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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case16.遠乗りをする若旦那とお茶会に行く婚約者
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16-4.ドレスの選別

困ってはいるが、輝いた目はごまかせない。


やっぱりね! 


マリアンヌはこのドレスが気にいると思った。


「え、でも、あの」

「いいのいいの。これは私の持ち物だから。何でもかんでもルーカスに買ってもらってるわけじゃないのよ? 婚約はしても施しは受けないんだからね!」


すると、マリアンヌはくすっと笑った。


「そんな話はしていませんわ」

「じゃ、もらってくれる?」

「いいのですか? うちでは滅多に作ることはできませんの。こんな素敵な……」


マリアンヌは袖口に手を通し、うっとりした目でドレスを見た。それだけで男性はぶっ倒れるわね。クロエは侍女たちと視線を合わせて頷きあった。やはり似合う。これを作った時、一瞬だけ、似合っていたんだけどな。確か。たぶん。


「もちろん。理由ならたくさんあるわ。お友達になった印に。ここまで私を心配してきてくれたお礼に。人に聞かれたら、そう答えて。それにしても不思議ね、いただいたことはないの?」

「ないです。父の方針で、……身につけるものをいただくのは、最低限にするようになっていて……いただいたものも、お返ししたことがあります」

「ご立派ね。きっと、あのパリュールより豪華なものもあったでしょう?」


マリアンヌは困ったように微笑んだ。


「……正直、高すぎて引くものもありましたわね、うふふ。でも父は、私が納得したお相手からだけもらえと言ってくれているので、断りやすいんです」

「それは良い方ねぇ……お会いしてみたいわ」

「えぇ、ぜひ。国に帰ったら我が家にお呼びしても? 狭いですけど」

「問題ないわ。その方がきっと良いくらいでしょう」


クロエが言っているそばから、マリアンヌの目がローズ・ボンボン・ドレスに惹きつけられている。


「あぁ、でも、このドレス、本当に素敵です」

「お茶会はとりあえずそれで行きましょう。夜のドレスはある?」

「え、えぇと……あるにはありますが」

「やっぱり量はないわよね。あなたの大事なドレスを持っていくのは申し訳ないから、私のを使いましょう」

「で、でも」

「今回、急遽来ていただいたでしょう? 国の用事でもないし、舞踏会に出る予定もなかったのに、この国の王太子殿下の誕生日舞踏会にまで出席して、ドレスを揃えるの、大変だったと思うの。私、全然気がつかなくてごめんなさい。今日だって、本来なら、私とルーカスだけが遠乗りへ行って、男爵家へ宿泊する予定だったのに、あなたたちまで巻き込んでしまって、申し訳ないわ。その気持ちだと思って、受け取ってくださらない?」


クロエが懇願するように言うと、マリアンヌは決意したように頷いた。


「わ……わかりました」

「どれが良いかしら? ちょっと雰囲気を変えて、コバルト・ブルーなんか? でもきっと、シトロン色のが可愛らしくて似合うわね」

「クロエ様は何を?」


ぎく。


選んでいるクロエに、マリアンヌがふと質問をしてきた。


「私は……なんか適当に……」


クロエが言葉を濁すと、マリアンヌは猛然と抗議をした。


「ダメです! では、このコバルト・ブルーのドレスになさいませ! 明るい青がとってもお美しいですわ!」

「ありがとう……?」

「お茶会はこのヒナゲシ色のドレスが良いと思います!」

「えぇー、赤すぎない?」

「お茶会の最中に帰ってらっしゃるんですから! ルーカス様にアピールですわ!」


無事に支度を済ませ顔をあわせると、実際、マリアンヌは二割り増しに輝いて見えた。ぴったりにあつらえていないから袖のデザインが微妙なのは致し方ない。


「こんな風にしていただくのは初めてです」

「国に戻ったら、ベンに作って貰ったら良いわ。ベンは妹が三人いるから、選ぶのがとっても上手よ」

「……そうなのですね。私、ベンジャミン様のこと、全然知りません」

「手紙で話をしたんじゃないの?」

「クロエ様とルーカス様の話しか」

「本当にそれしかしてないのね。気の利かない男だわ」


そうして、クロエとマリアンヌは、和気藹々と男爵邸へ向かったのだった。





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