表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おそらくは、彼の平穏な世界征服   作者: あおいろ
第二話 武士の接吻
32/39

炎の想い 其の三

〝彼〟は私の、初めての〝主君ひと〟になった………


 出逢ってより数年、〝彼〟は日々成長していた。

 よわい10を超えたばかりで、〝次期当主〟の頭角を現していた。

 そんな〝彼〟を誇りに思いながら、私はその後を歩いていた。


〝彼〟にあだなす者の討滅とうめつは、数を少なくしていた。

 討滅を成した私に〝彼〟が苦笑すると、かすかな痛みを胸に感じたからだ。

 

 ……やがて、〝彼〟の後を歩く者が増えた。

 右目に片眼鏡かためがねをつけた、緑の髪の女だった。

 その女と私は、ことごとくりが合わなかった。


 その女は下女げじょでありながら、〝彼〟への無礼ぶれいが絶えなかった。

〝彼〟に無意味に密着し、夜には寝所に忍び込もうとさえした。

 その女に、私は日課のごとく刀を抜いていた。


 ……討滅が減ったのは、それも理由だったかも知れない………


 しかし、そんな女の素行そこうに、いつしか私は〝ある感情〟をいだくようになった。

 胸の奥をき乱し、めつけるように苦しい感情だった。

 としるごとにその正体に気づきつつも、私は目をそらし続けた………


 それを認めてしまうと、もっと苦しくなると察していたから。

 それを認めてしまうと、私の〝忠義〟はいつわりになってしまうから………


〝彼〟に全てをささげる、と……

〝彼〟のためなら死ねる、と……

〝彼〟に一命いちめいを捧げたてまつる、と………


 そんな私の存在意義である〝忠義〟は、決して偽りにはできないから………


 だから、〝彼〟は私の初めての〝主君ひと〟になった。


〝主君〟であると、思い込もうとした…………



 それが私の、11歳から15歳までの生涯だった………





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ