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24.

 リュドミラは、スライムにはきっと何か考えがあると信じていた。


 見ず知らずの国王のために命を差し出すはずがない。そもそも批判の対象にしていたのだから。


 漫談を披露すると見せかけて隙を見て逃走するとか、国王を人質に取るとか、奇策を練っているに違いないと。


 気を取り直して彼女は立ち上がり、部屋の真ん中まで移動して国王の正面を向いた。


 スライムは、リュドミラに近づくと「心配かけたな。さあ、始めるぞ」と元気そうに声をかける。


 そこへ、警戒する警備兵が十人ほど剣の柄に手をかけて近づいてきたが、スライムは「御前漫談の邪魔だ! お前らは下がれ!」と兵士たちに向かって一喝した。


 兵士たちが簡単には手が出せない距離まで後退したのを確認すると、スライムが口上を述べた。


「国王陛下。国民の間で人気を博している小話『酒場にて』をこれから披露いたします」


 それに対して、国王はどんよりとした目つきでスライムを見つめ、無表情のままで頷きもしなかった。


 リュドミラは、スライムからの指示があるのではないかと、耳を澄ました。


 すると、スライムがつぶやいた。


「いつもと違う台詞で行くぞ。話についてこい」


 彼女は軽く頷いた。

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