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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case13.憧れの妖精騎士と可憐な姫君
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13-8.ここへ来た目的とは

「あなた……は……」


グスタフが緊張した面持ちでベンジャミンを見た。


「私はティラドス子爵ベンジャミン・クール。隣国から勉学のために来国しています」

「ティ……ティラドス卿でしたか! 気がつきませんで」

「構わない。この格好では、私も誰が誰だかわからないのだから」


そう言って、ちらりとマリアンヌを見る。それでも、彼女のことだけはわかると言いたげに。だがマリアンヌは不安の表れだと感じ、普通に励ました。


「大丈夫ですよ、ベンジャミン様! ご案内しますわ!」


それを遮ったのは、当然のことながらマルギットだった。


「ちょっと。グスタフが妻帯者って、何? 聞いてないわ」

「そうでしょうとも。あなたがそうやって、激昂なさるからだと思いますよ」

「あなたには聞いてないわ。ねぇ、グスタフ、本当?」

「姫様」

「言ってあげてください。正直に告げて姫を激昂させたら、首をはねられかねなかったのだと」

「まぁ!」


クロエは目を丸くした。陛下はどれだけ彼女を溺愛しているのだろう?


それよりも、彼女を前にして、そしてその彼女が持つ権力を前にして、妻を捨てずに彼女に手を出さずに、ただただ護衛騎士を務められるなんて、グスタフはなんという強い精神力だろう。


ルーカスがクロエの耳に顔を近づけ、説明を始めた。


「陛下はそこまで我を失う方ではないよ。反対しているんだから。問題は彼女の兄二人だね。彼女にグスタフが告げられなかったのは、王子達のせいさ。近々誕生日があるのもその一人だ。しっかりした良い方なんだが、妹のこととなるとタチが悪い。彼女だって、惚れっぽいだけで分からず屋じゃない。でも甘やかすからトラブルメーカーの予備軍になる。こうやってね」

「はぁ……、」


なんだかかわいそうに。むしろ、兄達から離れた方が、うまくいくのではないだろうか。


「も、申し訳ございません!」


再びグスタフが頭をさげる。


「いいわ、グスタフ。許します。私のことを考えてくれたのだし、あなたの大事な人のことも考えたのでしょう。仕事を失うわけにもいきませんものね。これからも、私の護衛騎士をしていただきますわ」

「姫様……! あ、ありがとうございます!」

「奥様にも会わせてくださいね」

「は、はい!」


よかったよかった。クロエはホッとして、笑顔の二人を微笑ましく見守った。だが、マルギットはそれで終わりにしなかった。


「私、もっと素敵な人を見つけましたから」

「……?」

「この方ですわ。ベンジャミン様、わたくし、運命を感じました!」


マルギットはなんと、ベンジャミンの腕をぎゅっとつかんだのだ。あの妖精騎士のような、キラキラしたベンジャミンを。


「えぇ?! い、いや、しかし……私ではその、全く釣り合いません」

「いいのです。父も兄も、わたくしが愛する方ならいいとおっしゃっていますもの。それに、グスタフより釣り合わないなんてこと、ありませんわ! 隣国の子爵様、問題ありません!」

「姫様、しかし」

「わたくしのことは、マルギットと呼んでくださいまし、ベンジャミン様! グスタフのことを知ってらっしゃるなんて、ここでお会いしたのは運命なのですわ!」

「ほらね」


ルーカスが肩をすくめた。


「パレードに出損ねた」


慌てて振り返ると、すでに、最後の”結婚式”カップルが祝福を受けているところだった。


「あー……」


クロエは頭を抱えた。ここに何しに来たんだっけ? クロエのため、ルーカスのため、マリアンヌのため、ベンジャミンのため……


「ね、今度、お兄様の誕生会があるの! みなさんをご招待いたしますわ。もちろん、国賓で!」


知ってる。でも国賓って何?


クロエが見回すと、青ざめたマリアンヌ、困り顔のベンジャミン、そして諦めに目を閉じたルーカスが見えた。自分の顔がどうかなんて、考えたくなかった。




case13 END


サイドストーリーなしで、話は続きます。



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