29.
ドミトリー王子は、王子の無事に安堵する国王に向かって深々と頭を下げて「父上。ご心配をおかけして申し訳ありません」と丁寧に謝罪した後、謁見の間にいた全員を見渡しながら失踪事件の真相を語り始めた。
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半年前のこと。ドミトリーは堅苦しい王宮での生活がイヤになり、自由を求めて城を抜け出て一平民に変装し、城下町を見物した。
ところが、そこで見たものは、貧富の格差と、傲慢な貴族や高官たちの横柄な態度。
貧しい者たちの声に耳を傾けると、偽の令状を使った強制労働、貴族の搾取、高官の密造酒等々、為政者の悪行が噴出していることに驚愕した。
それらに対して、体制批判をすると投獄される。だから人々は言いたいことも言えない。
平和な町は、うわべだけ平穏だったのだ。
なおも町を回っていると、オルフェ地方から来たという黒魔術を操る魔女に出会った。
魔女はドミトリーの変装を一瞬で見破り、「そんな格好で町をうろついては、すぐにバレます。変身魔法を教えますから、それで変身してください」とオルフェ地方の彼女の屋敷に案内した。
そこで変身魔法を教わり、いざ自分で実践したところ、なぜかスライムになってしまった。
元に戻してもらおうと思ったが、魔女は忽然と行方をくらましていて、屋敷はもぬけの殻。
仕方なく一人で外に出ると、傭兵や冒険者や勇者に襲われ、彼らから逃げ回ったり、洞窟でしばらく身を潜めたりの毎日が続く。
時間をかけてオルフェ地方を抜け、山を越え、ようやくローザロッサ王国に戻り、リュドミラに出会った。
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