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9.
「でも、『働かざる者は食うべからず』だろ?」
「まあ、そうだけど……」
「なあ。そこで提案だが、俺を雇わないか?」
「雇う?」
「お前、大道芸人だろ? 昼間、広場で芸をやっているのを見たぜ」
「どこで!? 人間に気づかれなかったの!?」
「ああ、そこは抜かりない。屋根の上にいたのさ」
「よくそんな所までよじ登れるのね」
「ジャンプ力は半端ないぞ。ここの三階までひとっ飛びだしな」
「それに、その体のどこに目や耳があるのかわからないけど、よく芸が見えたり話が聞けたわね」
「今更、何を言う。現にこうしてお前を見て話をしているだろう?」
「まあ、そうだけど」
「聞いて驚け。全身で感じるのだ」
「ふーん」
「しゃべるスライムなんて、貴重だろ? な? な? 大いに受けて、繁盛間違いなしだぜ」
「うーん……………………」
「お前となら客受けする漫談もすぐに出来そうだぜ。どうだい、いい話だと思わないか?」