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彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case13.憧れの妖精騎士と可憐な姫君
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13-2.ひそやかな応援

「もうパレードいくのやめよう? こんなに可愛いクロエは誰にも見せたくない。まぁ、ここにいるベンはしょうがないけど、……もう見ないでくれる?」

「はいはい、見てない見てない。眼鏡がないからよく見えないし。ほら、もう行くよ」


呆れ声で身を翻したベンジャミンに、クロエは慌てて声をかけた。


「あ、ベン、あなたはマリアンヌ様をちゃんとエスコートするのよ」

「当たり前じゃないか」

「勝手に行ってしまうかと」


クロエの言葉に、ベンジャミンは弱みを見せるのを嫌そうにつぶやいた。


「……全然見えないんだよ、周りが」

「あぁ、そう……」

「そういうわけで、マリアンヌ様、申し訳ないけど、俺を連れて行ってくれる?」

「は、はい!」


なんだかちょっと、うまくいきそうじゃない?


ベンジャミンとマリアンヌはお似合いで本当の妖精みたいに見えるし、でもマリアンヌは誰が見てもマリアンヌで、恋人と一緒に来ているように見える。でも相手は誰だかわからないから、マリアンヌが嫌になった場合、ベンジャミンにも迷惑がかからない。


クロエはほくそ笑んだ。


追求はしなかったけれど……マリアンヌが本当にベンジャミンに恋をしているなら、応援したい。


「クロエ? 何か考えてる?」

「何を?」

「とっても悪い顔してる」

「わ……悪いことなんて考えてわよ!」

「うん、知ってる。でもとってもセクシーだから……僕の前以外ではしないでね?」


ルーカスが人差し指を自分の口に当て、ウィンクをする。


クロエはかろうじて笑みを返した。


久しぶりに思うけれど、ルーカスが微笑んだだけで、本当に国が買えそうだ。


ようやく準備が整い、フラワーフェスティバルが催される村へ向かうこととなった。


クロエはマリアンヌとベンジャミンを二人きりにするため、二台に別れて乗ろうと主張した。表向き、ルーカスと話したいから、と言ったのだが、多分、信じてないのはベンジャミンだけだ。何考えてると言いたげに睨んできたからだ。


別にベンジャミンの味方をしてるわけではないし、失敗して振られろと思ってるわけでもない。


ただ、よく知り合ってほしいだけだ。


「……で?」


馬車に乗り込んですぐ、ルーカスが腕を組んだ。


「”で”って?」

「二人に聞かれたくない話があるんだろう?」


そういうわけじゃないんだけど……クロエは思ったが、自分が考えていることを言うわけにもならない。何しろデリケートな問題だから。マリアンヌは”天使のような令嬢”として崇められるのに慣れてしまっていて、博愛主義が過ぎる。そして、自分だけに向いて欲しいと思うことを怖がっている。その上、ベンジャミンはといえば。


「出世大好きコネ大事、情報収集はお手の物……」


そんなベンジャミンだから、マリアンヌを手に入れたら何が起こるか、本人も知っている。嫉妬の嵐、外部の圧力。どんな惹かれても自分がそれに耐えられないと思って、諦めている。それでもいいから、マリアンヌを得たいと、どうしたら思うだろうか?


「何の話?」

「あ、ううん。ルーはそういうとこないなぁって思って! 大体の人はそうじゃない?」

「うーん、まぁ、そうだね。でも僕の場合、みんな僕を取り立ててくれるから……する必要ないんだ」

「そっかー」


そうだった。ルーカスはなぜか、困難なく全ての道が開かれるタイプなのだ。クロエと関わったばっかりに、つまらない噂を立てられたり、こうして巻き込まれたりして、なんだか申し訳ない。早く解決して、ルーカスが笑顔で、前のように滞りなく過ごせるよう、平和を取り戻すのだ。


「うん、だから、安心していいよ。探偵も、プラントハンターも、侯爵夫人の公務も、全部できるように手配できるから」

「……甘やかさないでください」

「なんだってするよ。クロエのためならね。だから、……本当に面倒だけど、連絡したんだ」

「何を?」


クロエが首をかしげると、ルーカスはクロエの髪をさらりと撫でた。そしてくるくると指に絡めた。


「アレクに話を聞いた」

「誰?」

「第二王子だよ」


呼び捨て? クロエは驚いてルーカスを凝視した。


「え、そんなに仲が良かったの?」

「小さい頃から遊んでたよ。うちにも来たことがあるだろ。クロエも何度か遊んだし」

「そうだっけ?」


目を瞑って思い出そうとしたが、あまりこれといったエピソードは浮かんでこない。だが、顔はなんとなく覚えている。なんでだっけ。




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