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7.
「ところで、何しに来たの?」
「だから、さっき言ったろ? 空いていると思ったぜって」
「空いてたら、どうするつもりだったの?」
「いや、その、なんだな。ちょっと宿泊でも」
「嘘でしょ?」
「なんでわかる?」
「私の荷物が見えたはずよ。この部屋は空いていないってわかっていたでしょう?」
リュドミラは、壁に掛かっている衣服を指差した。
「バレたか……」
「正直に答えて」
「お前もだんだん大胆になってきたな、魔物を前にして」
「いいから!」
「さーせんした。ま、……食い物を失敬しに、な」
「働く者は食うべからずよ」
「そうか――って、おい! お前、相当動揺してんな。『働かざる者は食うべからず』だろうが」
「あっ、そうだ……」
「やーい、やーい」
「うるさい!」
「ま、食うべからずって言われても、俺を雇ってくれる変わり者の人間なぞおらんから、食う以前の問題だがな」
「うんうん」
「そんな簡単に納得されると、惨めになるぜ。ホント、魔物は辛いよ」




