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おそらくは、彼の平穏な世界征服   作者: あおいろ
第二話 剣士にラブソングを…
43/43

鬼子の誓い

「かーーごーめーかーごーめー」


 その歌声は、誰を守るのか、何が守られているのか問いかけるような、


「かーごのなーかのとぉりぃはー」


 そして守られた、または封印された、あるいは安置されたものを取り出すような、


「いーつーいーつーでぇやぁるーよーあーけーのー」


 はたまた火をつけ、神のやしろ根絶ねだやしにするような、


「ばーんにーつーるとかーめがすーべったー」


 最後に守りの岩を造り、そこから水をさせ、


「うしろのしょーめんだーあれー………」


 水を引き、荒れた大地を支配するような歌声で少女はおごそかに歌い上げた……たん、その手の短剣が輝きを増し、目の前の池のようなみずまりも《《同じ金色に》》輝き出す。


「こ…これは……!?」


 薄暗い洞窟どうくつの奥で、弥麻杜やまとが水溜まりの光に照らされつつ目をみはる……と、水溜まりの水が光のツブとなって消えていき、深さ1メートル近い、水溜まり《《だった》》穴の底があらわになる……直後、


 ゴゴゴゴゴ……


 重い音を立てて穴の底が横にスライドして開いていき、その下のかく部屋べやと、そのゆかに散らばる多数の金色の欠片かけらが現れた。


「あ~、やっぱりこわれてもうとるんどすえ~」


 歌っていた少女──葛葉くずは欠片かけらを見てまゆをひそめる。片や、弥麻杜はかすれる声で、


「何だ、これは……こんな物が、八重垣やえがきかたの裏に……〝里〟に、隠されていたのか………」

「これこそ〝里〟の《《ほんまの》》しゅが代々《だいだい》守っとった〝遺産〟……正しくは、〝遺産〟を納めとった〝はこ〟どすな~♪」

「〝遺産〟を、納めていただと……?」


 はんなり笑む葛葉へ、弥麻杜はのろのろと目をやり、


「先ほどから、言っている……〝遺産〟とは、何なのだ……?」

「あんさんも、よ~く知っとるもんどすえ~♪」


 少女がはんなりした笑みを深め、


「かつて八重垣が滅んだ日、〝遺産〟はみずからの〝宿主やどぬし〟を見つけ、その〝あかし〟を〝宿主〟へおくったんどす……おいわいの〝花火〟もえて♪」

「花火だと……あの日に………」


 弥麻杜がいぶかしむ……が、


「……まさか! 八重垣を滅ぼしたごうか!?」

「〝宿主〟の誕生をお祝いする、大玉おおだまの〝花火〟やったんどすえ~♪」

「……っ!?」


 絶句する弥麻杜……だったが、さらなる事実におもいたって息をのみ、


「……ならば、〝あかし〟とは……業火の中で双子を守っていた、2本の刀か……!?」

「あれらの刀こそは、大いなる〝遺産〟の1つの一部にして、〝遺産〟と〝宿主〟をつなぐ〝かすがい〟なんどすえ~♪」


 胸を張ってまんげに語る少女……しかし、


「そう……はるかな昔、偉大な〝試祖しそ〟がこの星に残しはった数多あまたの〝遺産〟……」


 不意に、遠い空の彼方かなたを見やるように遠い目をして、


「その1つである〝つるぎ〟……すなわち、〝つるぎ〟のごときつのを持った〝鬼〟……それこそが〝瀬織津せおりつ〟と共にこの地に残された、大いなる〝遺産〟であり……その一部こそが……〝鬼〟の2本のつのこそが……あれら2本の刀なんどすえ………」


 遠い故郷をしのぶように沁沁しみじみと語る……が、


「せやけど、あくまで〝つるぎ〟は自我じがの無い道具であり、〝役目〟を果たすために本能で動くだけの存在やったんどす。せやから〝つるぎ〟に十全じゅうぜんの力を出させるには、自我を持った〝宿主〟がかせんかったんどすえ~♪」


 一転、はんなりした笑みに茶目ちゃめを混ぜ、


「ほんで〝つるぎ〟を確実に〝宿主〟に宿らせるには、宿る前に〝つるぎ〟と〝宿主〟を長い時間一緒にさせて、その2つを馴染なじませる必要があったんどすが……」

「なんだと……まさか……」


 目をく弥麻杜へ、葛葉は心から感謝するように、


「あんさんらが〝宿主〟を水牢みずろうに閉じ込めて……〝つるぎ〟の入った〝はこ〟のうえに何年も置いてくれはったんで、しっかり馴染んだんどすえ~♪」

「っ!?」

「ついでにこの数日、〝宿主〟が〝里〟に戻ってからも水牢に閉じ込めといてくれはったどすからな~。最後の調整もバッチリやったんどすえ~♪」

「……!?」

「言うたどすえ? 若様のために〝八重垣やえがき火焚凪かたな〟ゆうせんがえりもビックリな大傑作を生み出してくらはったと。これも沙久夜さくやはんのプロデュースなんどすえ~♪」

「っ!!??」


 愕然がくぜんとする弥麻杜へ、一片の邪気も無い笑みで、


「そういや、あんさんもうとったどすな~。赤ん坊やった火焚凪いもうと殿どの水牢みずろうに……このみずまりに閉じ込めたあと、食事もやらんかったのに成長し、誰ともしゃべらんかったのに言葉を覚えとったと」


 自分を誇るような満面の笑みで、


「それこそは〝つるぎ〟と〝宿主〟が馴染なじんだあかしであり……大いなる〝遺産〟の恩恵おんけいやったんどす♪ 津流城あに殿どのが沙久夜はんの内助の功(プロデュース)で、〝瀬織津せおりつ〟の〝力〟を得たんと同じどすな~♪」

「……〝里〟にいた昔は無力だった津流城が、今ほどの力を得たのも……〝遺産〟とやらの、恩恵だと言うのか……?」

「正しくは、くした分の〝力〟を補充ほじゅうした感じどすな~」


 渋面じゅうめんになる弥麻杜に葛葉は苦笑し、


「本能だけで漠然ばくぜんと動く〝つるぎ〟には、双子が生まれた日の時点やと、双子のどっちが〝宿主〟か分からんかったんどす。せやから、あの日〝つるぎ〟は双子のそれぞれに1本ずつ刀を与えたんどすな」


 口元は苦笑しつつ、瞳に神妙しんみょうな光をともし、


「ま、結果としては津流城あに殿どのにも〝花火〟から守ってもらえたゆう役得やくとくがあったんどすが……そのあとは、《《生まれた時は妹と同じくらいやった》》兄の〝力〟は、〝宿主〟をさだめた〝つるぎ〟により刀に吸い取られてもうたんどすえ。そして……」


 おごそかな顔になり、声にも神秘的な響きをただよわせ、


「吸い取られた〝力〟は、もう1本の刀を通じて妹に……万象ばんしょうの〝真理〟である万世ばんせいの〝神理しんり〟により選ばれた、〝炎の欠片かけら〟にそそまれたんどすな。それこそは……」


 崇高すうこう預言者よげんしゃのごときたたずまいで、


「大いなる〝神理しんり〟にさだめられた、大いなる〝運命さだめ〟の一環いっかん……すなわち、けがれた浮世うきよきよめるべく、〝破界の炎〟を目覚めざめさせる第一歩やったんどす……津流城あに殿どのの生まれ持った〝力〟も、そのためにささげられたんどすえ………」


 ゆっくり息を吐いて口を閉じると、荘重そうちょう静寂せいじゃくで洞窟を支配する……一方、


「………………………………………………」


 もはやじんを超えた話に弥麻杜は圧倒され、茫然ぼうぜんとして静寂せいじゃくの一部となってしまう……と、少女は弥麻杜に同情すると共に、世の無情をはかなむように笑み、


「そういや津流城あに殿どのは、〝里〟で〝妹のしぼかす〟なんぞとわれとったそうどすが……しくも、正鵠せいこくとったんどすな……」


 はかなげに深く嘆息たんそくする……が、


「ま、そのあとドSに見せたドMの〝愛妻あいさい〟が、あふれんばかりの〝愛〟でもう1つの〝遺産〟の……〝瀬織津せおりつ〟力を補充ほじゅうしたから結果オーライなんどすえ♪ 手に手を取って試練しれんえる〝愛に生きる人生〟、うらやましいどすな~♪」


愛妻あいさい〟に己を重ねるように、うっとりした笑みを輝かせ、


「愛し合う者たちが、共に試練しれんえてこそ〝愛〟は深まるんどすえ。何より〝瀬織津せおりつ〟の力を得ること、そもそも〝炎の欠片かけら〟に力をささげること、それこそが……津流城あに殿どのたまわらはった、〝神理しんり〟にもとづく〝運命さだめ〟やったんどす……」


 再び預言者よげんしゃのごときたたずまいで、


「そう……全ては〝神理しんり〟にもとづく〝試練〟であり〝運命さだめ〟……〝炎の欠片かけら〟をさからせ、己の〝愛の炎〟をも盛らせるため、えて血と肉と魂をかちったかたれとして浮世うきよに生まれた……」


 崇高すうこうな笑みを花開はなひらかせ、


「それこそが、津流城あに殿どのの〝運命さだめ〟やったんどす」

「……運命さだめ、だと……?」


 片や弥麻杜は陰鬱いんうつに顔をかげらせ、


「ならば、今日……〝里〟の歴史が閉じるのも、〝運命さだめ〟なのか……あるいは……当主の座を簒奪さんだつした謀反むほんにんへの、〝ばつ〟なのか………」


 暗い顔にうつろ諦観ていかんにじませる……しかし、


「あ~、それなんどすけどな……」


 葛葉が崇高すうこうな笑みをバツが悪そうな苦笑にして、


「さっきうたどすえ? 〝壬申じんしんいくさ〟のおり、草薙の先祖は主家しゅけである八重垣やえがきや他の〝十試属じゅっしぞく〟をたばかって〝瀬織津せおりつ〟を顕現けんげんさせたんやと……せやけど」


 一転、累代るいだいの〝秘宝〟をあつかうように厳粛げんしゅくに、


「それも事実ではあったんどすが……そもそも、そないにするよう草薙あんさんの先祖をそそのかしたんは、七里塚うちの先祖やったんどすえ~♪」


 また一転、累世るいせいの〝秘密〟をあばくように爽快そうかいに、


「ちょいと目を離したすきに、ちょいと〝日本ひのもと〟が調子に乗っとったどすからな。皇弟こうてい使つこうて、〝日本ひのもと〟を再び〝やまと〟の手の内に収める計略けいりゃくやったんどすえ~♪」


 微塵みじんの邪気も悪意も無い、あどけない悪戯いたずらのような笑みを浮かべ、


「あ、これは〝十試属〟の中でも七里塚うちだけの秘密やから、他言無用たごんむようどすえ~♪」


 鼈甲べっこうかみめをまむと、ペロリとめた……一方、


「ば……馬鹿な……ならば、我らは……」


 弥麻杜は衝撃しょうげきと……いかりで石のよろいおおわれた体を震わせ、


いにしえの〝いくさ〟ののち……国に捨てられ、零落れいらくしたことも……今日……沙久夜の狂気の、にえにされたことも……」


 しの顔を憤怒ふんぬゆがめ、


「全て……七里塚おまえら策謀さくぼうだったのか……!」

「〝里〟の主家しゅけにさせたんやから、ちんはたっぷりはずんだんどすえ~♪」

「この……クズ参謀がぁぁ……!!」

「よ~くわれるんどすえ~♪」

「……おのれええええええええええええええええええええええええええええっ!!」


 悪意も罪悪感も無い先祖せんぞ代々《だいだい》の〝クズ参謀〟に、太った体を怒りで破裂させそうな弥麻杜が石のよろいに無数のとげを生やし襲いかかる!!


「風は迷わずくだく。古き時代の残骸ざんがいを」


 だが洞窟の入り口方向から烈風が吹いて弥麻杜を襲い、その身は葛葉の頭上を越えて吹き飛ばされ洞窟の奥の壁に激突。鎧のとげことごとく折れた身が池のようなみずまりだった穴に落ち、底にあるかく部屋べやに転がり込んだ。


「ペンテシレイア、丁度ええところに来てくれたどすな~♪」


 葛葉が洞窟の入り口方向を見て、乗馬用のムチを手に歩いてくる少女へ笑み、


「外の様子は、どないどすえ~?」

「風は驚きにみだれる。故郷を炎に覆う紅蓮ぐれんの鬼に」

「しっかり〝つるぎ〟が〝宿主〟に宿ってくれたみたいどすな~♪」


〝草薙の里〟のはしにある洞窟の奥で、〝鬼〟の顕現けんげんを知り笑みを深める葛葉。


「くっ……ついに、〝鬼〟が……〝鬼子おにご〟が、目覚めてしまったのか……!」


 同時に、隠し部屋に落ちた弥麻杜は無念とせつかんに打ち震え、


「ワシは……またしても、そんじたのか……〝鬼子〟を、はばめなかったのか……!」

「そういや、あんさんらは〝宿主〟を〝鬼子おにご〟と呼んどったんどすな~。せやけど〝遺産〟が……〝つるぎ〟が〝鬼〟やったことを思うと、あながちまとはずれやなかったんどすえ~♪」


 葛葉が屈託くったくなく笑むと、弥麻杜は隠し部屋の底からころすような視線で見上げ、


「分かっているのか……このまま〝鬼子〟をに放てば……〝鬼子やつ〟の業火ごうかにより、灰燼かいじんすのだぞ……お前たち、諸共もろともな……!!」

「確かに、洞窟の入り口に炎をける〝しゅ〟をかけとらんかったら、うちらも業火ごうかで黒コゲになっとったどすな~♪」


 葛葉は笑んだまま弥麻杜の視線を受け流すと、粛然しゅくぜんと歩いてくる若草色わかくさいろの髪の少女へ向き、


「あんさんも〝里〟が炎に包まれる直前、ギリギリで洞窟にすべんだんどすえ? ともあれ、おつかれさんどすえ、ペンテシレイア♪」

「風は〝王〟を追って吹き進む。そくさくを捨て置いて」


 顔の左のみにきん細工ざいくの小さな蹄鉄ていてつげる少女が、水溜まりだった穴のそばに来て苦々《にがにが》しく葛葉をにらんだ。


「ま、ちゃんと仕事をしてくらはるなら、うちを見捨てようが見殺しにしようが文句は無いんどすえ」


 穴のふちでペンテシレイアと並びつつ、肩をすくめて苦笑する葛葉。次いで穴の底へ……底にある隠し部屋に散らばる金色の破片へ目を向け、


「ほんなら……仕事をしてくれるどすか、〝派生はせい〟の女王様。《《若様》》のために♪」

「……風は一途いちずに吹き抜ける。〝起源〟のつとめを果たすため」


 葛葉に揶揄やゆ優越感ゆうえつかんにおわせる視線を向けられたペンテシレイアが、眉間みけんのシワを深めつつも三つ編みの蹄鉄ていてつを金色に輝かせる。そしてオーケストラの指揮者のように優雅にムチを振り、その先端を隠し部屋へ向ける……と、


「な…何だ……?」


 隠し部屋で倒れている弥麻杜の目の前で、部屋の中に金色の光のツブが無数に発生し、うずを巻いて床に散らばる金色の破片を包んでいく。


「な…何だか知らんが、お前らの思い通りにはさせんぞ!!」


 弥麻杜がヒビだらけの鎧に覆われた体を起こし、金色の竜巻となりつつある光のツブへつかみかかろうとする──が、


「ぐおっ!?」


 足を覆う鎧が砕け――否、鎧もろとも《《中身の足も砕け散って》》倒れ込み、


「ぐふっ……があぁ……!!」


 続けて腰も腹も、鎧もろとも砕け散っていき……


「なんやなつかかしいどすな~♪」


 はんなり笑む葛葉の視線の先では、ヒビだらけの鎧に覆われた弥麻杜が、頭と胸と両腕《《だけ》》の姿になって隠し部屋の床に倒れていた。


「ま、あんだけ羽蟻はありを……〝分体ぶんたい〟を作ったら、そないになるんどすえ~♪」


 胸から下が無くなった弥麻杜の胴体の断面は、鎧だけでなく、その中の《《肉体のはずの部分まで》》全て石になっていた。


「一応、頭は生身なまみが残っとるんどすえ? それ以外は〝力〟を使い過ぎて崩れてもうたから、異能で作った石の体でおぎなっとったんどすな~♪」


 池のような水溜まりだった穴のふちで、葛葉がどこか感嘆するようなまなしを穴の底の隠し部屋で倒れている弥麻杜へ向ける。


「ま、その体と……〝執念しゅうねん〟も限界っぽいどすけどな~♪」

「お…おのれぇ……!!」


 かろうじて残っている胸と両腕も砕けかけている弥麻杜が、あらん限りの憎悪ぞうおめて隠し部屋の床から葛葉をにらみつける……一方、


「風は〝さかずき〟にそそぐ。大地へ流れる母なるかわの水を」


 隠し部屋の中央で光のツブは金色に輝く竜巻となり、床に散らばる金色の破片をげていき、


「風は〝すき〟となってひらく。永遠とわの真理なる黄金の大地を」


 輝く竜巻の中で、光のツブが接着剤せっちゃくざいのように多数の破片をつなげていき、


「風は〝おの〟となってきざむ。万象ばんしょうかえる大地の目印めじるしを」


 光のツブにつなげられ、竜巻の中で多数の破片が1つの形に組み上がっていき……


「風は永遠とわに吹き流れ、全てのものは風にてかえる……〝風化ふうか還元かんげん〟!!」


 輝く竜巻がはじけるように霧散むさんする……と、高さとおくきが60センチ、横幅よこはばが120センチほどの、金色に輝く〝はこ〟があらわれた。


「風は〝神理しんり〟のままに、みちびく……」


 輝く〝はこ〟の表面には、光のツブにつなげられた多数の破片のが、多数の光の線となって走っており、


「偉大な〝女王〟の、名の元に………」


 多数の輝くは〝きんぎ〟と呼ばれる陶磁とうじを修復する伝統技法のごとき壮麗そうれいさにあふれ、〝はこ〟自体の荘厳そうごんな輝きと一体となり、目に映すのもおそおおいと思わせるほどの神々《こうごう》しい輝きを放っていた………


「おつとめ、おつかれさんどすえ~♪」


 その〝はこ〟がある隠し部屋を見下みおろしつつ、水溜まりだった穴のふちで葛葉が満足そうにうなずき、肩で息するとなりのペンテシレイアをねぎらう。


「風は苦も無く、おどる……草原でたわむる、駿馬しゅんめのごとく………」


 片やペンテシレイアは疲労ひろう困憊こんぱいていで顔を汗にらしつつも、最後の意地とばかりに顔をめ強がりを吐く……同時に、


「こ…これが……〝遺産〟を納めていた、〝はこ〟なのか………」


はこ〟のまばゆい輝きと魂をつぶすような重圧に、弥麻杜は砕けかけの体を震わせる……と、


「〝はこ〟だけでも、ごっつい〝力〟があるんどすえ~♪」


 《《弥麻杜と違い》》〝はこ〟の重圧にも動じない葛葉がはんなり笑み、


「なんせ長~~~~~~~~い間〝つるぎ〟を封印しとったんどすからな~♪」

 

 水溜まりだった穴のふちで自慢げに胸を張る……が、不意に苦笑して、


「ま、その封印の力のせいで、火焚凪いもうと殿どのも〝はこ〟のそばに……水牢みずろうの中におった間は、〝力〟を充分じゅうぶん使つかえのうなっとったんどすけどな……せやけど」


 また一転、はんなりと笑み、


「若様(ひき)いる郎党ろうとうが〝しき〟で〝はこ〟を壊してくらはったんで、封印をかれた〝つるぎ〟が〝宿主やどぬし〟に宿ったんどすえ~♪」


 全て思惑おもわくどおりと笑みをほころばせ、視線を隠し部屋の底で倒れる弥麻杜から、弥麻杜のそばの〝はこ〟へ移すと、


「ほんなら〝はこ〟を拝領はいりょうさせてもらうんどすえ。その〝はこ〟自体も、偉大な〝試祖しそ〟の大いなる〝遺産〟の1つどすからな~♪」


 隣のペンテシレイアへ目配めくばせし、穴のふちから隠し部屋へりる──寸前、


「ゲ~ッゲッゲッゲ~~~!!」


 洞窟の奥の壁が砕け、1本の巨大な虫のあしが飛び出した。

 続いてギラギラ光る青い複眼と牙のようなアゴを持つ頭が、さらに無数のトゲがえた甲羅こうらを背負い、《《5本》》のあしのうち後の2本で直立する胴体が出現し……身長20メートルを超える虫のような異星人が、巨体で洞窟を崩しつつ現れた。


「チュ…チュ・バギシームか……!?」


 崩されて広げられる洞窟の破片が多数降ってくる中、突然現れた闘技場のグランドチャンピオンに弥麻杜が目をく……直後、


「ゲゲゲッ、お宝はいただくんだぜえええええ!!」


 巨大な異星人が隠し部屋の〝はこ〟へあしの1本を伸ばす……が、


「させんのどすえ!」

「風はく。手負ておいの虫を」


 少女たちが炎と烈風を放ち異星人から〝はこ〟を守り、


「ゲゲッ、虫ケラどもがあああああっ!!」


 異星人もあしのツメを振るい甲羅こうらのトゲを飛ばして応戦し、洞窟は崩落ほうらく寸前すんぜんに破壊されていく……と、


「うう……」


 目の前の激戦にすべの無い弥麻杜が、低いうめきをらし、


「馬鹿な……このようなこと……」


 砕けかけた胸をみだすのは、おそれか、あきらめか、あるいは……


「ワシは……断じて認めん……!!」


 魂の最後の一欠片ひとかけらに残った、激しいいかりか。


「〝里〟も……家族も……捨てたと、いうのに……」


 頭と胸と両腕だけの体を、ずるずるとわせ、


「何もせぬまま……終わるなど……」


 砕けかけている両腕から、ぼろぼろと破片を落とし、


分家ぶんけとはいえ……ワシも〝無道三家むどうさんけ〟の……〝十試属じゅっしぞく〟の、はしくれならば……」


 崩壊寸前の手を、よろよろと伸ばす先には……


「大いなる、遺産よ……」


 輝く金色の〝はこ〟があり……


何卒なにとぞ……何卒なにとぞ……」


 戦禍せんかうずく洞窟で……


八重垣おにごや……七里塚くず、だけでなく……」


 腕も胸も砕けるにえが……


草薙われらにも……慈悲じひを……」


 地獄の底の亡者もうじゃのように……


「我が身にも……力を……」


 魂の底からねがう……


「大いなる……力をぉぉぉ……!!」


 刹那、〝はこ〟がまばゆく輝き、金色の光で洞窟を満たした………


                  ◆


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 溶岩の海に立つ150メートルの〝鬼〟が、縦横じゅうおう無尽むじんに炎の剣を振り回し、


「はああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 な空を舞う25メートルの鋼の巨人が、光剣を〝鬼〟の剣に打ち込むとまじえるやいばを押し込み紅蓮ぐれんの巨体に肉薄にくはくしようとする──だが、


「うっ!?」


 不意に足にからみついた溶岩にられ下に落ち、白い鋼の巨人は溶岩の海に沈んだ。眼下の溶岩の海の一部が、へびのように伸びて巨人をとらえたのだ──しかし、


「てやあああああああああああああああああああああああああああああっ!」


〝鬼〟の背後の海面から巨人が飛び出し、再び〝鬼〟に迫ろうとする。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 だが〝鬼〟が咆哮ほうこうすると、溶岩の海に浮かぶ無数の火山がげる溶岩が一斉いっせいに巨人に襲いかかる。が、巨人は咄嗟とっさに上昇し、無数の溶岩の奔流ほんりゅうを避けると〝鬼〟へ突進する。


「はあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 対して〝鬼〟は、ひたい右側みぎがわに生える刀のようなつのから炎を噴き出す。と、その火山の噴火ふんかのごとき炎へ、巨人は津波のような水を光剣から放ち……


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 巨大な水蒸気すいじょうき爆発ばくはつが真っ赤な空に広がり……やがて水蒸気の中から、白い鋼の巨人が──巨人になった煌路こうじが現れ、


「……南米で、津流城つるぎの技も〝吸収〟しておいて良かったよ」


 空中で〝鬼〟から距離を取ると、足の側面に生える航空機の主翼しゅよくでバランスを取って体勢を整え、


「と言っても〝吸収〟した技は一度しか使えないから、また〝吸収〟しない限り水はめだけどね」


 空に浮くまま刀身の水を払うように、悠然ゆうぜんと光剣を振る。


「やっぱり、この空間──おっと」


 周囲を見回そうとした煌路へ、無数の火山が山肌やまはだからおびただしい岩塊がんかい砲弾ほうだんのようにす。が、煌路は光剣から白金色はくきんいろの光のツブを多数()き、岩塊を全て〝消滅〟させた。


常備じょうびしていた姉さんの〝力〟も使っちゃったよ。それにしても……」


 わずかに後退あとずさる〝鬼〟に、煌路は空中で肩をすくめて苦笑しつつ、


「やっぱり、この空間にあるもの全てが君の意のままになるわけだね」


 水蒸気が消えた真っ赤な空や、天高く溶岩を噴き上げる無数の火山、そしてそれらの火山が浮かぶ見渡す限りの溶岩の海を見回し、


「さすが君の〝異元いげん領域りょういき〟だね……火焚凪かたな


 柔和にゅうわな笑みを、眼下で溶岩の海に立つ〝鬼〟へ──〝鬼〟となった幼馴染へ向ける……と、


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


〝鬼〟はつのから炎を噴き上げつつ咆哮ほうこうし、溶岩の海を地獄のかまのようにたぎらせ、火山が噴き上げる溶岩を爆発するように激しくさせる……かさなった鬱屈うっくつを、いかりにまかせ暴走させるように。


「う~ん……誕生日のおいわいの蝋燭ろうそくにしては、ちょっと派手はでかな」


 片や空に浮く煌路は、無数の火山がげる溶岩を見ながら柔和な笑みに一抹いちまつにがみを混ぜ、


「覚えているかな? 君がいとまいをした日に、僕が言ったことを」


 空からゆっくりと降下していき、


「今年も、君への誕生日プレゼントを用意してあるんだよって」


〝鬼〟と同じく溶岩の海に立ち、


「いろいろあって渡せなかったけど……今、そのプレゼントを渡してもいいかな」


 笑みにさびしさをにじませつつも、決意の瞳で〝鬼〟を見あげ、


「そのために今日、僕はここに来たんだからね」


 えの無い幼馴染へ、贖罪しょくざいを願い出るように右手をべる……が、


 ザンッ


 差し伸べた右腕が、肩から〝鬼〟の剣に斬り飛ばされ、


 ザシュッ


 左腕も同じく斬り飛ばされ、


 ザシャアアアッ


 両足も付け根から斬り落とされ、芋虫いもむしのようになった鋼の巨人が斬撃ざんげきの衝撃で空高くばされた……刹那、


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 一際ひときわ激しい咆哮ほうこう──否、〝慟哭どうこく〟と共に……


 ザガッ!!


〝鬼〟が剣から飛ばした斬撃ざんげきで、巨人の頭が胴からばされた。


火焚かた……………」


 ばされた鋼の巨人の頭が、〝鬼〟の頭へと落ちてくる……と、


 バキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!


 巨人の頭が砕け、中から現れたポロシャツとチノパンツを着た煌路が白木しらきさやから刀を抜いて〝鬼〟の頭にせまり、


「ようやく、ここまで近づけたよ」


 柔和な笑みの奥に獰猛どうもうさをただよわせ、〝鬼〟のつのが生えていないひたい左側ひだりがわに刀をててたてき、


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 炎が鮮血せんけつのように激しくす切れ目から、刀はひたいに突き立てたままにして絶叫する〝鬼〟の頭の中に飛び込んだ。そして右手に出した光剣でせまりくる炎を〝吸収〟しつつ、赤い肉で出来た灼熱しゃくねつのトンネルを進んでいくと……


「ごめんね火焚凪……!」


 体内の異物を排除はいじょするように襲ってくる神経のごとき多数の赤いくだを、つらそうに唇を噛んではらっていく。そうしてトンネルを進んでいくと、〝鬼〟の頭の中心にいたり……脈打みゃくうつ赤い肉のかべに囲まれた、広い球形の空間に出た。


「……っ!」


 目をみはる煌路が見る先……空間の中心に、1人の〝よろい武者むしゃ〟が浮かんでいる。

 燃え盛る炎を固めたような鎧で全身を包み、右横みぎよこから1本のつのを生やすかぶと般若はんにゃを思わせる面をつけた、〝鬼〟のごとき真紅の〝鎧武者〟だ。

 どうだにせず無言でたたずむ〝鎧武者〟の鎧には、各所に空間上部の肉壁から伸びる赤いくだ傀儡くぐつあやついとのように多数(つな)がれている。


「火焚凪……」


 やはり空間内に浮く煌路がつぶやくように呼びかける……と、〝鎧武者〟は傀儡くぐつのごとく動き出し、《《中身の入っていない》》から白木しらきさや木刀ぼくとうのように構える。


「……僕の声が、聞こえているかい?」


 煌路もから白木しらきさやを構え、灼熱しゃくねつの空間で両者が対峙たいじした……途端とたん


 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!


 両者は一気に距離をさやで激しくむすぶ。その常人には視認もかなわぬ超高速の太刀合たちあいは、一太刀ひとたちごとに互いの〝思い〟を交錯こうさくさせるように数万ものみを1秒にも満たぬにぶつけ合ったすえ……


 ビシィッ


 両者は相手へはんとなり、伸ばした右手に握るさやの先を互いの眉間みけんに突きつける。


「剣士は剣で語る、か……」


 つーー……と、煌路の眉間みけんから血がしたたり、


にくだね……僕のいえで一緒にごした10年よりも――」


 ピシッ……と、鎧武者の面に眉間みけんから亀裂きれつが走り、


「本気でわざまじえた、今の一瞬の方が君の気持ちが分かった気がするよ」


 球形の空間の中心で、互いの眉間みけんさやを突きつけたまま、


「それとも……分かっていたのに、分かっていないと思い込んでいたのかな……」


 柔和な笑みに自嘲じちょうを混ぜる煌路……だったが、


「そのせいで……僕は君を、悲しませてばかりだった……」


 一転、誠実せいじつな瞳で、


「僕の家に来て以来、君は僕に尽くしてくれたよね……」


 真摯しんしな声で、


「それには本当に感謝していたし、嬉しかったよ……なのに、僕は……」


 煌路が沈痛ちんつうに顔を曇らせる……と、鎧武者の面が亀裂におおわれ……


「ごめんね、火焚凪」


 般若はんにゃのような面が粉々《こなごな》に砕け散り、


「そして、ありがとう」


 現れた傀儡くぐつのように無表情な少女の顔は、右半分に浮かぶさかる炎のような模様と右の瞳を真紅に輝かせている……と、


「心をめて、お祝いするよ」


 少年は右手のさやばなしつつ、


「おびも感謝も、僕の全ての心をめて……」


 少女の顔に自分の顔を近づけていき……


「ハッピーバースデー、火焚凪」


 さやを取り落とす少女の唇に、自分の唇をかさねた……そして、


「僕の心をめた……〝たいへんよくできましたのチュー〟だよ」


 舌を伸ばして少女の唇をこじ開け、熱い口内こうない粘膜ねんまくを情熱的にねぶまわす。


「………っ!」


 無表情だった少女の顔と瞳が動揺どうようれ、その鎧と球形の空間を──巨大な〝鬼〟をつなぐ神経のようなくだが激しく脈動みゃくどうする……破裂しそうに鼓動こどうする心臓のごとく。


「……う……あ……あぁ………」


 くだと共に震える少女がかぼそうめきをらすと、その口をふさいでいた唇を少年は少女のおとがいわせて下へ移動させていく。そうして唾液だえきによるなまめかしくきらめくみちを少女のおとがいきざんだ果てに、少女ののどに唇を触れさせ……


「約束の、誕生日プレゼントだよ……」


 口の中から舌に乗せ、炎をかたどった金の台座にまれ、燃えるような真紅にいろどられる直径15ミリほどの丸い結晶を出し、


「僕の大切な、〝まもがたな〟へのね………」


 贖罪しょくざいと感謝といとしさをめ、火照ほてって汗ばんだ少女ののどに当てた……直後、台座が金の棒を左右に伸ばし首輪となり、結晶は少女の首に固定された。


「あ……ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 刹那、少女がのけるように激しく震え、脈動みゃくどうする多数のくだと共に球形の空間も──巨大な〝鬼〟も溶岩の海の上で悶絶もんぜつするように暴れる。


「火焚凪!!」


 自分をはじばさんばかりに暴れる少女を、激震げきしんする空間の中で煌路が必死にめる……と、


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 鎧をまとう少女の全身から紅蓮ぐれん業火ごうかした。

 かつて少女の誕生を祝い、少女の一族を滅ぼした業火はなびが。


焚凪たな……!!」


 球形の空間を埋める業火ごうかに焼かれつつも煌路は少女をめ続け、


「やっぱり、僕は……君の気持ちを、分かっていなかったんだね………」


 霊剣術れいけんじゅつ一端いったんか、業火を通じ少女の〝気持ち〟が少年に流れ込む。

 荒れ狂う業火のごとき、恩人おんじんへの〝依存いぞん〟や〝執着しゅうちゃく〟が。

〝忠義〟という牢獄ろうごくの中で燃え盛る、幼馴染への積年の〝思い〟が。

 そして何より……自分の力が主君をそこなうやも知れぬ、おぞましい〝呪い〟への〝恐怖〟が……だが、


「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 少女の絶叫と共に業火が火勢かせいを増し、主君をそこなう〝恐怖〟を現実のものとしてしまう……と、主君の腕の中で暴れる少女の鎧に、多数のれつが走った。狂乱きょうらんすえに壊れていく、あわれな少女の魂に連動れんどうするように……対して、


「火焚凪!!」


 火勢を増した業火に焼かれつつも、煌路は一層強く少女を抱き締める。

 光剣を出して火を〝吸収〟することもせず、少女の全てを受け止めるかのように、壊れかけた鎧に包まれる身を強く抱き締める……そして、


「君の気持ちに、僕は何も応えられていなかったんだね」


 一言一言ひとことひとことめるように、少女に語りかける。


「恩人としても幼馴染としても主君としても、僕は未熟だったんだね」


 片や少女は、さらに業火を激しくし、


「そのせいで、ずっと君を苦しめていたんだね」


 少年の腕の中でもがくように暴れ、


「実を言うと、この先も君に応えられるような人間になれる自信は無いんだ……」


 真紅の鎧が亀裂におおわれ今にも砕けそうになる……


「でも、約束するよ」


 少年は殊更ことさら強く少女を抱き締めると、


「君に相応ふさわしい恩人に、幼馴染に、主君になるために、全力を尽くすって……」


 右手の甲に光をともし、


「君が僕に、尽くしてくれたようにね……そして……」


 光を緑の勾玉まがたまの形にし、


「君には素晴らしい未来があるって、伝えるために……君の素晴らしい未来を、証明するために……!!」


 心からのちかいを宣言した……途端、少女の首輪の結晶も真紅に輝き……


「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 絶叫しつつ涙をあふれさせる少女が、右の瞳と同じく左の瞳も真紅に輝かせ、顔の右半分に浮かぶ真紅に輝く炎のような模様を顔の左半分にもあらわした……直後、


 ぶちぶちぶち……!


 真紅の鎧と〝鬼〟をつなあやついとのごとき多数のくだ千切ちぎれていき、右横みぎよこにのみつのやしていたかぶと左横ひだりよこにもつのやしていく……同時に、


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!


 ひたい右側みぎがわにのみつのやす巨大な〝鬼〟も、煌路がひたい左側ひだりがわに突き立てて残していた刀が《《右側と同じ》》つのへと変化し……ひたいの左右に刀のようなつのやす、150メートルを超える紅蓮ぐれんの〝鬼〟が見渡す限りの溶岩の海にあらわれた……刹那、


 バキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!!


〝鬼〟の頭の中で少女の鎧が木端微塵こっぱみじんに砕け散り、真紅に輝く髪を腰までなびかせ、真紅に輝く炎のような模様を全身に浮かべる、首輪以外一糸(いっし)まとわぬ美しい女体にょたいあらわとなる……と、


「あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 全裸の少女が滂沱ぼうだと涙しながら絶叫し、一際ひときわ激しい業火を全身からし……


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 業火が〝鬼〟の頭の中心から脳天までをけ、〝鬼〟の頭頂とうちょうから巨大な火柱ひばしらが……少年と少女をんだ火柱ひばしらが、な空に高々《たかだか》とがる……そして、


「あああああ……あ……あぁぁ………」


 火柱ひばしらが消えると、中から現れた少女は〝鬼〟の頭上ずじょう高くであやついとの切れた傀儡くぐつのように脱力だつりょくし……


「火焚凪!!」


 同じく火柱ひばしらの中から現れた煌路が少女をお姫様だっこでかかえ、静かに〝鬼〟の頭に着地する……と、かかえられる少女の全身を覆う炎のような模様が消え、真紅に輝く髪も漆細工うるしざいくを思わせる黒髪になり……


「火焚凪……」


 腕の中でまぶたを閉じてぐったりする少女に煌路は眉尻まゆじりを下げる。が、少女が小さく息をして、かすかに胸を上下させていることに安堵あんどの息をらす……しかし、その上下する《《Zクラス屈指の豊乳》》に目を奪われてしまい……


「………………………………………………………………………………………………」


 お姫様だっこしている少女の《《一糸纏わぬ》》全身に見入みいってしまう。

 特大のバストの下には長年のけん修行しゅぎょうによりめられたウエストが細いくびれを作っており、さらに視線を下げると安産型あんざんがたのボリュームあふれるヒップと、これもけん修行しゅぎょうの成果と言えるりに満ちた太腿ふとももが見える。

 加えて瑞々《みずみず》しい白皙はくせきはだは輝くばかりにまぶしく、トップモデルもかおけの足の長くメリハリのいた肢体したいは健康的な美しさに満ちると同時、17歳になったばかりとは思えぬ色気いろけあふれる大人おとなびたプロポーションをあらわしている……だが、


「……これも……僕のせいなのかな………」


 その大人おとなびた肢体したいも、自分が苦労をかけさせた結果なのではと煌路は苦悩くのうする。

 長年の苦労が肉体的にも影響えいきょうを与え、実際の年齢ねんれい以上に大人にさせてしまったのではないかと……その時、


「……うぅ………」


 煌路の腕の中で、目元に涙のあとを残す少女がまぶたを重そうに開け……


「……と…の………」


 真紅から黒に戻った瞳が、ぼんやりとした視界にうつすのは……服のあちこちにふちげた穴を開け、肌にもところどころあとをつけた上、ひたいから血をしたたらせる主君の姿……


「……面目めんぼく次第しだいもござりませぬ!!」


 視界と意識を鮮明せんめいにした少女が主君の腕の中から飛び出し、〝鬼〟の頭の上で震える身を深々と土下座どげざさせ……


「主君をそこなう天にもそむ罪業ざいごう……全ては拙者せっしゃ不忠ふちゅう不徳ふとくにござりまする……!!」


 嗚咽おえつするような声をしぼす少女には、日頃ひごろ雪渓せっけいを斬り裂く滝のごとく冷厳れいげんで、深淵しんえん霊峰れいほうのごとく幽玄ゆうげんたたずまいなど微塵みじんも無い。


「かくなる上は……」


 それは厳粛げんしゅくふうまとう現代の〝サムライ〟にあらず、ただただおびえ泣きじゃくる幼子おさなごのごときはかない姿……


「どうか……殿との御手おてにて、愚かなしんくびを……」


 あるいは……大切な人に見捨てられ、絶望にひしがれるかよわい乙女の姿……


「顔を上げてよ、火焚凪」


 だが、乙女の前で少年は両ヒザをつき、


あやまらないといけないのは、僕の方だよ」


 乙女の両肩をつかむと、その上体じょうたいを起こして優しくめ、


「こんなになるまで君をめてしまったことこそ、僕の罪だよ」

「と…の……」


 抱き締められる乙女は目をみはると、目元に涙をにじませつつ唇を戦慄わななかせ……


「左様な、こと……全ては……己をぎょせぬ、我が身の未熟……狂乱きょうらんせし、拙者の……」

「狂乱、か……」


 火焚凪を抱き締めつつ、煌路は自分たちが腰を下ろす〝鬼〟の頭を見回す。

 煌路がひたいの左につけたきずや火焚凪が脳天に開けた穴はすでふさがっているが、巨大な〝鬼〟はあやついとの切れた傀儡くぐつのように力なく溶岩の海の上に立ち尽くしている。


「君が暴れたのも、この〝鬼〟にまれていたからじゃないのかい? はるかな昔、この地にのこされた大いなる〝遺産〟……そんなものに初めて触れたのなら、正気をくしても仕方が無いよ」


 優しく傷をいやすような声をつむぎつつ、少女を抱き締める腕に力を入れると自分の右手の甲を見て、


「僕だって、僕にとっての〝大いなる力〟をまだまだ使いこなせていないしね」


 端正たんせいな顔を自嘲じちょう気味ぎみに笑ませる……が、不意に心苦こころぐるしそうに顔にかげを落とし、


「それに……君が暴走するのは、事前じぜんに予想していたことだったんだよ。葛葉くずはの今回の作戦には、それもまれていた……と言うより、それが作戦のかなめだったんだよ……」


 火焚凪が小さく息をのんだ。


「だから、そのことも謝らないといけないよね……君の成長に必要だったとしても、君が苦しむのを分かっていて作戦を認めたのは、間違いなく僕の責任だからね……」


 重い声で懺悔ざんげしつつ、


「それに、もう1つ……君も気づいているよね……」


 火焚凪を抱き締めたまま、右手の指で少女の首輪のうなじの部分にれ、


「この首輪……ブレイクが用意してくれたものなんだよ。さっき僕が自分の〝異元領域〟に来た時、ビリヤードの球に仕込しこんで僕のズボンのポケットに入れてあったんだけどね」


 火焚凪が小さく唇をめた。


「ブレイクから今年の君の誕生日プレゼントを用意してやるって言われた時は、僕も意外に感じたんだけど……今年の姉さんへの誕生日プレゼントを用意する時にも、彼女は手を貸してくれたからね」


 火焚凪の機嫌きげんやわらげるように声をやわらかくして、


「姉さんへおくくしの制作を職人さんにらいする時、素材になる白金プラチナを彼女が用意してくれたんだよ。それがすごしつのいい白金プラチナだったから、今回の君へのプレゼントも任せて問題は無いと思ったんだ。それに……」


 お節介せっかいかくするように苦笑し、


「君たちが少しでも仲良くなるけになればいいかなって思って、OKしたんだよ……まあ、やっぱりと言うべきか、裏があったわけだけどね」


 溜め息しつつ苦笑を深める煌路……だったが、


「数日前、葛葉から今回の作戦の詳細しょうさいを聞いたんだけど、その中でブレイクの用意するプレゼントが大きな役割やくわりを持つって知ったんだよ」


 一転、冷徹れいてつに顔を引き締め


「この首輪……正確には首輪にまれている結晶は、リオさんが僕に用意してくれる〝大いなる力〟と連動して君の暴走を……〝鬼〟の力をおさえる効果があるってね……実際は、それだけじゃなかったみたいだけど」


〝支配者〟の冷厳れいげんな光を瞳にともし、


「さっき結晶が光って機能が発動した時、〝鬼〟の力をおさえるのと一緒に君の〝気持ち〟が僕に流れ込んで来たんだけど……」


 火焚凪が息をのんで赤面せきめんするも、武士のなさけわず……


「他にも、何かの〝異質〟な力が君を通してこの世に流れ込んで来るのを感じたよ」


 厳粛げんしゅくげんに満ちた声と重圧が灼熱しゃくねつの〝異元いげん領域りょういき〟を震わせる……が、


もっとも、その力に邪悪な感じは受けなかったんだけどね……むしろ、この世の善悪を……この世の法則ほうそく超越ちょうえつした、この世とはかたを〝異質〟にするはるかに高い時空からの力……そんな印象いんしょうを受けたかな」


 自分でも事実を理解しきれないような、どう言えば良いか分からないような、そんな口ぶりで顔をかたくする煌路……だったが、不意に気をゆるめ、威厳を残しつつも柔和にゅうわに笑み、


「あんな〝力〟を呼び出せる代物しろものを用意できるなんて、やっぱりブレイクも底の知れないところがあるよね」


 えて得体えたいの知れぬモノも受け入れる……そんな〝王器〟をまといつつ明るい声で、


「まあ実際、彼女の素性すじょうは僕も知らないんだけどね」

「……その上で、あの下女げじょも、クズ参謀も、信頼なさるのでござりまするか……?」


〝王器〟に気圧けおされつつ、少女がかすかに震える声をらす……と、


勿論もちろんだよ」


 少年は幼馴染を強くめ、


「君を信頼するのと同じにね」


 密着する幼馴染の耳元に、ありったけの親愛しんあいめてささやいた。

 対して少女は息をのんで目をくと、りそうな声で辿辿たどたどしく……


「……なれど、拙者は……僭越せんえつ、にも……主君に、すがり……御側おそばより、とおざけられ………」


 目元に涙をめ、苦しそうに息をみだす少女……対して、


「うん……高等部に入学する時、僕は君を、僕の家から学院のりょうに移したよね……そうしてすがるのを……僕に依存いぞんするのをやめさせて、ひとちさせるのが君のためだと思って……」


 少年も瞳にうれいを浮かべ、


「でも……それは君の意思を……君の自由を無視した……僕の身勝手みがってだったよ……」


 深い自省じせいに声を重くしつつ、


「僕に依存いぞんしようと……執着しゅうちゃくしようと……全ては君が自分で選んだ、君の自由なかたであり……それこそが、君の〝欲〟だったわけだからね……」


 あやまちはかえさぬとちかうがごとく、


「だったら……それを否定する権利は、僕には無いよ……!!」


 全てを受け入れ、世界をむような〝王器〟をあまさず開放する……が、


「それに……僕も、君にそばてほしいからね……」


 一転、絶大な〝王器〟をひそめさせ、


「正直……君が暇乞いとまごいをして僕のそばからなくなった時、すごくさびしかったよ……」


 不安に震える凡百ぼんひゃくの少年のごとく、


「その時、あらためて分かったよ……僕にとって君が、どれだけ大切なのか……君がそばてくれることが、どれだけ大事なのか……そのことを、君がなくなって思い知らされたよ……」

「……っ!!」


 少女が全身を震わせ、しばし硬直こうちょくしたあと……


「……拙者は……殿の御側おそばて、よろしいのでござりまするか……?」


 のどの奥からしぼすのは、不安と期待のじったかぼそい声……


「むしろ、僕からお願いするよ……」


 対して少年は、二度と離さぬとばかりに少女を強くめ……


「ずっと……いつまでも……僕のそばしい……!!」


 傲慢ごうまんな〝欲〟を少女にけた……


「……殿……!」


 だが、そんな〝欲〟に少女は胸の奥を、全身を、魂を熱くする。

 そして、はっきりとかくする。


左様さようだったので、ござるか……)


〝彼〟は優しいからこそ、〝里〟から自分をしてくれた。

 思いやってくれたからこそ、〝遠征えんせい〟のこともとがめないでくれた。

 づかってくれたからこそ、自分を水代邸みずしろていからりょうに移してくれた………


(なれど……それらは、全て……)


 優しさが、思いやりが、づかいが、〝配慮はいりょ〟という〝さく〟を作っていた結果だ。

〝彼〟と自分の心がえぬようへだてる〝さく〟が、〝彼〟の心の中に作られていた結果だ………


(なれど……拙者は……)


〝彼〟に、もっと傲慢ごうまんな〝思い〟を押し付けて欲しかった。

 優しさも思いやりもづかいも無い、はだかの〝思い〟で触れて欲しかった。

 配慮はいりょなど捨て、ありのままの〝思い〟をぶつけて欲しかった………


(そのすえに……さらに苦しもうとも、拙者は……)


〝彼〟に、心の中の〝さく〟をはらって欲しかった。

 ありのままの〝思い〟の……しの〝欲〟のままに触れて欲しかった。

 ほこたかき〝主君〟が、〝暴君〟や〝魔王〟となろうとも………


(それこそは……拙者の〝欲〟……拙者の〝思い〟……いな……)


〝主君〟に、〝暴君〟に、〝魔王〟に求めるように、


(拙者の〝想い〟……すなわち……)


 しの心をさらし……


(殿をしたいする……拙者の、〝恋心こいごころ〟にござるか……)


 自分の気持ちを、はっきりとかくした……


(……なれば、殿は……水代みずしろ煌路こうじさまは……拙者の生涯しょうがいただ一人ひとりの〝恩人〟であり、〝幼馴染〟であり、〝主君〟であり……)


 胸のつかえがりたように清々《すがすが》しく、


えの無い……〝おもびと〟にござるか……)


 口元にさわやかな笑みを浮かべる………が、


(なれば……拙者には、成さねばならぬ〝大儀たいぎ〟と……〝天命〟があるのでござる……!)


 不意に、口元を強くむすび、


寛大かんだいなる殿の〝さく〟をはらっていただき、我が〝恋心こいごころ〟をささぐための〝大儀〟が……そして、だいなる殿の〝覇道はどう〟につらならせていただき、我が〝運命さだめ〟を果たすための〝天命〟が……しからば、拙者は……)


〝主君〟のためなら〝守り刀〟となり、


(〝忠義〟なる、我が道程みちのりを突き進み……)


〝暴君〟のためなら〝断頭台だんとうだいやいば〟となり、


不埒者ふらちものを、あまさずめっし……)


〝魔王〟のためなら〝魔剣〟となり、


(殿の〝覇道はどう〟を、先陣せんじんとなってひらくのでござる……!!)


 〝想い〟をめて、深淵しんえんなる覚悟を胸にちかう……そして、己をめてくれている〝想い人〟と我が身をひとつにするように、〝想い人〟を熱くかえし……


「……御側おそばよとのおおせ……身に余る栄誉えいよにござりますれば……」


 熱い胸から声をつむぎ、


不肖ふしょう……八重垣やえがき火焚凪かたな……」


 熱い涙を流しつつ、


一命いちめいささたてまつり……」


 《《歓喜》》の涙を流しつつ、


永遠とこしえに……御側おそばに……!!」


 永遠とこしえの〝恋心こいごころ〟を……〝愛〟をちかった……!!


「ありがとう、火焚凪……!」


 片や〝想い人〟も静かながらも熱い声をらし、灼熱しゃくねつの空間をさらに熱くするように2人は情熱的にう…………が、


(……あ………)


 少女は気づいてしまう。


(あ……あぁ………)


 ひとつになるように〝想い人〟とい、二度と離れぬかのように密着する我が身が……首輪以外、《《一糸纏わぬ姿であることに》》。


(あ……あああああ………)


 特大のバストが薄いポロシャツ一枚《《のみ》》をはさむ形で〝想い人〟の胸に押し付けられ、つぶされた水風船みずふうせんのように大きくひしゃげており、


(あああああ………)


 他にも〝想い人〟と密着する部分の肌が熱をびると、またたくるおしい熱が全身に広がり一糸いっしまとわぬ肢体したいげ……


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 左右の腕で胸と股間こかんかくしつつ、少女ははじけるように少年から離れ背を向けた。


「か…火焚凪!?」


 目をみはる煌路だったが、少女の気持ちを察しみずからも裸体らたいへ背を向けた。そして少女に自分の服を貸せないかと考えるが、あちこちげて穴が開いているので意味を成さないと気づく……その時、


 にゃお~ん


 ピンクの毛並けなみがキレイな子猫が、煌路のチノパンのポケットから顔を出し、


「シロ!?」


 再び目をみはる煌路のポケットから、子猫は《《明らかにポケットの容量を超える》》大きなバスタオルをくわえて引っ張りつつ飛び出す。そして煌路と火焚凪がいる巨大な〝鬼〟の頭の上にバスタオルと共に降り立つと、


 にゃお~ん


 くわえているバスタオルを差し出すように煌路へ顔を上げた。


「……ありがとう、シロ」


 煌路は微笑みながら子猫の頭をでてバスタオルをつかむと、自分へ背を向けてしゃがみ、足の先まで朱に染まる裸体らたいを震わせている少女へ歩いていき……


「ごめんね、火焚凪……」


 背後はいごから、少女の肢体したいをそっとバスタオルで包み、


「また、君を苦しめちゃったよ………」


 優しく抱き締めつつ、心苦こころぐるしい声をらす……が、


「い…いえ……全ては、拙者の不手際ふてぎわなれば……」


 少女は体に震えを残しつつも、強いしんを感じさせる声をつむぎ、


「殿が、御気おきまれることはござりませぬ……何より……」


 うるみつつもぐな覚悟をめた瞳で少年へ振り返ると、


不肖ふしょう八重垣やえがき火焚凪かたな……」


 少年の腕の中で体を反転させ、顔をぢかにして少年に正面から相対あいたいし、


はつ御目おめにかかりし時より、我が全身全霊はあまねく殿へけんずる所存しょぞんなれば……」


 つたない幼虫がさなぎて美しいちょうと成ったがごときいで、


つつしんでかしこまり……我が全身全霊、おさめいただけるよう、衷心ちゅうしんよりねがい申し上げたてまつりまする……!!」


 おのが唇を少年の唇に重ねる………


「ゲ~ッゲッゲッゲ~~~!!」


 寸前、見渡す限りの溶岩の海から《《70メートル》》を超える金色に輝く虫が飛び出し、《《6本》》のあしうち4本のあしに生える長大な剣のようなつめるい……


 ザンッ!!


 目をく少年と少女が立つ巨大な〝鬼〟の頭を、胴からばした。


「ゲゲッ! お宝の力! 見せてやるんだぜえええええええええええええっ!!」

「お宝だって!? まさか……くっ!」


 対して煌路は一瞬動揺(どうよう)するも、バスタオルを体に巻いた火焚凪をお姫様だっこし、子猫がチノパンのポケットに飛び込んで姿を消すや、切断され落下していく〝鬼〟の頭からな空へジャンプした……直後、


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 虫に続いて岩で出来た金色に輝く巨人が溶岩の海から飛び出し、〝鬼〟の頭が溶岩に沈むと同時に頭をくした〝鬼〟にたいたりし……


 バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!


 130メートルを超える金色の巨体が150メートル近い真紅の巨体を千々《ちぢ》のにくへんくだらし、巨大な岩をぶつけ合うような大音声だいおんじょうとどろかせる。


まわしい鬼子おにごめえええええええええええええええええええええええええっ!!」

「や…弥麻杜やまと殿どのにござるか!?」


 空で煌路にかかえられる火焚凪が息をのむと、岩の巨人は無数の火山が噴火ふんかしている空間でいかりを噴火ふんかさせるがごとく、


「今度はお前が思い知れ!!」


 いかりの大音声だいおんじょう灼熱しゃくねつの空間を沸騰ふっとうさせるようにるがせる。


「大いなる遺産の力をなあああああああああああああああああああああああっ!!」






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