思い出の、欠片たちの中で
その日、私は想い知らされた。
真っ白な荒野が、真っ赤な鮮血に染められていた。
その荒野に、死体になる《《半》》歩手前の30人近い男女が倒れている。
手足の2、3本ないのは当たり前、内臓をブチまけたり、体が半分なくなっている者もいる。
万水嶺学院高等部の入学式の日、第一学年Zクラスで行った〝親睦会〟の結果だ。
血で血を洗う〝親睦会〟に臨んだのは、クラスを二分した2つのグループ。
1つは、クラスメイトの大多数が集まった、御曹司に反発するグループ。
もう1つは、御曹司を中心に八重垣妹、銀鴒、チロル、それにドレミトリオの3人という、入学前から彼と縁のあった生徒によるグループだ。
ブレイクが大多数の側に与したのは意外だったが、八重垣妹と戦いたいからと知って納得した。
スカートの下にスパッツをはいていたことも、彼女の本気を表していた。
ちなみに私や七里塚も入学前から御曹司と面識はあったのだけど、ある理由により大多数の側にいた。
ともあれ、凄絶を極めた〝親睦会〟の参加者のうち、ことが終わった時に五体満足で立っていたのは……わずかに2人。
1人は、言うまでもなく御曹司。
そして、もう1人が私だった。
この功績(?)により私がクラス委員長になるのだけど、今は置いておく。
その日の夜には水代家の治癒術師のおかげで、クラスメイト全員痕も残さず元通りになっていたことも、今はいいだろう。
そもそも五体満足と言っても、私と彼では状態が全く違っていた。
満身創痍で、まさに『辛うじて』立っていた私。
一方の彼は、かすり傷ひとつない全くの無傷。
空を斬り裂く烈風や稲妻を、
大地を揺るがす猛獣や巨人を、
いたる所を飛び回る死霊の群れを、
彼は光の壁で蹂躙し尽くした。
――後に六音をかばいながら。
格の違いを、思い知らされた。
格別の気持ちを、想い知らされた。
それは、
それらは、
きっと私だけじゃない、みんなの記憶の欠片たち。
忘れられない、みんなの思い出の欠片たち………