2-1
チャイムの音が聞こえた。ほぼ同時にガタガタぎいぎいと椅子を引く音、筆箱のチャックを締める音が教室の中をいっぱいにし、教師の声はかき消された。
僕はすぐに教科書などをロッカーに投げ入れて、急いで適当な荷物を鞄に放り込んだ。振りかぶるように鞄をかけた時、久保田 と呼ばれた。振り返ると種田が立っていた。
今日サッカー部の練習参加しないか? 試合前の合わせに人が欲しいらしくて
ごめん、今日は用事があるんだ と言うと、種田は少し黙ってから そうか、じゃあ誰か他のやつにあたってみるよ と言った。
僕は 悪いな と言って種田を残して勢いよくドアを開けて教室を飛び出した。
早足で廊下を歩きながら窓の外に目をやった。太陽の光が斜めにさしこんで肌を温かくさせている。初夏を感じさせる太陽と青々しい草木を横目に歩いていると、いつものベンチに彼女が座っているのが見えた。こんなに急いで出たのに、もう先に付いているのか と驚いて、それと同時に嬉しくなった。彼女も急いで来てくれたのだろうか。
そうだ、後ろからそっと近づいて少し驚かせてみようか、と悪戯心が湧いた。足音を潜めてそろそろと近づいた。彼女は校庭でじゃれあう男子生徒たちに気をとられてこちらには気がついていない。
僕は彼女のすぐ左後ろに立って、彼女の名前を呼んだ。
きっと彼女は驚いて振り返るだろう。




