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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case17.見初められた令嬢と不可抗力の探偵
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17-9.冗談にならない冗談は

「じゃ、結局、ルーカスはその嫉妬で捕まってしまったの? 私や……マリアンヌ様と離そうとして」


だが、ベンジャミンの返事は肯定的ではなかった。


「いや、基本的には密猟者のことだよ。クレームが来たらしい。マージンも後払いになって、経営が苦しくなったそうだ」


クロエはため息をついた。


「そんなことをしなくても、……豊かな自然のある素敵な山だったのに。もちろん、利益は大事だけど……採算が取れたはずだわ」

「だろうけど……密猟者の斡旋は、その数十倍の利益が出たらしい。しかも短期間だからね。目先のお金に目がくらむと、そうなってしまうんだろう」

「そっか。男爵様の家は、とても豪華だったもの。お茶会も、三人だけなのに、とっても華やかで、砂糖菓子もたくさんあって……夕食、きっと美味しかったんでしょうね……すごく残念だわ」


クロエが思わず呟くと、ルーカスがくっくっと笑った。


「君はそんなんでいいんだな」

「何が?」

「あんなに怖い思いをしたのに、結局は、男爵家で食べ損ねた夕食のことなんだから」

「だって……あの後、とってもお腹が空いたのよ。お夜食いただきますかって言われたのに、食べなかったんですもの……いただいておけばなぁって」


仕方ないじゃない。悲しむにも怒るにも、体力が必要なのよ。


「本当……たくましいよ……」

「だって、プラントハンターになるには、いつでもどこでも、きっちり食べられるようにしなさいって、マデイラ博士が」

「わかったわかった。すごくありがたいけど、絶対にやめてくれ。今後、絶対にだ」

「いやよ」

「クロエ!」


ルーカスが珍しく声を荒げた。


「だってまたいつか、ルーが捕まったら、私、絶対に助けにいくもの。マリアンヌ様だって、ベンだって、私、助けにいくわ」


クロエがツンを顔を背けると、ルーカスはなぜかベンジャミンを睨んだ。また同列か、と小さく呟く瞳には、ベンジャミンには嫉妬の炎が浮かんでみえた。ベンジャミンは青くなって、それについては否定も肯定もせず、すぐに口を挟んだ。


「わかった。俺は最大限、捕まらないようにする。ね、マリアンヌ様」

「え、ええ、絶対に。もうこんなことないわ。だから、絶対になさらないで」


二人の懇願に、クロエはしょんぼりと頭を下げた。


「ないほうがいいのは、わかってるわ……」

「ねぇ、クロエ。銃を人に向けるなんて、やってはいけないことだよ」

「でも足だったし……」

「それでもだ。君に人を傷つけさせるわけにいかない。するなら僕だ」

「まぁ」

「それくらいはカッコつけさせてくれないか」


何よ。かっこつけちゃって。クロエが恨みがましく上目遣いにルーカスを見ると、ルーカスはなだめるようにクロエに笑いかけた。クロエの心臓がきゅっと痛くなる。


さっきまで頬緩ませて気持ち悪く笑ってたのに、どうしてこんなにかっこいいのかしら。


「おかしいわよ」

「何が」

「だって、探偵は危険を顧みず、謎を解くんでしょ。あなたは私に探偵になって欲しいんだから……」

「それは諦めたって言っただろう。それに君はなりたくなかったんじゃないのか」

「そうよ。だって私、悪役令嬢って仕事があって」

「その仕事はもう終わった。君やマリアンヌ様を陥れようとする人はいない。策略を練る人もいない。だって、王太子殿下の婚約は決まって、君は僕の婚約者なんだから」

「でも……急に役割なんて変えられないわ!」


困って叫んだクロエに、ルーカスは微笑んだ。


「変える必要なんてないよ」

「じゃ、私、どうすれば?」

「いつも通り、僕のクロエでいてよ」


クロエはしばらく吟味し、首を傾げた。


「なんだか嫌だわ」

「じゃ、……僕の大好きなクロエ? それか……僕の愛するクロエ。違う? もしくは、僕の大事なクロエ。あ、大切なクロエ……うーん、違うなぁ……」




次回、最終回になります。


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