第1話
高校2年生の春。
私、山田美咲は神嶌女学園へ転入してきた。
前の高校では、地味だブスだ陰気だと散々いじめられてきた。そんな奴らの気持ちはわからないでもない。
私は、髪も長く、もっさりしていて、ビン底眼鏡で、しゃべらない。
ストレスのたまる学生生活の中で、そんな奴がいたら、いじめたくなるに決まってる。
だがしかし!私はそんな学生生活はうんざりだったんだ!心の中ではいつも悪態をついていた。
そんな時、母親の転勤が決まり、高校も転入することとなった。地元から遠く離れた都内の学園。
これは、チャンスだ、、、。
髪を切って染め、コンタクトにした。
もういじめはコリゴリだ。
この学園では人と関わらないようにしよう。
人を近づけないように、眉間にしわを寄せ、表情を変えない。
そう、人と関わる必要なんてない!私は、一人で生きていく!
、、、と言ったはいいが、どうしよう、、、。
転入初日と気合を入れてきたのに、さっそく出鼻をくじかれた。この学園は広すぎる、、、。
私は迷った。
理事長室に行きたいのに、それらしき部屋は全く見当たらない。
授業も始まっていないはずなのに、周りには人っ子ひとりいない。
、、、ここはどこだろう。窓の外を見れば、中庭らしき広場が見える。
真ん中には大きな木が立っていて、それを囲むようにベンチが備え付けられている。
、、、ベンチをよく見れば、人影がある。
どうやら、ベンチに横になっていたためにすぐに気づけなかったらしい。
人とは関わらないと決めたばかりで、人に道を聞くのもプライドが許さないな。
---なんて言っている場合ではない。
このままでは、約束の時間に遅れ、理事長に目をつけられてしまう可能性がある。
私は、意を決してその人影に近づいた。
ベンチの背からその人影をのぞき込むと、小さな女の子が気持ちよさそうに眠っていた。
髪は短く、黒髪。背は150センチもないくらい。ツリ目で、小さくかわいい唇を少し開いている。
全体的に整った顔立ちをしており、愛嬌がある。
私は、かわいい子だなぁと思いながら、「あの、、、」と声をかけてみる。
しかし、彼女は全く反応しない。
私は正面にまわり、その子の肩をゆすりながら、再度声をかけてみた。
「あの、、、っ!」
ガッ!!
肩に手を置いた途端、彼女の手が、私の手をものすごい速さで掴んだ。
「、、、何?」
彼女は機嫌を悪くしたようで、無表情のまま、私に言った。
そりゃ、気持ちよく寝ているときに見知らぬ人から急に起こされたら、だれでも不機嫌になるよな。
てか、今朝だけど。
といっても、悪いのは明らかに私なので、彼女の機嫌を伺いつつ、道に迷っていることを話す。
「急に起こして、ごめんなさい。私、迷ってて、よかったら、教えてもらえない?」
ジーーー、、、。
彼女は私の顔を相変わらず無表情でじっと見つめる。多分、こいつ誰だ、みたいなことだろう。
教えてもらえないかぁ、と諦めようとしたとき、、、。
「どこ?」
「え?」
私は、彼女の質問の意図がわからず、思わず聞き返す。
「行きたいところ。どこ?」
「、、、理事長室」
「そう。」
そういうと彼女は私の手を引き、歩き出した。