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2.

 季節は秋。


 リュドミラは今アルウェウス地方の7つの王国の一つであるローザロッサ王国に滞在していて、今日も広場で客を集めている。しかし、笑顔を振りまいているが、その下に渋い顔を隠している。


 なぜなら、日に日に客の数が減っているのだ。


 理由はいくつかある。


 まず、他の王国で受けがいい漫談は風刺や批判なのだが、ローザロッサ王国ではそれを口にしただけで出入り禁止、最悪は投獄になりかねないのだ。だから、演目は日常的で滑稽な話に絞ることになる。これで披露するネタが少なくなる。


 次に、羽振りがいい客がたくさんいるローザロッサ王国には大道芸人が流れ込んで来て、自然と競争原理が働き、目新しいネタを担いできた芸人の方に客が集まっていく。



 せっかくディミトリの可愛らしい演技で集まってきた客が潮を引いたようにいなくなるのは恐怖なので、リュドミラは、警備兵が来やしないかと冷や汗をかきながら風刺すれすれの漫談を聞かせる。さらには、魔法で指先に火を(とも)したり、空中からリンゴを取り出したり杖に花を咲かせたりと手品めいたことをやってつなぎ止める。


 それでも、客足が遠のくのを防ぐことが出来ない。


 彼女は今日もたくさん愛想を振りまき、「また来なよ」と少ない客の背中を数えながら声をかけて見送った後で、胸の中では冷たい風が吹く。


 陶器の皿の内と外に転がる小銭を拾い上げてドレスのポケットにねじ込み、さらに小銭を探している風を装ってうつむいたまま聞こえないような吐息をついてから、ディミトリの首輪につながる綱を引いてとぼとぼと宿へ帰った。

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