1-4
彼女を作らなければ! と思い立ったのはいいが、どうやって作ればいいのだろう。今更思い立ったところで友人に相談するのはなんとなく気恥ずかしい。だいたい、受験もじわじわ近づいているこの時期にお前は一体なにを言っているのかと言われるに違いない。
噂の漏洩のことも考えると、単独行動で上手くやりたいところだが、どうやって彼女に近づけばいいのだろう。
もちろん彼女にしたいお相手は桐村愛菜であるが、今はクラスも変わってしまったし近づく方法がない。……いや、一つだけ方法があるのだが、出来たら使いたくない。
しかしどう考えても他の方法が思いつかなかった僕は、結局種田に相談することにしたのである。
種田と桐村愛菜がいわゆる「幼馴染み」であることは既に知っていた。サッカー部の部室で彼らが小学生の頃からの付き合いであることを知った時は、奥歯が揺れるほど驚いた。
僕が好意を抱いている女性が、同じ部活のイケメンエースの幼馴染み……この世はなんてご都合主義なのだろうか! 神様の不正行為だ! 嗚呼!
僕は勝手に「イケメンに先手を打たれた」と意気消沈していた。今思うと、種田と仲良くするところにブレーキをかけていたのは、彼らの関係を知ったことも手伝っていたのかもしれない。
数日間うんうん言って悩んでいたが、よく考えてみると彼女と種田がそんなイチャイチャラブラブしているところなど見たことがない。
僕が意を決して種田に相談してみると、彼はあっさり相談に乗ってくれた。種田と桐村愛菜との関係について話を聞いている限りでは、やはり彼女と種田は恋仲とかそういう浮いたものとは無縁の関係にあるらしい。しかし種田の口ぶりから彼女のことはよく知っているという印象を受けた。これが「幼馴染み」か。少しばかりヤキモチの小火が起こった。
小火を押さえつけながら、これから僕はどうやって彼女にお近づきになればいいだろうか、とアドバイスを乞うと種田は、
「じゃあ、とりあえず告白しようか」と言い出した。
「おいおい、さすがに恋愛経験乏しい僕でもそれはおかしいとわかるぞ」と僕はこれには食い下がった。なんの布石もなしにうまくいくわけがないではないか。
しかし、
「もう布石なんてする猶予はない。これから受験勉強で忙しくなるから、告白するのなら今しかない。時間と共に告白の成功確率は着実に減っている。告白さえすれば絶対久保田は付き合える。ダイジョーブ」
「いやいや……」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ……」
と洗脳のように毎日説得され、
「確かにそうだな、急いで告白しないと」
と僕は言葉巧みに乗せられて桐村愛菜に告白することになったのである。そして種田に彼女を公園に呼び出してもらい、僕は見苦しい告白をし、あらあらあらと桐村愛菜とのお付き合いに至ったのである。
告白が成功したことに対する種田の反応はイマイチだったのが残念だが、そんなことはいい。彼のリアクションが悪いことは今に始まったことではない。
それより、僕は手に入れてしまったのだ。青い春を! ついに型にはまった幸せが、今僕の元に!