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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case02.お呼びでない令嬢と扉を開ける悪役令嬢
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2-6.帰りたい

マリアンヌはクロエの様子に全く気付かず、楽しそうにはしゃいだ。


「ルーカス様もずっと社交界にお出にならなかったんですよ! だから誰も聞けなくて……ですから、お二人でご相談なさってると思っておりましたの。ね、一体いつなんですか?」


ずっと黙っていてくれて良かったのに。クロエはため息をついた。


「何も……決まっておりませんわ、マリアンヌ様」

「何もって?」

「実はお手紙を頂いたそうなのだけど、届いてなくて……私はそのお手紙に何が書いてあったのか知りませんので、話がどうなっているのか、わかりませんの」


あの様子からすると、クロエを探偵にするために、独身主義を打ち破る予定らしいが、そんなの間違っている。


そうよ。独身主義のルーカスを振り向かせることができるのは、可愛らしくて賢い、マリアンヌ様だけよ。


大体おかしいわ。マリアンヌ様はルーカスを好きなんじゃなかったの? 


「お間違えに気づいたのかもしれませんわ」

「まさか。間違いって?」

「お相手を間違えたってことです。マリアンヌ様の方がお似合いですもの」


クロエが言うと、マリアンヌはコロコロと笑った。


「嫌ですわ、クロエ様。それはありえません。私たち、クロエ様大好き同盟ですのよ。随分と前から。ですから」

「聞いてないわ」

「お伝えする必要なんてありませんでしょう? 分かり切ったことですもの。もしかして、……知りませんでしたの?」


何言ってるの? 大好き同盟?


「知らないわ! 私が何て言われているかご存知? 悪役令嬢よ?」

「クロエ様、それがただの汚名だってことは、私たちは知っておりますわ。それに、私の失敗をいつも助けてくださるのはクロエ様ですもの。注意してくださるのもクロエ様だけです。おかげで、多くの不文律のルールを知ることができました。ルーカス様もクロエ様を大切に見守りなさって、感心してらっしゃいますわ」


確かに、ルーカスは『違うことを知っている』と言っていた。でもそれは、クロエが探偵をしたいと思っていると勘違いしているだけだ。


見守っていたのならどうして。クロエが探偵になりたいと思うなんて、考えたんだろう? プロポーズなんてしたんだろう? 


「マリアンヌ様……あの……」


クロエは言いかけて、肩を落とした。


マリアンヌに嫌な思いをさせたくない。彼女の笑顔が曇るととても悲しくなる。


ルーカスがクロエとの友情の情けで”結婚”を与えてくれようとしていることなど……結婚に憧れているだろうマリアンヌが聞いたら、がっかりしてしまうかもしれない。クロエは友情でも、きっと愛を感じるのはマリアンヌだから……ルーカスのためにも、何も言わないでおくべきだ。


「……きっと、お茶会の準備が出来上がっておりますわ。移動しませんこと?」

「えぇ! いいですね。その時にお聞かせくださるのですよね?」


さっきの話を? それとも探偵の話を? 一体、どこからどこまで話せば?


いやだぁ。


帰りたい。


一転して足がすくんだクロエだったが、行かない選択肢はないのだ。諦めて、とぼとぼとマリアンヌの後を追いかけたのだった。







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