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彼女は車の通らない道が好きだった。
車の通らない道は静かだけど、無音じゃない。色んな音が聞こえてくるの。音も景色も、周りが透き通って感じる。と口癖のように言っていた。
だから今日も、僕達は遠回りをして駅に向かっている。
最近は彼女の言う意味がわかってきた。静かで人の動きが見えない道を歩いていると、世界には僕達2人だけになったように感じるのだ。
遠回りすることで、少しでも一緒にいられる時間が長くなることも嬉しかった。
ふと、彼女に言いたいことが浮かんだ。でも、何故かためらってしまった。そのうちに何が言いたかったのか見失ってしまった。
思考する中で、知らない間にポケットから落としてしまったように、ついさっきまで考えていたことが無くなった。
なんだか不思議な感覚だったから、彼女には悟られないように表情に出さないようにした。
彼女の顔を見てみると、彼女はどうしたの? と言った。
僕は探すことを諦めて仕方なく、なんでもないよ。と言った。
彼女は不思議そうな顔で指に力を入れた。
無理に言う必要もないか、と僕が言うと、彼女も、無理に言う必要もないね、と真似するように言った。
「まただ」
僕は天井を見ながら呟いた。
中野と話した日から、頻繁に彼女の夢をみるようになった。
それは下校の道だったり、駅で待ち合わせをした時であったりした。いつも、夢の中の僕たちはまだ恋人同士で、高校生のままで、当時と何も変わらずに並んで歩いている。まるで塞いでいた思い出が溢れ出したようだ。中野に話したことが僕の中でこんなに影響のあることだったのだろうか。
そして、体を起こしながら、そうすることが決まったようにいつも同じことを考える。
彼女は今、なにをしているのだろう。




