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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第5章 皇紀2600年記念大観艦式
65/72

062話

 多数の艦船がここレビヤヒヘド諸島に集まった事は、アメリカ側の情報網にも容易くクリティカルヒットした。

しかし、嫌な事に日本帝国艦も何故にか含まれており、平時とは言えハワイの哨戒網をすり抜けて、西海岸の目と鼻の先の様な所になるここへ来たと言う事になる。

 それは最悪としか言いようがなかった。

 しかも新型の大型空母が2隻と、新型戦艦が1隻確認されており、アメリカはファスサ側に許可を申請した上で、軍艦を派遣して軍事演習を観戦する事となったのであった。


 そんなアメリカ側の驚愕と焦りとは無縁に、日本帝国第10艦隊は、無事に合流を済ませていた。

 結果だけ言うと、ゴールはほぼ同時と言っていい状態であり、引き分けだった。

そのために、奢りはレキシントン側に請求する事になったのであった。

「うーん、しかし。日本共和国はまさかの新玉海将を投入してきたか」

「俺は会ってはいないが、新玉海将と言うのはそんなにすごかったのか?」

「ああ、そうだな。油断していたら、即刻食い物にされるような危険人物だ。正直な話、小野田幕僚よりもヤバい」

「羽生がそう言うって事は、とてつもない相手だったってことか…」

「ああ、なるべくなら関わりたくは無いが、そうもいかないのだろうな」

 短くなった煙草に爪楊枝を刺して吸っていたが、それさえもあっという間に吸いきってしまったが故に、喫煙所にある1斗缶に吸い殻を捨てる。

 その隣で煙草を手渡したトノマツ大佐も、苦笑している。

彼も、日本共和国人には苦労させられているために、共感できるところは多いのだろう。

「まぁ、ただ、今回は新玉海将に感謝いたしましょう。折角の実弾演習の機会ですので」

「ああ、確かに…」

 そう、こちらに来てから判明した事だが、なんとレキシントンが、旧式化した艦を標的とした実弾演習を行うと通達があったのだ。

 提案者は新玉海将で、上陸支援演習及び、上陸演習の後に、演習弾を装備した無人艦を使った実戦さながらの戦闘演習も行うのだ。

 この戦闘演習は、無人艦が演習(ペイント)弾である事以外は本番通りであり、砲弾撃ち放題。雷撃し放題となっている。

 しかも、撃沈する事を前提としているが、数の暴力の名の元に、5千隻もの数をそろえていた。

 基本的に

・駆逐艦は、リンデ・オーゲン級

・軽巡洋艦は、ステルヴィー級

・重巡洋艦は、愛宕級

・戦艦は、スオウ級

・航空戦艦は、パーディア級

・軽空母は、改龍驤級

・正規空母は、ラグニス級

・潜水艦は、改テムズ級

と、通達があった。

 スオウ級のみ旧式超兵器であったが、他は通常兵器であった。

 とは言え、外観からは判別できないほどに、多種多様な兵装を装備しているため、要注意が必要であると言う情報が日本共和国側からもたらされ、司令部とその参謀達は大慌てで作戦の練り直しなどを行っている。

大変残念ながら、俺の出る幕は無い様だ。

ひじょーに、ざんねんだなー(棒)。

 と、そこに新玉海将とハフレリナ中将がやってきたため、吸い始めたばかりの煙草を勿体無いと思いつつ火を消した。

「ああ、楽にしていてくれていいよ」

 ビシリと決めた3人の敬礼に、新玉海将は軽い敬礼の後そう言った。

「今回の演習の主目的は、上陸演習にある。現在、日本共和国本土で研修中の日本帝国兵の育成の為ではあるが、レキシントン側も州兵教育の為に協力してくれるそうだ。まぁ、レキシントン側は上陸がメインではなく、海防戦艦による艦隊演習が主目的であろうがね」

 あれほどの数の海防戦艦(ルナ:サエッタ級)を揃えたのは、そのためだったのかと思いつつ、上陸演習なのにこちらの揚陸艦隊がいない理由も話された。

 未だに日本共和国で、研修中の将兵がいたのには、驚きしか無かった。

「上陸演習にはこちらも参加はするよ。ベテランが指導するのも大切だしね」

「ええ、そうお聞きして、マルヌとヌールとレカをお預かりしてまいりましたよ」

「おお!あの話は本当だったのですか。もう少しで、上陸作戦に不向きなT-34系列の戦車を使うところでした」

「まぁ、旧式戦車ばかりで、新式戦車の数は全く足りないと言われているので、信じられないのも当然でしょうね」

「うむ。特に、中米連合などが行う演習では珍しい。ただ、他国が参加するのだ。重心が上で、揚陸艇を度々転覆させるT-34を使わせる訳にはいかないと言う配慮があるのだろうな」

「ほう、そうなのですか?」

「ああ、波の穏やかな時は良い。ただし、太平洋の荒波や強風時は転覆事故を起こしやすいので、要注意が必要なのだよ」

 そんな会話を聞きつつ、T-34の巨体ならば致し方ないのかもしれないと思った。

 確かT-35多砲塔戦車の車体を手直しした車体に、傾斜装甲を用いた砲塔を載せていると資料にはあった筈だ。

 上陸作戦時にその様な大型戦車を使用するのは悪手で、大きくても中戦車程度に納めなければ取り回しが聞かないだろう。

 そんな事を考えていると、目の前に1両の戦車が停車した。

見た事のない型式で、少なくとも日本系列の戦車ではないだろう。

「車上から失礼します。ハフレリナ中将、日本共和国より戦車を受領しました。確認をお願いします。と鎮守府より通達がありました」

「ふむ、了解した」

「では、御乗車下さい。案内致します」

 ハフレリナ中将はこちらに敬礼をすると、戦車乗員の手を借りて車上に上がった。

上がった事を確認すると戦車は動きだし、来た方向へと戻って行ったのであった。

「新玉海将、あの戦車はなんと言う型式でしょうか?」

「………は?え?T-34/88だが…」

「……はい?」

 そう。ここで初めて、型式に齟齬がある事が判明した。

 レキシントン側が保有するT-34は、中戦車のT-34であり、重戦車のT-34ではないのだと。

ちなみに、重戦車のT-34はKV-1と言う認識名が与えられており、こんがらがらない様にはなっている様であった。

 ただしその通達は、レキシントン側のみであり、他国は分からないとトノマツ大佐は言った。

 早速、こんがらがっていた様な気もするのだが……。まぁ、いいか。

 しかし、中戦車であるにもかかわらず、揚陸作戦に不向きと言われる理由がよく分かった。

 車体はかなりコンパクトに纏められていたが、砲塔がかなり大きかった。

そう、頭でっかちだったのだ。

「さて、ハフレリナ中将も行ってしまった事だし、私は帰るよ」

「お送りします」

「いや、迎えが来るだろうから……。ほら、来た」

 先程戦車が走り去った方角から、土煙を巻き上げて何かが疾走してきた。

「新玉海将、お迎えに参りました」

「ほらね」

「?」


 何だか、予想していたのと違う!


 三者三様に同じ事を思ったのだった。

迎えに来ると言うから、車で来るものだと思っていたが、まさかの自転車であった。

「チャリできたって、ネタ古くないかい?」

「何の事でしょうか?」

「なん…だと……」

 本当に、何の事だか分からない様に答えた新玉艦隊参謀長。

「ところで、何故自転車?」

「何故とは?確か、搭載車両が多いために、自家用車は横須賀に降ろして来たではありませんか。現在我が艦で使用できる車両は、戦車か自転車かリヤカーしかありません」

「車は現地でレンタルするって、そう言ったじゃないか……」

「……。そうでしたか、まったくきおくにございません(棒)」

 真面目な顔をして、棒読みした新玉艦隊参謀長。

 盛大なため息をついて、仕方がないと自転車の荷台に跨る新玉海将。

「あ。ところで、どこにしがみ付けば?腰?肩?」

「ぁあ、おっぱいで」

「んなことできるかボケ!」

「ああん☆」

「前後を代われ」

 それに素直に応じた新玉艦隊参謀長だったが、新玉海将の背中に胸を押し付け、手は腰…と言うよりも股間を触っている。

「いい加減にしろ!」

 新玉海将の鉄拳が、新玉艦隊参謀長の頭に直撃して、彼女は地面に突っ伏す事になったのであった。

 何この漫才。酷い。

「仕方ない、乗って帰るのは諦めるか…」

「殆ど山道でしたが…」

「よし、腰に手を回す。それでいいな」

「ア、ハイ」

 新玉艦隊参謀長は、幸せそうな顔をして自転車を漕ぐ。

 それを死んだ魚の様な目で見る新玉海将の構図が、なんとも言えないシュールさを醸し出していたのであった。


 演習が始まったのは、1939年7月26日の朝であった。

多数の揚陸艦から、無数の揚陸艇が吐き出され、波の高い洋上から陸地へ向けて航行して行く。

 それを迎撃するべく、陣地からは迎撃が行われていた。

いくら演習弾とは言え、その数は立ち上る水柱の数から分かる様にとんでもない数であった。

 本来ならば、事前に艦砲射撃によって陣地に対する攻撃が行われるのだが、今回は揚陸作戦中の艦艇による支援演習と言う事もあり、この様な状況から始まったのであった。

「艦爆隊による急降下により、砲が沈黙。ただし、一部のトーチカや戦車が引き続き砲撃を続行中です」

「案外減らせた様だが、それでも不十分か…」

「はい。トーチカや戦車は直撃弾を与えなければ、撃破は難しいでしょう。それに、対空陣地も点在していたため、そちらを潰す事に専念した結果、第1次攻撃だけでは不十分となったようです」

 対空陣地があったのであれば、先に艦砲射撃を行いある程度戦力が削がれた後に、航空機による掃討を行う方が良いのかも知れない。

 航空機のみならば、離れた洋上から波状攻撃を行えるが時間がかかると言う事だろう。

 戦艦の艦砲射撃を使えば、時間は短縮されるのかもしれない。

 そう考えていると、第1陣の揚陸部隊が砂浜に到達した。

それを支援するべく、駆逐艦を伴った巡洋艦が陸地に接近して行く。

「セオリー通りの戦いだ……なっ!?」

 一瞬でも安堵した次の瞬間、酒匂の周囲に多数の水柱が乱立した。

中口径のそれではなく、少なくとも戦艦クラスの大口径砲弾であった。

「酒匂、判定中破!随伴艦にも小破判定!」

「直ちに反転、離脱せよ!」

 どこから放たれた物かと考える暇もなく、大岡の周囲に多数の水柱が乱立した。

数は少なくとも20に上り、着弾する範囲はかなり狭かった。

「酒匂より入電『砲撃は島の反対側より行われた模様。確認されたし』以上」

「島の反対側…。観測機に確認させ、朝比奈に砲撃を行わせろ」

「り、了解」

 かろうじて小破判定だった大岡は、針路を不規則に変更して対応している。

そのためか、相手は照準を矢矧に変更して攻撃を行ってきた。

 ただ、矢矧には当らなかったが、随伴の駆逐艦である長波と巻波が、1発で大破判定を受けて離脱してしまった。

「観測機より、『島の反対側に要塞砲を3基確認。種類は、大口径噴進砲と推定』以上」

 なるほど、噴進砲ならば納得だった。

射程は短いが、威力は大口径砲並みの威力がある。

 それに長大な砲身が必要ないため、多連装化しやすいのだ。

「他にも噴進砲がある可能性がある。航空隊には引き続き、揚陸中の部隊を援護に回せ」

「水雷戦隊は、大口径噴進砲の照準を引きつけるように」

 そんな参謀の声が司令室に響く。

「朝比奈より入電『我、艦砲射撃を実行するも効果が薄い模様。支援を要請する』以上」

「戦艦の艦砲射撃で無力化できないだと?」

 場は騒然となり、さらなる混乱が生じた。

流石にこのままではまずいので、今まで口は出さなかったが鎮静化を図る。

「朝比奈に打電『使用弾種を通達されたし』。瑞龍、驗龍に打電『支援航空機には噴進弾を多めに搭載せよ』。水雷戦隊旗艦に打電『各艦の間隔を広く取る様に命ぜよ』直ちに送れ」

 通信士は、一瞬あぜんとしたがすぐに職務を全うするべく行動を起こした。

 そのおかげか、朝比奈からすぐに返電があり、要塞砲の装甲を打ち破るために徹甲弾を使用している事が伝えられた。

 それを対地攻撃に有用な焼散弾に変更させると、すぐさま効果を発揮した様で要塞砲が次々に沈黙したと報告があった。

「航空部隊より入電『上空より確認できる陣地は全て破壊した』以上」

 噴進弾を多めに搭載した艦爆隊によって、各陣地や戦車は尽く沈黙した様であった。これにより、水雷戦隊も容易に接近する事が出来るようになり、支援も行えるようになった。


 揚陸及び揚陸支援の演習は、あれよりまだ続いていた。

表面上は沈静化している様だったが、地下壕が張り巡らされており、その中で今でも戦闘が続いていたのであった。

 負傷判定を受けた兵士が、揚陸艦へと戻って行くがどの顔も疲れ切った顔をしている。

 おそらく、教官からこってり絞られた様だ。

「こちらからの支援は、程なく終わりそうか?」

「はい。随分と地下深くに司令部を設けているのか、上陸部隊も手間取っているようです」

 そう。司令部の陥落が、終了条件であるため、司令部を落とさなければ終わらないのだ。

 それにしても負傷判定者が多すぎるとして、日本共和国の一部部隊もこの演習に参加する様であった。

「で、どこが参加すると?」

 黒島に確認を取ると、『輸送艦ゆゆうさぎ』から特別編成された陸戦隊が参加するとの事だった。

 なお、指揮官は新玉艦隊参謀長だと言う。

「どうなる事やら…ん?」

「どうした?」

「……どうやら、司令部が陥落した様ですね」

「ようやくか」

「ただ、司令部を落としたのは、『ゆゆうさぎ陸戦隊』の様です」

「は?だって、投入されたのは、1時間まえだろ!?いくらなんでも速過ぎるぞ!」

 確か、1時間前は司令部から3階層上の区画を攻略中だった筈だ。

それをたった1時間で攻略するなんて、あり得ない。

 やはり、日本共和国には常識が通用しないのだと思うしか無かったのであった。


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