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13.

「しゃべる魔物なんているのか?」「人か?」「まさか、魔法をかけられているとか?」「人がスライムに化けるなんて聞いたことがないぞ」


 さざ波のように広がる驚きの声に、リュドミラは背筋が凍った。


 今更だが、なんでスライムがしゃべるのか。


 一度はそういうものかと納得したが、それが揺らぎ始めた。


 この場をどう納めようかと()(ろた)えていると、スライムが大声上げた。


「あー、あー、みなさーん! 聞こえますかー! 俺、新種のスライムです、はい! 自分の魔力のおかげで人の言葉をしゃべれるようになったんで! そこんとこ、よろしくぅ!」


 騒めきが潮を引くように消えていく。


「さてさて、俺の気持ちを聞いてくれターイム! 本当は、スライムだって人間と仲良くやりたいんだ。それなのに、魔王の奴がよ、人間に危害を加えるために、自分は手を下さず俺たち魔物をこき使いやがって。俺たちだって、魔王が怖いから仕方なくやってるんだ! 本当は魔王から逃げ出したいんだよ!」


 人々が耳を傾ける。


「人間だってそうだろ? 怖い王様の命令に逆らえず、仕方なく戦うって事もあるだろう?」


 頷く人も増え始めた。


「むしろ人間が俺たちを助けて欲しいんだ。もしこの場に勇者がいれば、伏してお願い申す、だな」


 聴衆は互いに同情の顔を見合わせる。


「俺一人の力でどうにかなる問題ではないことくらいわかっている。でも、はじめの一歩は魔物でも大事。だから、俺はこのリュドミラ一座に入った。少しでもスライムは、魔物は、本当は怖くないってことを知らせるためにも」


 人々は大きく頷いた。


「まずは、俺たちの小話を聞いてくれ。……あっ、座長を差し置いて俺が仕切って悪かったな」


 笑いで会場が暖まった。


 さあ、これからリュドミラとスライムの小話が始まる。早速、聞いてみよう。

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