プロローグ
むかしむかし、世界の果てに。
それはそれはおそろしい魔王が現れました。
魔王の強大な魔力で王国は死の絶望に覆われました。
それでもまだ人々には希望が残されていました。
聖なる剣を手にした勇者が現れたのです。
勇者はたくさんの魔族を打ち倒し、ついに魔王を追い詰めました。
しかし、魔王はあまりにも強すぎました。
選ばれし勇者たちでも封印するのが精いっぱいだったのです。
魔王を封じた勇者たちは言いました。
「あの結界でも100年しかもちません」
「だから、100年後にもう一度・・・」
「次こそは、必ず・・・」
* * *
予言のとおり、100年の後に再び魔王は蘇り、勇者として選ばれた若者たちがこれを封印する。そんな戦いが、長い時の中で幾度となく繰り返されてきた。
要するに倒せなかったのだ。かつて選ばれた勇者たちの誰も、何度挑んでも。
かくしてそれは100年に一度の恒例行事となった。
魔王にかけられし封印が解ける前に、王国に伝わる聖剣をもって勇者の選出を行い、再封印の儀を執り行う。一般的庶民の間ではちょっとした祭感覚である。失敗した時点で魔王は復活・世界は破滅するとはいっても、なにしろ歴代勇者たちが作成したガイドマップが引き継がれ、武器防具の性能も日々進化し向上しているので、滅多なことでは失敗などありえない。
・・・はずだった。