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いつもと同じ道を歩いているのになぜか懐かしさを感じる。
月は街灯よりも明るく輝いていて、空に絵が映っているように幻想的に思えた。
右手にほんわりと柔らかい感触がした。
彼女は言う。
「じゃあ、私達の距離はどのくらい?私達、隣同士を歩いてるけど、実際は遠い場所にあったりする?」
化粧っ気のない笑顔をこちらに向けて、彼女はいたずらな表情をみせる。
僕はその答えを用意していた。ずっと伝えたかったんだ。
しかし、彼女は僕が口を開こうとすると、前に向き直ってしまった。
そして繋いでいる手をにぎにぎと遊ぶみたいにしてみたり、鍵盤の上を歩くみたいに僕の手の甲を指で弾いた。
「なんか、うきうきしてるね」
僕は感じたままに言った。
「久しぶりなんだもん」
次はつないだ手を離したかと思うと、僕の親指をつまむみたいに触った。爪の形を指で探るみたいにしている。
「愛菜ちゃん、言わなきゃいけないことがあるんだ」
「どうしたの?」
僕は月の光を反射してキラキラ光る瞳から目を逸らした。
それから僕は勇気を振り絞って言った。
目が覚めた。
眩しい朝日が斜めにそそいで部屋を明るくしている。今日は夜まで、雲もない快晴になるらしい。




