1月14日 ①
三つ大国のうちの一つ「ロット国」から遥か東、海の真ん中に巨大な島があり、そこに建てられたロット国代表学園「クーゼル学園」の入学試験が始まろうとしていた。
「ああ、めんどくさい……」
愚痴を言いながらも学園がある方向に向かって気だるけに歩く青年が一人いた。
学園に着くと受験生と思われる学生達で正門は溢れかえっていた。
緊張で青ざめている者、やる気に満ち溢れて雄叫びをあげている者、3000人以上はいるのではないかという人数の受験生達がいた。
それもその筈、国の代表学園であるこの「クーゼル学園」に入り卒業すればそれだけで将来は約束されたも同然のことなのだ。
しかし、これだけの受験生がいても合格者の数は決まっているので約3000人の中で実技試験と筆記試験の両方に合格した者だけ入学でき、毎年6人に1人くらいは落とされてしまうのだ。
「それでは、実技の能力別試験を始めます。今から受験番号と名前を呼ばれた者は前に出て自身の能力を使用して前にある的を破壊してください」
試験管と思われる40代くらいの眼鏡をかけた男性が声を張り上げて説明を始めた。
試験管の足元に引かれた白線の10mくらい先に丸太に白い布を巻いてできたカカシが立っているのが見えた。
「受験番号12番 水樹 裕太さん―― 前へどうぞ」
「ふん、こんなテスト簡単すぎてやる意味なんかないだろ」
「俺にかかればあんなカカシ軽く消し炭にしてやるぜ」
そう言いながら前に出たのは見るからに高級そうな服を身にまとい身長170cm半ばほどで丸みを帯びた体つきをした青年だった。
「くらえ、ファイアー!」
水樹は、そう叫びながら手のひらをカカシに向けると彼の手のひらから直径20cmほどの火の塊がカカシに向かって飛んでいった。
火の塊に当たったカカシはパンッっと小さな音をあげた。
カカシは少し焦げたものの、あまり最初と変化はなかった。
数秒後、カカシは何もなかったように元通りに復元していた。
「な、なに――そんなばかなことが」
脂ぎった汗を額に垂らしながら涙目で水樹は地面に膝をついてヘタレ込んでしまった。
「12番の君は、まだまだ練習不足で自分の能力を引き出しきれてないようだ」
「君の実技試験は終わったのだから、座り込んでないで後ろに下がりなさい」
試験管はそう言うと手元の用紙に試験の評価を書き込んだ。
水樹もやっとのこと重い体を持ち上げ、後ろの列に戻ったがさっきまでの威勢はもう見る影もなかった。
やはり試験は甘くはないのだと受験生達の皆が思い、より一層試験の空気が張り詰めたところで試験官は次の受験番号と名前を呼んだ。