6-6.対応策の提案
「違法な植物?」
「えぇ。華やかで素敵な見た目の花でも、花粉や蜜が人間に悪影響を与えるため、販売が禁止されたものもあります。以前、花を買った家でトラブルが絶えなくなり、調べてみたら活けていた花が原因だったということがありまして……」
「まぁ! そのようなことが?」
「えぇ、とても素敵な花なので、気に入れば間違ってなんども買ってきてしまうこともありますから、それかもしれないと思ったのですが……研究所でも研究しているはずです。お心当たりはありませんか?」
「どうかしら。危険植物は、私たちはあまり情報を教えてもらえないの。当たり前ね、危険なんだから。あぁ、でも、そうよね。おかしいと思ったわ。急に家中が不穏になって、安心できなくなってしまったの」
その症状は聞いたことがある。
「それは……”疑惑のジャスミン”かもしれません」
「疑惑の……ジャスミン?」
「ジャスミンに似た花で、とてもいい香りなんです。でも、その香りには、幻惑の作用があって、悪い方へ悪い方へ、心を向かわせるんです」
「ジャスミンに似た花……? あなた、もしかして、あれが……?」
花に詳しい二人はすぐに思い当たったようで、目を合わせて頷いていた。神妙な顔で、クロエに視線を戻す。
「その花は、心の闇を暴くのにいいと持てはやされたこともありましたが、それを利用した犯罪も増え、結局、禁止になりました。普段の生活で、改心しようと努力している人もいますし、悪い方へ行きたい人はいませんからね」
「その花を利用した犯罪って?」
「私が今思いついたことなんですが……お屋敷の方で、間違えて買ってくるような人がいないとすれば、誰かが、故意にその花を持ってきたということです。考えたくはありませんが」
「誰かが……故意に……?」
ローゼは顔色を青くして考え込んだ。
「もちろん、その人が効果を知っているとは限りません。他の人に頼まれたのかもしれません。例えば、奥様がこの花を好きだから、とか……」
「えぇ、私はジャスミンが好きです。特に花の形が好きで、香りも……ですから、その花を褒めたこともあります。でも、まさか」
「信頼できる侍女や使用人はおりませんか? この話をしても大丈夫そうな方は?」
「一人……私に家からついてきた侍女はおります、でも、……そもそも、彼女たちの誰かを疑っていることを、彼女に知られたくないのです」
「あぁ、わかります」
犯人はこの中にいる! と言って、後腐れがないのは、外部から来た探偵だからであって、これからも共に過ごす相手では、しこりが残りそうだ。
「そうですね、でしたら……息子さんか、お嬢さんの力を借りることは可能でしょうか?」
「子供の?」
「えぇ。若い親族の方でもいいかと思いますが、なるべく外部に漏らさないためには、お子さんの方がいいかと思いますわ。調べるのが奥様たちですと、警戒されてしまうかもしれません。元に辿り着く前に逃げられてしまう可能性があります。ですが、若者なら、ギリギリまでそのことを隠して調べられると思います」
「なるほど……そうね」
思い当たるのか、ローゼは二つ返事で頷いた。
「どちらにしろ、花をお調べすれば、すぐに分かることでしょう。買ってきた使用人がわかるのなら、入手経路と、意図がわかります。そうすれば、おのずと、犯人もわかるでしょう」
「本当に……誰かが故意にやったと?」
「そうでなければいいと思いますわ。そのためにも、お調べになるのがよろしいでしょう」
クロエがにっこりと微笑むと、ローゼは意を決したように頷いた。ベルトルトもそれに合わせてローゼに寄り添った。
「お話を聞いていただき、感謝いたします、クロエ様。家に戻ったら、早速、調べてみることにいたします」
そうしてその場はお開きになり、クロエたちは帰途に着いたのだった。




