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12.

 翌日、広場に向かう道を行き交う人々は驚きの声を上げた。道の真ん中を、宣伝用の(のぼり)を持ったリュドミラを先頭に、猿のディミトリを乗せた水色のスライムが伸び縮みしながら進んでいるからだ。


 にわか作りの(のぼり)には「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」「これは珍しい! しゃべるスライムがやってきた!」「スライムと漫談! これを聞き逃しては一生悔やむ!」「人に危害は加えません! 安心して触れます!」と、もう少しなんとかならなかったかと思える宣伝文句が書かれていた。


 彼女は、その宣伝文句と一緒にディミトリとスライムを紹介する口上を述べながら練り歩く。


 夜の特訓のおかげでディミトリはスライムに慣れ、大人しく背中(?)に膝を立てて座り、時折人々に手を肩まで上げている。


 最初は恐ろしがっていた人々も、猿がスライムに乗って愛嬌を振りまいている姿やリュドミラの宣伝文句を見たり聞いたりして興味をそそられ、ゾロゾロと行列を成してリュドミラ一座の後を付いていった。



 広場には、昨日までの数十倍もの見物客が集まった。人が幾重にも囲む光景は、リュドミラにとっては未体験のものだった。


 全身が小刻みに震えてくる。ドレスで隠れている両足の膝は、立っているのもやっとなほど笑っている。


 ディミトリが曲芸を見せるのはいつもの開始の演目だが、ここにディミトリがスライムの上で弾んで見せる妙技を追加した。これは、人々を安心させるためのものだ。


 ボヨンボヨンとスライムの上で猿が跳ねるので、ドッと笑いが巻き起こった。


「さあ、触ってもいいですよ」


 リュドミラの声に、スライムが「どもども。ジャンジャン触っていいよ」と言いながら、前列の人垣に近づく。


「「「本当にスライムがしゃべった!」」」


 驚嘆した人々が一斉に声を上げた。

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