7-5.推理の仕方
「”なんでもできる”からかな」
「それは……もったいないわね」
「そう?」
「ええ。ルーカスが解決したら、きっととても素敵だろうにって思うの」
クロエは自分でできる限り甘えて微笑んだ。もしかしたらこれでやってくれるかも?
ルーカスはしばしためらった後、クロエの鼻をちょんと突いた。
「……よし。やってみよう」
やった! クロエは小躍りしそうになるのを抑え、テーブルに向かうルーカスにしずしずとついていった。
ルーカスは机を眺め、栓の開いたワインを見て中を確認し、一通り調べている。周囲を見て、人の流れを読み、また考え込む。
そうよ。ルーカスだってできるはず。私よりずっと頭がいいんだもの。クロエは思いながらその様子を見ていた。
「まず問題は彼女が狙われたのか、そうじゃなかったのか、だけど……多分、彼女が標的だったんだと思う。そして、相手は彼女をよく知っていた」
しばらくして、ルーカスが考えながら言った。
「どうして?」
「彼女が必ずワインを飲むことがわかっていたからだ。彼女の家のような者が、自分の家が提供したワインを、飲まないはずがない。お義理でも必ず一杯は頼んで、一口は飲む」
「なるほど、そうね」
「騒ぎを起こしたいだけというのは考えにくい。子爵は特に恨みをかうような人じゃない。穏やかな場を好む人だ。だから、僕だって来たんだ」
「そうだったんだ」
意外だと思ってクロエが驚くと、ルーカスがクロエにくるりと向いた。
「だってクロエが着飾ったところが見たかったんだ。僕の贈ったパリュールだって、こうした時じゃないとつけてくれないだろ?」
「当たり前よ。普段どうやってつけろっていうの」
「だからさ。舞踏会やお茶会には出られるだけ出ようと思うんだよ」
どうしてそんな発想に……
「わかったわ。それはいいから、結局、誰がどうしてこんなことをしたの?」
パリュールのことなど、これ以上、話したい話題でもない。
すると、ルーカスはすぐに話を戻した。
「理由はわからない……でも、一番簡単なのは、貴族が給仕に頼む、もしくは、給仕が自分で仕込むことだ。特に、貴族が頼むのは一番手順がいいだろうね。空のワインボトルを手に入れるのも簡単だし、ワインビネガーも簡単に手に入る。お金で給仕にやらせればいい。給仕が全てをこなすのは難しいよ」
「そうね……」
「でも、誰がやったかなんて、わからないな。彼女を恨むにしたって、僕はここでの人間関係はわからないし……考えられるのは、彼女の婚約者だけど、利害からすると考えにくいね。せっかく名誉貴族で、貴族の身分を維持するために、既存貴族と結婚するのだとしたら、嫌がらせなんて意味がないから」
「身分の維持?」
「あぁ。名誉貴族は一代限りだけど、その間に、既存貴族と結婚したりすれば、その子供も貴族になれるから」
「それじゃ、彼はそのために結婚を?」
それにしては、優しく彼女を見ていたけれど……それにあの人は、そんなに自分を隠すのが上手い方ではなさそうに見えた。
「いや、それはわからないな。見た限り、うまくいっているように見えたけどね」
「だといいけれど……」
だとすると、グレゴリーより、ジークリンデの方にわだかまりがあるのかもしれない。
「自作自演……?」
クロエは思わず呟いた。
「え?」
「彼女の自作自演かもしれないわ」
「どうして彼女がそんなことをする必要が?」
「わからない……結婚したくないのでは?」
「それなら、断ればいいだろう。既存貴族の方が、圧倒的に立場が強いんだから」
「断れない理由がある……とか?」
クロエは言ってみたが、しっくりはこなかった。それでもルーカスは、理由を検討してくれていた。




