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春夏秋冬の月  作者: myu-myu-
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4-4

8月20日


「お疲れ様です」


明るい声をかけられて、顔を上げると私服姿の川端さんがいた。今日はシフト入ってなかったはずなので、単にお買い物で来たらしい。


緩やかなウェーブのついた髪は肩へ落とされていて、相変わらず大人の女性としての魅力を醸し出している。


川端さんに会ったのは久しぶりだった。今日はお子さんは連れていないようだ。


「あ、お久しぶりです。川端さん、最近シフト入ってないですね」


「そう。最近バタバタしててね」


口をへの字にして川端さんは言った。


やはり家事に子育てに忙しいのだろう。


「お忙しいんですね。シフト表も来月分がほとんど空白になっていましたよ。10月からは入られますか?」


川端さんは少し小首を傾げながら、


「私、もうすぐここ辞めるんだ。もしかして聞いてなかった?」と言った。


「え?辞めるんですか?」


驚いて声が少しうわずってしまった。


「そっか、伝わってなかったんだね。今月いっぱいでココ辞めることになったんだ」


川端さんは辞めることがなんでもないことのように明るい声で言った。


辞めるのか……。あまりにも唐突で、それを珍しくもなく、"よくあること"のように告げられて、僕は動揺した。


辞めるっていうと、部活を辞めるとか、学校を辞めるとかいうネガティブなイメージが強くて、辞めることに対する考え方にギャップを感じた。


「私も久保田くんと同じ、学生になるんだよ!」


久しぶりのニコニコ笑顔で川端さんは言った。


「学生?どういう意味ですか?」


「看護学校に行くことになったんだ」


「看護学校?」僕は川端さんの言葉を繰り返して質問する。


「そう、看護師の資格をとろうと思って、もう一回学生になるの」


力強く言い切った川端さんはまっすぐ僕にニコニコ笑顔を向けていた。


「学生だよ学生!久保田くんと同じ!ああ楽しみだなあ」


川端さんはとても楽しそうだ。こういう時、全然年が離れていないように感じる。


その後、少し話をして川端さんは帰っていった。あと何回かはシフト入れるからまた一緒になったらいいね、とか、制服気に入っているから着られなくなるのが残念だ、とか言っていた。


川端さんって、お子さんが2人いたはずだ。子育てと学業は両立できるものなのだろうか。というか夫は仕事しているのでは? そもそもなぜ今から看護師資格なんてとるのだろう?など色んな疑問がわいたが、野暮なことだと思って、飲み込んで聞かなかった。


川端さんは、また、一から始めるんだ。


それはとても大変なことのはずなのに、川端さんはとても楽しそうで、明るく話していた。


やりたいことがあって、その目標に向かってまっすぐ行動する姿が、愛菜ちゃんと重なった。


姉妹だから似るものなのか、それとも。


川端さんが帰る時、


「僕も、最近目標ができたんです」と言った。


中野が考えた計画は、いいことではないだろう。やり方は間違っているだろう。どんな結果になるのかもわからないけど、僕もがんばらないと。素直に思って、なぜか川端さんに言いたくなったのだ。


「そっか、今度聞かせてね」


川端さんはいつもどおりの笑顔でにっこり笑っていた。


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