067話
合同演習を終えて、ようやく横須賀へと帰ってきた。
何故トラックではないのかというと、艦の整備と乗員の休息を兼ねているからであった。
修理は行われていたが、彼らの修理跡を技術者などに見せるのも目的の一つであった。
しかし、それは朴艦長や金田に任せ、俺や黒島、源田参謀は演習の報告を行うために国防省海軍庁の長が鎮座する幕僚部部長室に来ていた。
その隣には、宇垣副幕僚部部長が座り、軽く報告書を一読した。
「羽生中将。つまりは何が言いたいのかね」
山本に厳しい視線をむけられ、宇垣からも無言の圧力がのしかかる。
俺は、何も言わずに2人が痺れを切らすのを待つことにした。
どうせ、喧嘩別れになるのは目に見えている。
と、言うよりもそう仕向けているのだ。そうならなければ、こちらが困る。
「源田、君はこの報告書を読んだのか?」
「ええ、読みました。また、共同にて提案を行っております」
山本は机に報告書を叩き付け、怒りの形相で怒鳴った。
共に志を同じくしていた筈なのに、たったの数か月ののちには心変わりしていた。
何故なのか!と。
「何故、ですか」
「ああ、そうだ。何故、その様に心変わりをしたのか、理由を言え」
源田参謀が言葉を発するのを制止して、俺が代わりに発言をする。
「それは余りにも単純で、そして悲しい現実に起因するものです」
「悲しい現実?」
「ええ、その通りです。現場の人間はすべからく解かってしまうのです。彼らにどう逆立ちしても勝てないことを。今回は、その思いを一層確信へと変えるものでした。小官が、その様に思ったのです。源田参謀以下、その認識が薄かった者たちは、尽く自分の思っていた認識を壊されたことでしょうね……」
絶対に現場に出れば、解かる筈なのだが、海軍上層部は頑なにそれをしようとはしない。
「だから諦めろと?」
「諦めろと言うよりも……」
「陸軍の腑抜けと同じことを言うとは、君には失望した。源田、貴様もだ。もう出ていけ」
天皇陛下のお言葉があったではないですか。と、言うよりも先に部屋を追い出されてしまった。
山本に俺を解任する権限も、閑職に回す権限もないことが救いだったが、源田参謀はあからさまに落胆していた。
そして、これほどまで話が通じないことに違和感も感じている様だが、今の俺達には何もできそうにはなかった。
なので、黒島と源田参謀を伴って夜の銀座に歩き出すのであった。




