表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は悪役令嬢であって探偵ではない  作者: 霞合 りの
case12.未知なる王太子と対策する花嫁候補
100/157

12-1.朗報か悪報か

その朝、ティーテーブルで、クロエは自国の友人からきた手紙を前に、腕を組んで悩んでいた。


朗報と解釈すべき? それとも、最悪の事態なの?


手紙は、友人のサラ・リース伯爵令嬢だった。


サラはクロエが初めて公に冤罪を晴らした事件の当事者で、クロエをマリアンヌ以外で最初に信じてくれた令嬢だ。恋人の騎士が、あわや彼女の家の財産を横領しようとした容疑にかけられたが、それは冤罪だった。それを教唆したとされたクロエだったが、それはサラの叔父がやったことだと証明したのだ。


騎士のやる気を助長したとされたマリアンヌについて、サラはずっと共犯を疑っていた。だが、今回、こうしてクロエがルーカスと婚約して、ルーカスの仕事についてきていることで、全面的に疑いは晴れることとなった。


ともかく、あの事件以来、彼女は社交界の噂を逐一クロエに教えてくれる。今回のこれも、彼女にとっていつものことで、クロエにとっても、ありがたいことだった。


しかし、内容に伴う意味を考えると、どうしても疑いたくなってしまう。


クロエが王太子の花嫁候補である、もしくは、そうであった、ということは、ほぼ誰も知らないことだ。おそらくクロエが婚約した今でも、状況がさほど変わっていないことは、自分たちのような令嬢レベルでは、よほど情報収集しないと思いつかない。サラも知らない。だが、情報はくれた。


あとはこれをどう使うかだ。


☆☆☆☆☆☆☆


「難しい顔をして、どうしたんだい? 僕の可愛いクロエ」


部屋に入ってきた、婚約者であるルーカス・モファットが、クロエの頬に優しくキスをした。だが、クロエは動じない。ルーカスは甘えるようにクロエの顔を覗き込んだ。


「クロエ?」


クロエが反応しないのに気づくと、ルーカスは自分の唇をクロエのそれに重ねようとした。だが、クロエは無意識にルーカスの顔を手で追いやり、また考え込んだ。ルーカスはすぐに諦め、また声をかけた。


「愛しいクロエ、今日は一緒に遠乗りをする? それとも、川で水遊びでもする? 水生植物が見たいって言ってなかったっけ?」


聞こえていないことに業を煮やし、ルーカスはクロエの頬に再び唇を押し付けた。今度は拒否されない。頬はいいのか。他はどこが大丈夫なんだ? ルーカスは試しに額やこめかみにキスをしてみたが、クロエは無反応で、何度しても大丈夫そうだ。


これ幸いとばかりに続けていると、ルーカスのキスの雨を浴びて、難しい顔をしたまま座っているクロエを見て、入ってきた友人たちが足を止めた。


「……何してるんだ?」


ルーカスはキスを止め、笑顔を向けた。


「あ、ベンジーにマリアンヌ様。おはよう! 座って座って」


呼ばれたベンジャミンとマリアンヌは顔を見合わせ、言われるままに席に着いた。


「一緒に来るなんて仲がいいね。まさか夜通し一緒だった?」

「そんなわけないだろうが! ありえないな。誤解を招くだろ。なんてことを言うんだ、全く……」

「意外とオクテだね、ベンジー」

「お花畑のお前に言われたくないね。誓いのキスの一つも満足にできないで、偉そうに」

「でも僕は、少なくとも最愛の人と婚約している」


ルーカスが言うと、それまで呆れ顔だったマリアンヌが、うふふと笑った。


「そうですわね。お二人の気持ちが成就して大変結構ですわ。応援した甲斐があったというものです」

「ありがとう、マリアンヌ様。あなたがいてくれて助かったよ。そうでなければ、僕はとっくにクロエを諦めて、知らない誰かとつまらない結婚生活を送るところだった」

「それはありえませんわ! デビューする前から、クロエ様とルーカス様はお似合いだと思っておりましたもの。クロエ様と仲良くなりたくて、ルーカス様に相談したこと、忘れておりませんわ」


顔をほころばせるマリアンヌに、ベンジャミンが呆れたように視線を送った。



トータル100話になりました!


応援ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ