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異世界の英雄よ、現実世界でもう一度   作者: ヘンリー
第七部:元『英雄』と、変わる世界
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新宿異能大戦73『三本でも聖剣』

――今更だけど、正直なことを言う。


 俺は親父が嫌いだ。大嫌いだ。


 弱いから。

 情けないから。

 ダサいから。

 ウザいから――まぁ理由なんて上げればキリがない。


 だから俺は離婚した後ババアについて行ったし、その後ヤクザにもなった。

 あいつのようにだけはなりたくなかったからな。


 それを証明するために毎日のように殴って、殴られて。

 嘗められねぇように必死に気張って。挙句に最後は殺しまでやって。

 そして、今ようやく気付いたことがある。


 俺はずっと、そんな親父のことばかり考えて生きてきた――



「おおぉらあああああああああっ!!!!!


 幾百もの銃口と砲身が、唸る。

 最早視界には爆炎しか映らず、耳には発狂しかねない程の轟音が響き続ける。


「くらえくらえくらえくらえええええええっ!!!!」


 たつみはありったけに叫んだ。

 というより、叫んでなければ到底やってられなかった。


 その原因の一つはザハドこと、有馬ありまユウに対する恐怖。

 だが今の彼を魂の奥底から震わせる感情がもう1つある――それは驚愕だった。


 自分と全く同じ力を使う八坂やさか英人ひでと

 さらには父が一度世界を救ったという彼の言葉。

 何より、英人の後ろ姿とふと重なった父の背中に不思議と違和感を覚えなかった自分自身に、一番驚いていた。


 ずっと嫌悪してきた。

 ずっと蔑んできた。


 だからこそ芽生えた思いがある。


――絶対に、負けたくない。


 いつしか追い越し、ブチ抜きたいと思っていたその背中。

 その思いは熱となり、炎となって巽の力を燃焼させる!


「死いいいいいいいぃぃねえええええええええぇぇぇぇぇえぇっ!!!!」


 ――――ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


 砲火がさらにその量と勢いを増した。

 高揚のままにぶっ放されるそれらは徐々に徐々にザハドの繰り出す『魔力』を押し返していく。


「よし、もう少しだ!

 やれるか巽!」


「うるせぇ! 

 俺に話しかけん、つーか呼び捨てにすんな!」


 そう英人に怒鳴り、巽はより一層砲身を増やした。


「ぐ、ぐうううううううううぅぅぅぅ……っ!」


 既にその数は巽本来の限界を超えていた。

 代償として視界は紅くぼやけ、体全体が今にも爆発しそうなくらい激しく拍動している。しかし今の巽にとって、そんなことは問題にもならなかった。

 何故なら今はただ目の前にありったけをぶっ放せばいいだけ。

 それに、


(そのクソったれな背中は、もう見逃さねぇよ!)


 ――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!


 それはまさに魂の叫びのような弾幕。

 そして遂に、


「…………押し、勝った……!」


 その均衡が崩れる時が来た。


「八坂!!!」


 義堂が叫ぶより先、英人は駆け出した。


 狙うはザハドただ一人。

 もちろん最後の一撃は、


「力を貸せ、『原初の英雄』!!」


『おうとも!!』


 伝説の『英雄』の力を宿した『聖剣』である。


「『魔を断ち(ヘイ)光指し示す剣(ムダル)』!!!」


 光を纏いし剣身がザハドへと直接振り下ろされた。


「はっ!

 その程度の作戦、僕が予想してなかったとでもいうのかい!?」


 しかし、凝縮された魔力があと皮一枚の所で『聖剣』を防いだ。


「今まで垂れ流していた分を集中させれば、今の『聖剣』の一撃くらい防げるんだよ!」


「ぐ……!」


「いい加減諦めなよ!

 君は僕に、いや『悪』を受け入れたこの世界そのものに負けるんだ!」


 さらにザハドの魔力は勢いを増し、『聖剣』を跳ね返そうとする。


「…………!」


「ハハハハハハハハ!

 何とか言いなよ元『英雄』!」


「……誰が、」


「ん?」


「誰がこれで終わりだと、言った……?」


 英人は右手で『聖剣』を持ち続けながら、左手を虚空に構える。

 そこから放たれた魔力は光となり、一振りの剣を形作った。

 ザハドの表情が驚愕に染まる。


「まさ、か……!」


 山北やまきた創二そうじの『異能』、『生成』。

 その能力は古今東西さらには世界を問わず、ありとあらゆる武器道具を創造すること。


「『魔を断ち(ヘイ)光指し示す剣(ムダル)』!!」


 本物の『聖剣』と創り出された『聖剣』。

 たとえ乗せる想いは弱まろうとも二倍になれば話も変わる。二本の剣身は魔力の壁を突き破り、ザハドの肉体へと食い込んだ。


「が、あ……っ!!」


「おおおらあああああああああああ!」


 残された魔力もうほとんどない。これが本当に最後のチャンス。

 英人は気力を振り絞り二本の『聖剣』を押し込み続けた。


「う、く……!」


 脇腹に食い込んだ刃から断続的に流れ続ける『英雄』の力にザハドは苦渋の表情を浮かべる。

 完全体の『悪魔デビル』も直接『聖剣』を食らってはひとたまりもない。

 本質的に、『悪魔デビル』は『英雄』に打ち倒されるものなのだ。


「…………だから、何だ。

 だから何だというんだ、元『英雄』……っ!

 僕は、」


 だが、しかし。


「僕は『悪魔デビル』だっ!!!!!」


 その『悪魔デビル』は矜持でその宿命に抗った。


「馬鹿な、ここに来てさらに魔力が……八坂!」


「――――っ!」


 英人は義堂ぎどうの叫びに応えることすらしない、いや出来ない。

 それもその筈、彼の体は既に限界を迎えつつあった。

 今までに聞いたことの無いような悲鳴を上げる肉体。しかし、もはや肉体修復に回す魔力などない。

 たとえこの体が滅んでも――今はその覚悟だけが八坂英人と言う男を持ちこたえさせる。


「おおおおおおおおおおおおおおお!」


「はああああああああああああああ!」


 ぶつかる光と闇。

 善と悪。

 意地と矜持。


 しかし、


 ――バキィィィィン。


「!」


「――――はっ。

 僕の勝ちだ、八坂英人……!」


 英人の限界よりも先に『聖剣』の限界が来た。

 ガラスのような音と共に『生成』された剣身が砕け散る。


 英人は目を見開き、敵を見据える。

 眼前には勝利を確信した『悪魔』が決着をつけるべく高濃度の魔力を放出しようとしている。


 もはや一振りの『聖剣』では抗しきれない。

 考えられる手としては『再現修復《トランスリペア―》』を使うことだが、『生成』による複製品とはいえ『聖剣』は『聖剣』。使えば最後確実に魔力は尽き、追撃は完全に不可能になる。


(……だが、今はそうするしか……!)


「うっ、ぐ……うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!

 こいつを受け取れ、『英雄』ッ!!!!」


 その時、真横の地面に何かが突き刺さった。


「これは……!」


「使ええっ!!」


 眩い光を放つ剣身に、黄金の柄。

 見間違える筈もない。これは、『聖剣』。


 いま一度説明しよう。

 山北創二が息子、山北やまきたたつみの『異能』、『生成』。

 その能力は古今東西さらには世界、果ては父子の絆を超えてありとあらゆる武器道具を創造すること――!!


「――言葉を返すぜ、『悪魔デビル』」


 英人は最後の魔力を込め、二つの『聖剣』を振り上げる。


「俺達は『英雄』だっ!!!!!」


 共振し合う光の波が『悪魔デビル』の全身を飲み込んだ。


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