28.
水色のスライムが突然金色に輝き始め、ぐんぐん膨張して2倍の大きさになった。
驚いたリュドミラが後ろへ仰け反ると同時に、その金色のスライムが大量の光の粒になってさらに膨れ上がった。
このまま金色の無数の粒が空中に飛散するかと思いきや、それらが集まり始め、何かを形作っていく。
それは人の姿だった。目映い光を放つ長身の人物だ。
やがて光は急速に失われ、一人の美男子が現れた。しかも、彼は王族の服を着ている。
「「「ドミトリー王子!!」」」
謁見の間にいた国王とリュドミラ以外は、一斉に跪いて頭を垂れた。
「ドミトリー!? 王子!!??」
リュドミラは目が飛び出るほど驚いて、跪く前に腰が抜けてしまい、尻餅をついた。
ドミトリー王子は、頭を掻きながら「やれやれ」とため息をついた。
「一時はどうなることやらと思ったぜ」
王子は、そう言って笑顔をリュドミラに向けた。
「リュドミラのおかげだ。感謝してもしきれないほどだよ」
涙ぐむリュドミラは、なんて声をかけようと迷っていたが、やっとの思いで問いかける。
「王子は……どうして、スライムなんかに?」
ドミトリーは、それを聞いて吹きだした。
「あ、それ? 最初、俺のドジでこうなったと思ってたんだけど――」
そう言って、彼は肩をすくめた。
「騙されていたのさ」
「騙されて?」
「そう。黒魔術の魔女に」




