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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case05.相談に乗る悪役令嬢と悩ましい婚約者
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5-4.妻のご機嫌

クロエも見回したが、それらしき人は見当たらない。病気かしら? クロエが心配しかけたところ、ベルビンはため息をついた。


「あ、あぁ、……一緒なんだがね、どこかへ行ってしまった。先日、君の家のお茶会で、令嬢に罪を着せようとした男を知っているかい? あいつが妻の幼馴染でね。とても落胆しているんだ。そして、男なんて信用できないと言い出して」


ニック・ブリッジか……クロエは諸悪の根源の事を思い出していた。あのお茶会でニックが何もしなかったら、自分はここにはいなかった。それがいいことなのか嬉しくないことなのか、クロエにはだいぶわからなくなっていた。なんにせよ、外国の植物を見られるのは嬉しいことだ、そのことだけを前向きに考えよう。


「どうして? 関係ないだろう?」

「あぁ。でも、彼は婚約者の令嬢とはとても仲が良かったんだよ。愛人がいたなんて……その上、彼女を陥れて婚約破棄し、マリアンヌ嬢を手に入れようだなんて、そんなこと考えるような男には見えなかった。天使と言われているけれど、マリアンヌ嬢は魔性の女なのだろうか……」

「そんなはずはありませんわ。マリアンヌ様は素敵な方です!」


クロエが言うと、ベルビンは目をパチクリとさせた。


「え、でも、……あれ?」

「マリアンヌ様は確かに天真爛漫なところがありますが、それを補って余りある慈悲深さと可愛らしさがあります。媚も思惑もなく、あれだけ他人に優しくできる方はいらっしゃいませんわ。いつだって目の前の相手を気遣うことのできる良い方です!」


クロエが言い終わる頃には、ベルビンの戸惑いは収まっていた。概ね、クロエの言ったことはあってるからだ。もしかしたら、クロエが同意するようなセリフを言おうとしただけの、リップサービスだったのかもしれない。だったら悪いことをした……


しかし、ベルビンは反論してきた。


「だが、彼女に出会ってから、妻が機嫌が悪くて……」

「まぁ、それは……あぁ、あなたが目を奪われたのですね」


クロエの言葉に図星を指されたように傷ついた顔をしたが、ベルビンは冷静に答えた。


「……けれど、それだけです。別に気になっているわけでもないし、美しかったなと思うくらいで」


クロエは心から頷いた。


「わかります。マリアンヌ様のデビューは本当に衝撃的で、素晴らしく可愛らしかったんですもの。ルーカス様のお母様も、すっかり大好きになってしまわれて、本当に仲がよろしいんですの。ルーカス様は何を考えて私などと婚約してしまったのか、疑問でなりませんわ。ルーカス様はマリアンヌ様と結婚なさった方がいいですわよね?」

「クロエ?」

「あ……ごめんなさい」


しまった。言いすぎた。ルーカスの噂話に、うっかり同調してしまった。


「君は僕の愛を疑うのか?」

「疑ってるわけではなくて……」


そんなものないでしょう、あるのは友情なんだから。クロエは言おうとしたが、ルーカスの凄まじい微笑みに、意見は打ち消された。端から見てると陽だまりみたいな笑顔なのに、クロエにはブリザードを背負っているみたいにひんやり感じる。凍りそう。


「はぁ……羨ましい。クロエ様は君の愛を疑わないんだな」


違う、と言おうとしたが、それより、ベルビンの言葉が気になった。


「奥様は……ベルビン様のことを疑ってらっしゃるのですか?」

「あぁ、おそらく先日のことででしょう……面目ない」

「でも、目が奪われて、……それだけで、ですか?」

「それが、よくわからないのですよ。マリアンヌ様に会った後も、お互いに、すごい可愛らしい清廉な方だと、話題にしていたくらいなんです。むしろ妻の方が気に入ってしまって、もっとお話ししたいと言っていたくらいで。その時に、クロエ様の……あ、いいえ、なんでもありません」


その時に、クロエのマリアンヌいじめの話を聞いたのだろう。クロエはずっと、マリアンヌをいじめていると、根拠のない噂を流されている。すでに火消しは不可能なため、何も手を打っていないから、クロエの悪評はとどまるところを知らないはずだ。マリアンヌ贔屓の女性からだったら、さぞかしクロエは悪者だろう。


クロエは了解の印に頷いた。


「問題ありませんわ、慣れています」

「申し訳ありません。斯様かように美しく聡明な方だとは知らず」

「ベルビン、話を続けて」


不意にルーカスが冷たい声で割り込んできた。謝罪くらい、ゆっくり言わせてあげなさいよ……クロエは思ったが、いちいち言うのも煩わしく、そのままベルビンの話が進むに任せた。


「あ、うん、でも、数日後に、急に不満を口にしだしたんだ」


急に?


クロエは首を傾げた。


「その間に何があったのでしょう?」

「さっぱりわかりません。彼のことが心配で失望した、とは聞いていたのですが」

「その男のことが、実は好きだったのではないか?」

「ルーカス!」


クロエは慌ててルーカスを止めたが、ベルビンは諦めたように肩をすくめた。


「……いいんです、クロエ様。それは私も考えましたよ。でも、そうではないというし、それだったら、マリアンヌ様に嫉妬したとしか」

「いいや。それも嘘だよきっと。残念だな、せっかく愛し合っていたのに、あの事件は寝た子を起こしてしまったのか……クロエ、僕たちはそんなことにはならないね?」


あの男のせいだって? 信じられない、それだけは許さない。余波なんて作ってやるものか。





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