表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春夏秋冬の月  作者: myu-myu-
30/49

3-4

6月5日


今日は日曜日。コンビニは平日と祝日は客層が少し変わる。平日はスーツや制服を着た人、工事現場の昼休憩で来る人が多く見られるが、休日は家族での来店も目立つようになる。子どもを連れてくるお父さん方をみて、平日は仕事、休日は家族サービスで忙しいそうだなあ、などと僕は勝手に想像をふくらませている。


一方、大学生はそんなお父さん方とのバランスをとるためのように、平日祝日を問わずに昼までぐっすりだらだら眠っていることが多い。みな何か始めた方がいいのかなあ、などと漠然と思いながらモラトリアムを貪っていることもありがちなのである。自分はバイトをしているだけマシだろう。



「こんにちは!」バイト中に話しかけられて振り返ると、私服姿の川端さんがいた。


今日は髪は下ろしていた。普段は髪をくくっているので意外と長く見えた。少し緩めのチュニックを着ていて、鎖骨が覗いている。首元には金色のネックレスが主張しすぎない程度に添えれらていて、まさに大人の女性の魅力を間近で目にした。


一見すると、なんで僕がこんな人が話しかけてくるのだろうと、改めて自分で勘ぐってしまう。でも、いつものニコニコ笑顔をみて、ああ川端さんと話しているんだなと再確認する。


「おはようございます」と頭を下げようとすると、川端さんの隣に男の子がいることに気づいた。川端さんの太もも辺りで隠れるように僕を見ている。


「あ」と僕は驚きを声に出した。


川端さんはえへへ、と笑う。川端さんのお子さんらしい。


まだ未熟ながらも目鼻立ちは整っており、すでに将来はイケメンが約束されていると言った感じだ。かわいい。さすが川端さんのお子さんである。


「お子さん、何歳なんですか?」


と尋ねると、川端さんは男の子に向かって


「こーちゃん、お兄ちゃんがいくつー? って」


川端さんは優しく、側の子どもに尋ねた。なるほど、子どもにはそういう言い方で尋ねるのか。僕にはなかなか難しそうだ。「いくつ?」か。確かに子ども相手に「何歳?」と聞くよりは、柔らかくて答えやすいだろう。昔はそんな聞かれ方をしていたな、と懐かしく思う。


しかし、尋ねられた男の子は目をそらし、もじもじと川端さんの太ももの影に一歩寄った。恥ずかしいのだろうか。


それを見た僕と川端さんは、顔を合わせて笑った。


「今年で5才になるんです」と川端さんは言った。


「そうなんですか」


聞いたものの、5才の男の子を相手にしてもなんと言っていいのかもわからない。身長の大きさの目安もわからないので、「大きいですね」とかの無難な感想がでてこないのも仕方ない。


強いて感想を言うとすれば、”川端さんの見た目にしては”、大きなお子さんであると感じた。川端さんの年齢は明確に把握してはいないが、30歳未満なら20代前半に産んだことになるのだ。


良いコメントも浮かばないし、これ以上もじもじとしている男の子に質問をするのも悪いかなと思い、僕は話題を変えた。


「今日は普通にお買い物ですか?」


「そうなんです。丁度近くを通りかかったから。久保田くんがいるかなーって」


何やら嬉しい事を言ってくださる。


それから2,3の言葉を交わして、買い物を済ませると川端さんは店を後にした。


5才の男の子は川端さんの手に引かれていたが店を出る直前、こっちをみて、小さな手を振った。僕は反射的に、手を振り返した。


次は僕のほうがなんだか恥ずかしくなって、口元が緩んでしまった。なんとなくその間抜けた顔を晒しているのも恥ずかしくて、あげた手をそのまま口の前に持って行って隠した。


僕自身も子供の時、大人同士の会話で話を振られるのが恥ずかしくて、母の後ろによく隠れていたな。普段はあんなにやんちゃで、家では暴れまわっていたような子供だったのに。偉そうにしていても、一歩外にでてみれば、なんでもない会話もできなくなっちゃう。


大人ぶったことを生意気に考えたりもしていたけれど、やっぱり子供だったんだな、と思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ