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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case09.幼き日の婚約者と延長線上の幼馴染
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9-5.未来の僕

クロエは宝石箱にルーカスを連れて行き、箱を開けた。ルーカスの目が輝く。


「……つけてみて!」

「いいわよ」


クロエがつけると、それは本当によく似合った。久しぶりにつけたクロエも、ルーカスと同じように長いこと眺めた。高価なものをもらってしまった罪悪感でじっくり見たことがなく、こうしてみてみると、繊細で、いかにもルーカスが好きそうで、クロエのイメージに合っていた。


「僕があげたの? 僕ってすごいセンスいいんだね!」

「どうかしら。おおかた、宝石商に勧められるままに買ったんじゃないかしら」


クロエが言うと、ルーカスは不安そうに目を伏せた。


「僕……成長した今の僕は、クロエに信頼されてないのかな?」


ギク。


「な……なんで?」

「似合ってるのに、嬉しそうじゃない」

「そんなことないわ。ただ、高価なものだから……緊張してしまうの」

「クロエが緊張してるってことは、やっぱり僕、クロエに無理させてるんだね。僕は……もっと頑張らなきゃ。クロエに認めてもらえるように」


なんと。今の傍若無人な人柄からは思えないほど、繊細な発想だ。


クロエは慌ててルーカスの頭に手をやり、優しく撫でた。子供だから。十歳だから、大丈夫、だよね?


「まぁ、そんな。あなたはいつだって頑張ってるわ。だから疲れちゃうのよ。もっと肩の力を抜いていいの。そのために私が必要なら、一緒にいる。約束する」

「……ほんと?」

「本当。私は無理なんてしてないし、あなたと過ごすのは楽しいわ」


言いながら、クロエは自分が嘘をついていないのを感じた。


そうだ。なんだかんだ、無理をせず、文句を言えるのも、相手がルーカスだからで、私はそれを楽しんでいたんだわ。


「ただ、……探偵にはならないだけ」

「探偵?」

「うん……そうね。今のあなたは知らないことだけど、あなたは探偵に憧れていて、私になって欲しいって言ってたのよ」

「そうなの? 僕って馬鹿だね。自分でなればいいのに」

「うん。だから、そうアドバイスしたわ。そしたら、自分でできるようになったの」


すると、ルーカスはまた嬉しそうに笑顔になった。


「それなら、クロエに無理させないで、一緒に遊べるね!」

「そう思う?」

「うん! 僕はクロエといられるなら、それだけで元気が出るよ。とても落ち着くし、幸せだ。だから、一緒にいて欲しい」


こんなにうっとりした表情で言われてしまうと、それはそれで破壊力があった。中身は十歳、言葉に深みがあるはずがない……のだが、さすがに動揺してしまう。


クロエはがっくりと頭をもたげ、ルーカスの顔が見えないように深呼吸をせざるをえなかった。


「そうね……今でもそうかしら? それなら……最初から、そう言ってくれれば……良かったのに」

「言わなかった……?」


ルーカスが少し不思議そうに言い、今度はクロエの後頭部を撫でた。いつもの手慣れた手つきではなく、子供らしい不器用さで、クロエは少しだけ安心した。


「だからなのかな。クロエはどんどん離れていっちゃった……クロエじゃないなら、誰だって同じだ。どうだっていい。クロエが笑顔でいてさえくれればいいんだ。でも、……クロエは……だんだん楽しそうじゃなくなって……なく……なって……楽し……」

「ルーカス? どうし」


急にルーカスの手がどさりと落ち、クロエにかぶさってきた。


「ルーカス!」

「眠い……すごく眠いんだ……」

「あら……どうしましょう」


クロエは、そういえば症状の変化について聞いていないことに気付いた。そうしている間に、ルーカスがぐったりとクロエに体を預けてくる。


眠いと言っても、急にこんなに眠くなるなんて、薬の副作用かもしれない。そうよ、記憶を戻すなんて薬、大変な負担だもの。


クロエは違法な薬と合法な薬の違いを考えながら、眠りに落ちかけているルーカスをベッドに引きずり、急いで部屋から出た。


「誰か、お医者様を呼んでくださる?」


すると、ドアの向こうで待機していた侍従や侍女たちがバタバタと走り回る。


「クロエ……?」


急に名前を呼ばれ、クロエは振り返った。ルーカスが訴えるようにクロエを見ていた。


「何? どうしたの? 眠っていいのよ。何か欲しいものはある?」


クロエは安心させるように笑顔を崩さずに、ルーカスの元へ向かった。ルーカスはいかにも眠そうに目をこすりながら、クロエの手を握ってきた。


「僕、どうなっちゃうんだろう? 眠ったら、クロエに会えなくなりそうで、怖いんだ……」

「大丈夫よ、そばにいるから」

「いてくれるの?」

「もちろん」


すると、安心したように、ルーカスはクロエをじっと見た。


「クロエ、クロエは……」

「なぁに?」

「僕が好き?」


そんなシンプルなことを。どうやって答えればいいんだろう? 大人の自分で? 子供の自分で?


「……あなたは?」

「僕は好きだよ。ずっと好き。今でも、だよね?」

「そんなの……わからないわ」


全然わからない。ルーカスはだって、そんなこと、一言だって言ってくれなかったのだから。


クロエが戸惑っている間に、ルーカスは気を失うように眠り、侍従が医師を連れて戻ってきた。






※ルーカスの症状を書き直しました。



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