表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case17.見初められた令嬢と不可抗力の探偵
149/157

17-7.騒動の後

 一連の騒動が終わり、クロエたちはぐったりと疲れきってしまった。


だが、国賓が狙われたこと、それ以上に脱税や違反者の手引きなどの犯罪をしていたことで、どの国でも大きなスキャンダルになってしまった。体調や反応を考慮し、ベンジャミンとマリアンヌは滞在を延ばし、クロエたちとしばらく過ごすことにした。


 その間に、クロエたちの国のリチャード王太子殿下と、滞在国のマルギット姫君の婚約が正式に発表された。クロエたちの話題が長引かないようにと配慮してくれたのか、めでたい話題にすぐに国民たちの意識は移った。特に、リチャードに関しては、これまで浮いた話題もなく、貴族たちがヤキモキしていたこともあり、一つの落とし所ということで、大いに歓迎されたのであった。


 四人とも体調も戻り、そろそろ動けるかというところ、ルーカスが国からの手紙をひらひらとさせながら、居間でお茶を飲んでいた彼らに切り出した。


「今回のことで、帰国命令が出たよ」

「当然だな」


ベンジャミンが澄まし顔で頷き、ルーカスは笑いながら同意した。


「まぁね。僕のこともそうだけど、主にクロエを慮ってね……エマニュエル殿下は、僕と結婚してからまたおいでってさ。このことでこの国を嫌いにならないでほしいと、姫も心配しているそうだ」


自分の名前が出て、クロエは目をパチクリとさせた。


「嫌いになんてならないわ」

「でも君は大変な目にあった」

「こんなこと問題ないわよ? プラントハンターよりずっと命の危険が少ないもの」

「……だけど、君は今後、僕の妻となって、国の外交の顔になるんだからね。ケアをして、安全な生活を心がけよう」

「結婚したからって、危機は変わらないと思いますわ」


すると、マリアンヌが断固とした口調で割り込んできた。


「クロエ様が有能なのはわかりきったことです。もしかして、プラントハンターに抜擢されて、国には戻ってこないかもしれませんわよ?」


言われたルーカスはすぐさま返事をした。


「それなら僕もついていく」

「足手まといだろう」

「ベンジー」


たしなめるように友の名を呼んだルーカスを無視するように、マリアンヌが驚きに口元を押さえた。


「まぁ、ルーカス様が足手まといなんて、……思いもよりませんでしたわ」

「マリアンヌ様、真に受けないで」


思わず口を挟んだクロエを無視し、マリアンヌは深刻そうにうつむいた。


「でも言われてみれば」

「マリアンヌ様」


するとまたクロエの言葉を無視し、ルーカスが朗らかに会話を引き取った。


「僕が同じようにマスターすればいいことだ。何が必要だったかな。猟銃はクロエより上手だし、体力はあるし……接近戦はやや不足か。実戦あるのみかな? その前に帰ったらまた訓練をさせてもらおう。しばらくしていなかったから体もなまっているだろうし……今回はとっさに動けなかったからな。実力不足を感じたよ」


クロエはギロリとルーカスを睨んだ。


「冗談はほどほどにして。これ以上続けたら、私、ここを出てくわよ」

「ごめんごめん」


笑いながら謝り、ルーカスはクロエの隣に腰を下ろした。まったく。にっこりと微笑めばクロエが許すと思っているんだから。……なんでばれているのかしら。


クロエがため息をついた時、マリアンヌが元に戻って話題を変えた。


「でも一体、なんだったんでしょう? 彼の本当の目的は?」

「クロエの予想通り、主にマリアンヌ様だったよ。……というか、クロエとマリアンヌ様、かな」

「私も?」


クロエは驚いて声をあげた。マリアンヌも不思議そうな顔をしている。


「そう。王宮のことは関係あったみたいだ。君の評判は、この周遊ですごく良くなったんだよ。だって、なんてったって、あのリチャード王太子が、君に頭が上がらない、なんて言ったんだから」

「嘘でしょ。あの戯言を」

「殿下の冗談は冗談にならないんだ」

「ひどいわ」


ほらね、探偵なんて本当にろくなことがないんだから。


クロエはじっと見つめたが、ルーカスはクロエの腕を愛おしそうになでるだけで、視線にはなんの威力もなかった。


「まんまと引っかかったのが悔しかったんだろ。でも、時すでに遅し、だ。殿下は姫に心を奪われてしまっていた。文句は言えない……ま、気持ちはわかるよ」


ベンジャミンが肩をすくめて、じっとクロエを見つめた。睨んでない?


「何よ」

「別に」


ベンジャミンがふっと視線を外した。自分が蚊帳の外だったのが悔しいらしい。


「喧嘩しない。男爵子息はね、クロエと男爵の結婚を目論んだんだ」


ルーカスの言葉にクロエは首を傾げた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ