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異世界の英雄よ、現実世界でもう一度   作者: ヘンリー
第七部:元『英雄』と、変わる世界
307/314

新宿異能大戦75『最愛との再会』

――『異世界』


 それは、此処とは異なる世界。

 そして『異能者』が創りし世界。


「な――――」


 晴天の霹靂以外の何物でもないひと言に、英人は思わず呆けたような声を漏らした。


 八年以上もの間過ごしてきた。

 最初は家族や友人どころか、見知ったものすら数える程しかない環境。


 がむしゃらに生きた、必死に戦った。

 いつしか、自身と同じ『英雄』たちとも出会って――もちろん、それは彼等だけじゃない。


 自らの武器として今も戦ってくれている『神器』。

 いつも最前線で戦ってくれた戦友。

 異邦人に過ぎない自分を快く受け入れてくれた心優しい恩人たち。


 そして何より、最愛の人にも――――


「……おい」


 それらが全て作り物だったというのか。


「おい……!」


 語気を荒げ、英人は既にこと切れた有馬に詰め寄ろうとする。

 が、その無意味を悟ってすぐにその歩を止めたのだった。


「八坂……」


「悪い、取り乱した」


 英人は軽く息を吸い、呼吸を整える。

 そのまま目を開いて今度は冷静に有馬の姿を見据えた。


「奴が言ったことは事実なのか?

 その、『異能者』が……」


「『異世界』を創った、か。

 ……………………どうだかな」


「そんな芸当、『異能』に出来るものなのか?」


 『無双陣羽織むそうじんばおり』を展開したまま義堂は言った。

 有馬の言葉に一抹の不安を感じた故だろう。


 とはいえ、彼の抱いた疑問は至極もっともだった。

 果たして『異能者』にあれほどの規模の世界を創ることは可能なのか。普通であれば、答えはNOだろう。しかしあの有馬ユウが、長らく英人の周囲とこの世界を引っ掻き回し続けた『悪魔デビル』が最期に残した言葉である。


「後味を悪くしたいだけの嫌がらせか、それとも――」


 英人はあえてもったいぶった口調で言った。しかしそれは本心の裏返しでしかない。

 その言葉を聞いたその瞬間、英人は直感していたのだ。

 その言葉は紛れもない事実であると。


「…………あちらの世界には、大陸はひとつしかなかった」


「八坂?」


 おもむろに口を開いたその瞳は、遠くを見つめていた。


「周囲には果てしない絶海が広がっていて、どこまで行っても延々と水平線が続いているという。

 もちろん時たま小さい島々が見つかることはあるそうだが、結局大陸だけは見つかることはなかった。

 ……こっちの世界と違ってな」


「と、言うと……」


「いくら『異世界』とはいえ、自然にそんな環境が出来るものなのか?」


「――――!

 つまり、世界そのものに作為的なものを感じるとお前は言いたいのか?

 確かに自然に出来たと言うには単純すぎるが、だからって……!」


 取り乱す義堂に、なおも英人は冷静に続ける。


「それに、そもそも俺達は実際に世界を創った『異能者』を一人知っているじゃないか」


「いやそんな筈は…………あっ」


浅野あさの清治きよはる

 俺の高校時代の同級生にして、翠星すいせい高校を模した世界を創った張本人だ」


 浅野清治――それは十月に起こった事件のキーパーソン。彼は十一年前の翠星高校を忠実に再現した世界を創り出し、英人たちを含めた在校生たちを強制的に引き込んで当時の学校生活を行わせていた。

 もちろん義堂も事件の概要は既に聞いており、杉田すぎた廉次れんじが暴れたことや実は有馬が裏で手を引いていたことも知っている。

 

  世界を創る『異能者』に、有馬の介入。

  もしやこの事件は全ての真相の一端を指し示すものではないのか……? 一旦の冷静を取り戻しことで、義堂の刑事としての勘が俄かに冴えわたり始めた。


「……確か、その世界は自由に動けるのは敷地の中だけだったか」


「正確にはプラスその周辺数メートルってとこだな。

 周囲の景色はあったがほぼほぼ見た目だけだったし、ほとんどゲームみたいな構造と言っていい」


「対する『異世界』も意味を為すのはたった一つの大陸のみで、後は果ての無い絶海が広がっている……。

 確かに、この二つは似ているな」


「規模と質に大きな差はあるがな。

 『異世界』と違って浅野の世界はあらかじめ作ったその人物の器に現実世界から引っ張った魂を入れ込んでいるだけだったし。それに時間軸も大分ズレてた。

 多分浅野や俺みたいな当事者以外は、夢としか思わなかったと思う」


「まるで夢だが、確かにそこにあった世界……これは俺の推理だが、おそらく有馬は『異世界』の秘密が知っていたからこそ浅野清治に近づいたんだろう。

 『異世界』の秘密を知っていたからこそ世界を創れる能力の存在を確信していて、浅野清治がそれに該当すると何らかの形で掴んだんだ。

 しかし問題はどうやって奴はその情報を掴んだということだが……いや待て、もっと言えば」


 義堂は顔を上げ、英人の方へ振り返る。


「どうやって有馬ユウは自らの世界が『異能者』によって創られたと知ったんだ?」


「――――!

 確かに『異世界』が創られた世界だというのなら、有馬もまた創られた存在の筈……! 奴が古くから存在する『悪魔』だから知りえたってことか?

 いや、それならミヅハだって知っていてもいいはずだ……!」


「八坂、確か『異世界』にもこっちの世界と同様に創世神話があると言っていたよな?

 確か『創造主』がどうとか言う」


「ああ、夜空の星屑を集めて世界を創ったって奴だろ?

 もちろん『異世界』に行ったときにその詳細も頭に入れてある。でも此処は――」


 英人は左手の『聖剣』を持ち上げ、刀身を眺める。


「より神話の時代に近い人間に聞いた方がいいだろう」


『……やっぱそうきたか』


 バツが悪そうにその剣身に宿る人格、刀煉一秀は言った。


「たまには千年前の人間らしく核心めいたこと言ってくれよ」


『仮にもお前の先達なんだが……まぁいいか、今の話に俺も思う所はあるしな。

 でもとりあえず断っとくが、あっちの世界の神話なんざ俺はほとんど知らねぇし覚えてねぇ。

 なんせ戦いのことで頭いっぱいだったからな!ははははは!』


「開き直るな」


『そう言うなって……まぁ神話云々に関してはてんで知らねぇが、さっきの世界を創ったとかいう話は聞いたことがある。

 というか言っていた奴がいた』


「……! 

 誰だ、そいつは」


『そいつの名は――――いや待て、』


 言うと、小刻みに動いていた剣身がすん、と静止する。


『何だこの気配は……?』


 その言葉に遅れること数舜、英人と義堂もその異変に感づいた。

 それは現在進行形で消滅している有馬ユウの遺体。そこでまさに何かが生まれようとしている――その時遺体の上に、漆黒の穴が開いた。


「あれは『異世界』へと続く門……!

 有馬が死んでも塞がらないというのか……!」


 それは有馬が開き、取り込んだ『異世界』とこの世界を繋ぐ『道』。

 義堂が思わず驚愕の声を漏らしたが、一方英人はその傍らでなおも冷や汗を頬に垂らして押し黙っていた。


(確かにそれも問題だが、この気配はそれだけじゃ説明がつかない……!

 誰かが……何かがそこにいるのか……!)


 そう、夜の嵐の如く心を強くざわつかせる不安の源が、これである筈がない。

 これはもっと何か、果てしなく絶望的で因縁めいたもの。そうでなければこんな感情には――!


 英人は半ば本能的に左手の『聖剣』を構えた。


「…………っ」


 重すぎる沈黙。

 だがそれも数秒。仕掛けるか否かの判断を下す間もなく、ふ……、と黒い人影がその奥に浮かび上がる。



「────────────────────────────」


 それは、


「────────────────────────」


 その姿は、


「───────────────────」


 その人は、



「────リザ、リア……?」



 最愛の人だった。


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