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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case01.断罪する悪役令嬢と突然の求婚者
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1-3.呼び出したのは断罪の始まり

するとそこには、サラ・リース伯爵令嬢が真っ赤な顔で立っていた。


「まぁ、サラ様……」


彼女は、最初にクロエが断罪された時に、一緒に濡れ衣を着せられそうになった令嬢だ。生まれて初めてこんな風に庇われて、クロエは少し感動した。と同時に、ひどく申し訳なくなった。


彼女たちも『面白イベント☆クロエ断罪』のターゲットにされてしまったらどうするの? クロエはこれ以上下がる評判はないが、彼女は違う。クロエの味方などして、生きにくくなったら大変だ。


しかし、サラの言葉を皮切りに、その周囲にいた令嬢たちが口々に口を開いてしまった。


「クロエ様はとてもお優しくて素敵な方です!」

「きつい性格だとか怖いとか笑顔がないとか言われておりますが、それは誤解です! 私たちも、最近まで誤解していましたから……本当に申し訳なく思っております」

「ええ、今では人見知りなさっているだけと分かっております。それに……私たちの恩人です、クロエ様は」

「ルーカス様にふさわしくないと言われていることも知っています。でも、クロエ様以外にいらっしゃらないと思いますわ! とても立派な方なんです!」

「そうですわ、私たちをお助けくださったこと、忘れません!」


彼女たちもサラと同様に、以前、同じような冤罪事件に巻き込まれ、クロエが犯人を特定した時に救われた令嬢なのだった。


クロエは思わず口を挟んだ。


「でもあれは、私のためなのよ。結果的にそうなっただけで……」

「いいえ! あの時、クロエ様がしっかりと犯人と動機まで追求してくださったから……!」

「そうです、私たちは被害を最小限に食い止められたのです」

「クロエ様のおかげです!」


目を輝かせる令嬢達が眩しい。


「クロエ様、あなたは毎度そうやって仲間を作って、ウェントワース夫人に媚びを売るつもりなのですね?」


令息が不敵に笑う。だが声を大にして言いたい。そんなことで彼女はクロエを評価しない。


すると、ウェントワース家の執事がクロエの後ろにやってきた。


「失礼いたします、恐れながらクロエお嬢様……」

「話は後で聞くわ、ジェイコブ。今はお願いだから、庭師のポールを呼んできて」


クロエが目を向けて言うと、執事は頭を下げてすぐに下がった。それを見届けると、クロエは彼に視線を戻した。


「そんなつもりはありません。えぇ、もちろん、私がいつも疑いをかけられ、こうして今のように、人前で犯罪者扱いをされてしまうのは、私の印象が悪いからでしょう。それでも、……知っておいででしょう。いつも別の方でしたわ。ブローチを盗んだのも、ケーキを潰したのも、鸚鵡を逃してしまったのも。いつだって、どなたかに恨みがあった方でしたわ。そうでしょう?」


クロエの言葉に、その場が静かになった。


「彼女たちは、私と同じように巻き込まれた恐怖を味わっています。同じ経験をして、友人になってくださったのです。善意で言ってくださっているだけで、私の評判とは何の関係もありません。それに……薔薇に関しては全くの濡れ衣ですのに、人前で伯爵令嬢である私を断罪するなど、もってのほかです。それなりのお心算こころづもりはあるのでしょうね?」


クロエの言葉に、彼はタジタジとなった。まだ若く、青臭い令息だ。だからこそ、クロエを断罪しようとするのだし、そそのかされもする。彼は物知らずなだけだ。


「私は被害者で、巻き込まれた彼女たちも、被害者なのですわ」


そして、何てことはない、ある意味、マリアンヌも被害者のようなものだ。かわいそうに。


「マリアンヌ様は素敵な良い方だと、私も思っています。彼女のデビューの日のことを覚えてらして? 初々しく、まるで夢のような可愛らしいデビューでした。みんな虜になりましたでしょう? それで、ウェントワース夫人も、マリアンヌ様を気に入られたのですわ。裏表のない、優しい方ですもの」


マリアンヌの輝きは完全なる事実。


とはいえ、あまりにマリアンヌ様は天真爛漫すぎるかもしれないけど。だからちょっと心配はしている。悪い人に騙されるんじゃないかって。あ、それが私?


クロエが思った時、驚くほど早く庭師のポールを連れてジェイコブが戻ってきた。


「早……」

「クロエお嬢様のご命令は迅速にと言いつかっておりますから」

「誰に?」

「若旦那様でございます」


ルーカスは時々分からないことをする。だが、やりやすくなったのは好都合だ。


「お礼を言っておいて。それじゃ、ポール。なんで呼ばれたのか、ご存知?」

「……いえ……」


練習の成果を見せる時が来た。クロエはできるだけ優しい笑顔を作った。ポールが怯えたように見えるけど、気のせいよね?


「あなた、……最近、羽振りがいいんですって? なんでも、街の居酒屋のウェイトレスにご熱心だとか。今まで、月に二回程度だったのに、最近は、週に二回は見かけるそうよ? それに、高価なプレゼントもしてるそうね。相手のお嬢さんは、とっても自慢そうに話してくれたんですって」

「なんの話でしょうか、私は何も」


周囲も不思議そうにクロエを見ていたが、クロエは気にせず、少し居丈高にポールを見た。


あぁ、気が進まない。




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