は……構いませんよ。信用していただけただけで、充分ですので」

「信用って?」


クロエが首をかしげると、マリアンヌはもじもじしてうつむいた。


「最初は、警戒してしまいましたの」

「警戒?」

「だって、お二人の邪魔をする間男なのかと思ったんですもの」


恥じらうマリアンヌに、クロエは目を丸くした。


「な……間男?」

「もちろん、ベンジャミン様は素敵な方です。クロエ様が結婚するに値する方ですわ。でも、クロエ様はやはり、ルーカス様とでなくてはと思っていて……でもクロエ様が躊躇なさるのは、もしかしたら横恋慕しているベンジャミン様のせいなのではないかと」

「濡れ衣です」


ベンジャミンが具合悪そうに言う。それについては同感だ。誰もそんなこと考えたことがないだろう。


「そうです。お話ししてわかりました。ベンジャミン様も、お二人のことをとても心配してらしたので」

「はい?」

「ですから私たち、お互いの情報を共有することにしたんです。ベンジャミン様は異国の地に留学なさっておりますから、お二人の性格なんかを聞きましたわ。私はお二人の近況を相談しておりましたの」

「相談?」

「どうしたら、ルーカス様はクロエ様とお話できるのか……とても大変でしたわ」

「話……」

「ですから、あのプロポーズの日は興奮してしまって! 少しお話になれたと思ったら、突然のプロポーズ! 感激しましたわ。ですから、すぐにベンジャミン様に報告してしまいました」

「……知ってたのね、やっぱり」


しかもマリアンヌから聞いていたなんて。


ベンジャミンがクロエに会いに来た時、探偵の話を知らなかったのは、マリアンヌからの報告が遅かっただけにすぎないのだ。


「ごめん」


頭を下げたベンジャミンに、クロエはため息をついた。


「いいのよ。私が悪いのだし」

「クロエは悪くないよ」

「だって私、悪役令嬢なんだもの。すっかり幼馴染のあなたたちに迷惑をかけてしまったわ」


ベンジャミンは頭を横に振った。


「それは違う。クロエは悪役令嬢なんかじゃない。君の評判を落とすために、仕立て上げられたんだ。自分だってわかってるだろう? なのに迷惑かけまいとルーカスを避けまくったじゃないか。おかげであいつは君にずっと嫌われてると思ってたんだからな」

「きらわ……?」

「避けられるし話しかけられないし、こんな自分は嫌われて当然だって、勝手に思ってたんだ。あの、全ての道が苦もなく開かれる、誰からも好かれるルーカスがだぞ? 君へのプロポーズだって、崖から飛び降りるくらいの勇気だったんだからな」


クロエは目を丸くした。


「私が……ルーを嫌うはずがないわ」

「それはあいつに言ってやってくれ。三年前のあいつと話しただろう? ”ルー”はいつだって、クロエのことを考えてるんだ」

「私こそ……でもルーはマリアンヌ様が……」


すると、マリアンヌが懇願するようにクロエを見た。


「あぁ、クロエ様。今まで私、ルーカス様の名誉のためにはっきりと言えませんでいたけど……ここで言ってしまいます。私とルーカス様がよく話していたのは、私がクロエ様の話を聞きたかったことにしておりましたが、本当は、ルーカス様がクロエ様の話を私から聞くためなんです。クロエ様の好きなものや楽しんでることを、ルーカス様は知りたくて……」

「なんでそんな……遠回りなことを」

「もちろん、愛してるからですわ! そうおっしゃってたでしょう?」


言って……たのかしら?





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