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旅館 夏見館
―――甘かろうが何色だろうが
豆腐は豆腐にすぎない。
電車を乗り継いで山中。
果てまでたどり着くため
暫く歩くと、
まさに旅館といった風貌の宿が姿を見せた。
「古いわね」
「古いですね」
扉を開けて中へ入る。
ようこそ御越しくださいました。長旅でお疲れでしょう、早速部屋へご案内します。
声が聞こえるのに姿が見えない。
奥か?
こっちですじゃ、ここにおります。
長身の行姫には足下の小さな気配に気がつけなかった。改めて下を見る。
おや、ちっいのに偉いな、ここの子か?
ええ、ええ。ここに勤めておりますじゃ。
ささ、こちらへ
他の従業員は居ないのか?
丁度夕餉の準備に忙しく、わし以外手の空いている者が居りませんで。
変に老けた口調だな。
永く生きておりますでな、
自然と歳を重ねているうちにこのような言聞きになりまして。
そう。ねぇ、あんた誰かに若いって言われたこと無い?
よく言われますのう。ここへ泊まりに来たものはみな、そう言われますゆえ