064話
かいよもつひらさかつよーい
改黄泉平坂級の艦影が水平線に隠れた頃。次の増援が転送されてきた。
相変わらず、水上艦メインな編成であったが、数は多く、今度はこの海域を取り囲むように配置されたのであった。
全方位から、迫る水雷戦隊とその後方から巡洋戦隊が、火力支援を行う。
ただし、距離があるために散布界はまばらであり、こちらの水雷戦隊の統率を乱すほどのものではなかった。
問題は、その後方から迫るロスアンジェルス級戦艦で、なまじ高速であるために、巡洋艦隊とともに砲撃に参加しつつあったのだ。
先程、航空機を出撃させたため、その回収に追われる中での攻撃に、今まで感じた事のない焦りがまれていた。
「黒波に魚雷命中!中破判定!」
「対潜攻撃を……」
「敵巡洋戦隊接近!」
「なっ…にぃ……!?」
主に航空機の指揮を執っていた源田参謀だが、黒島に言われて一部の水雷戦隊の指揮も執っている。
馴れないことをさせられているためか、混乱は続いていた。
それを見て、ダキオン艦長は自艦を守るために、砲撃開始を命令する。
搭載する15.5cm砲では有効打は難しい位置に敵艦はいたが、殺らなければ殺られてしまうという危機感からの行動であった。
「|水中探信儀≪ソナー≫に感あり!魚雷多数接近っ!」
その報告が入った次の瞬間、新田間を旗艦とした水雷戦隊に多数の水柱が乱立した。
まるで戦艦からの主砲の集中砲火受けたように姿がかき消え、立ち上った水柱が消えた後には何も残っていなかった。
「ご、轟沈!?」
誰かがそう叫ぶが、気をとられている暇はなく、さらに接近する魚雷と、敵水雷戦隊への対応をしなければならなかった。
この危機的状況を打破したのは、改黄泉平坂級だった。先ほどとは違う艦……、先ほどは甲型であり、今回は丙型が現れて敵艦隊の包囲網に穴を開けた。
その穴から食らい付き、包囲の内側から包囲網を破壊していく。
丙型は超重雷装艦であり、片舷200門もの魚雷を備えている。
まさに『対超兵器専用艦』ともいうべき艦であった。
「包囲艦隊は、壊滅した模様」
「今の内に、航空機の発艦および、応急修理を!」
戦闘を終えた改黄泉平坂級は、また去っていった。
おそらく次も、また来るであろう。
「なぁ、黒島」
「はい」
「あれが防護巡洋艦戦術なのか?」
その質問に対して、黒島は苦虫を噛み潰したような顔になって頷いた。
ただ、彼女が言うには日本共和国が普段使っている方の防護巡洋艦戦術ではなく、レキシントンのほうの防護巡洋艦戦術ではないかと。
防護巡洋艦戦術に、種類があったことが驚きだった。
「レキシントンの防護巡洋艦戦術は、特定の艦艇を守るためのものです。現在の艦隊防衛戦術に近いものがありますが、超高速艦を多用することが前提の戦術ですので、皆さんが考えるほど単純ではありません」
詳しい説明は省かれたが、レキシントンのものは、艦隊防衛戦術。
日本共和国のものは、本土防衛戦術。
という違いがあるそうだ。
おそらく、日本共和国側はこの演習を使って、防護巡洋艦戦術(歴)を学んでいるのであろう。
「羽生司令、新田間の件ですが……」
「連絡はとれたか?」
「はい。轟沈判定となった艦は、転送艦によって、特定の海域に転送された模様です。現在は、転送艦上座の司令の下命により、軍港に入港中とのことです」
無事ならそれでいい。
一安心すると、電探に反応が現れ、水雷戦隊と思われる影が接近してきていた。




