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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第5章 皇紀2600年記念大観艦式
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056話

 珍しいモノを見たと小野田幕僚は、その光景を遠くから見ていた。

官僚達が書類を抱えて、彼女を追いかけて行く。

 おそらく判子が欲しいのだろうが、天野将軍も中々忙しいのでこう言う時に貰おうと言う事なのだろう。

「小野田幕僚」

「おや?陸軍の方が珍しい」

「ええ、まあ。お伺いしたい事がありまして」

 そう言って話しかけてきたのは、東條英機陸上幕僚部長であった。

その後ろでは、判子待ちの書類を抱えた秘書官が数名待機している。

「ああ、構いませんよ。ついでに、その書類も検分しましょう。こちらで判を押せるのであれば押しますよ?」

 秘書官達と東條は大いに安堵した表情になった。

あの天野将軍がサボっているとは驚きである。

後で報告が必要だな…とも思った。

 彼らを伴い私は執務室へ戻る。

出て行ったばかりの私が戻ってきた事に文官達が驚いているが、事情を説明して仕事を渡した。

 彼ら彼女らには申し訳無かったが、この様なつまらない事で国家運営が滞る事があってはならないので仕方ないのかもしれない。

後で労わなければな……。

「さて、聞きたい事とはどの様な事です……おや?」

 何で感動しているんだ?

と言うよりも、どう言った状況なのだ?

 拝まれる様な事をした覚えがないのに、彼らは神が降臨したかのように拝んでいる。

ワケワカメ。

「何がどうしたと言うのですか!?」

「はっ!?つい、感動してしまった!」

「感動どころでは無かった気がしますがね…」

 東條達は一瞬無表情になった後、今までに起きた苦労を語り出した。


 まず先に日本共和国が、政治に関する官僚や政治家を送ってこない理由に付いて話すべきであろう。

 本来ならば送られてしかるべきなのだが、この世界に我々が侵攻したのは、神の管理下に無いカラドルドの殲滅が目的であり、状況としては危険と言うレベルを超過している。

そんなところに非戦闘員を送る訳にはいかず、非常時に司令部要員として使える自衛軍が代行を行っているのだ。

 自衛軍に政治の代行が出来るのかと言われれば、勿論疑問符が沸いて当然であろう。

だが幕僚クラスともなれば、政治色が濃い軍人である。

 本埼幕僚総長を見れば分かる様に、軍人でありながら政治家としての手腕も要求される。

そのため、一時的な代行としては十分にこなせる筈である。

 そう、筈なのだが…。何故にか天野幕僚(将軍)は、仕事をこなせていない。

その答えを東條が語る事になったのだ。

「最初に申し上げるのは、驚きです。天野将軍の元には、第2中央即応集団の上級武官は居るのですが、この様に多数の文官はおりませんので」

「はい?それはどう言う事でしょうか?」

「それは我々が聞きたいのですが。ただ言える事は、天野将軍の管理下では文官の数が非常に少ないのです。せいぜい、割り振れるのは第2中央即応集団の仕事程度でしょう」

 んん?それはどう言う事だ?

もしかして、本土に文官を置いてきたと言うのであろうか?

それならば遊んでいる人員がいる筈で、天野将軍に官僚達がストーキングなんて事は起きない筈だ。

 それとも、貸出を行っているのであろうか?

確かに文官の数が足りていないのは確かだが、鎮守府に申請をすれば借りられる筈だ。

 最悪、国防省の方からも出向してくれる筈なのだが…。

これは教えるべきなのだろうか?

 いや、知っているだろう。

彼女だって陸将補時代から、大分政治に巻き込まれている。

その対策が出来ていないなど、ある筈がない…。無いよね?

「陸軍の書類回りの遅さの原因は、これだったとは…。驚きですな」

「お聞きするお角が違う事は分かりますが、お伺いします。天野将軍と言う方は、政治家軍人ではないのでしょうか?」

「少なくとも政治を行う事は理解しているでしょう。そうでなければ、陸自軍の人選がおかしいと言う事になります。そもそも、その様な人間を送る決定を承認した本埼幕僚総長の責任問題にもなってしまいます」

「では、どうしてこの様な事になっているのでしょうか?」

「ふむ……、分かりました。この件は私が調べましょう。ですので、一時保留にさせてください。なお、そちらの書類はこちらで検分させていただきます。少なくとも、天野将軍の方が活動できるまではですが」

 保留にされた事に対しては、怒りの表情を浮かべた東條だが、検分をこちらで行う事を言うと安心した表情になる。

 これは早く問題を解決しなければ、こちらが潰れてしまう可能性が大きい。

 そのため、第10艦隊視察の予定をキャンセルして、天野将軍を探す事から始めるのであった。


 早速天野将軍の執務室に来た訳だが、天野将軍は不在であった。

代わりにタクト・ホロロギ陸将補を捕まえ、現状を聞きだす。

 彼もかなり疲労困憊気味で覇気がない。

彼も武官であり、文官仕事をしている状態がおかしい事は理解していると言った。

 だが彼の上司である天野将軍が、解決方法に関して良案を示せずにいる状態であると言う。

「いや、示すも何も。文官の数が足りないのであれば、申請すれば良いだけの事だ。大丈夫なのかね、天野将軍は…」

「なんと!あ、いや、天野将軍はこう言うと何ですが脳筋でして……」

 ホロロギ陸将補と共に、頭を抱える事となった…。

中々知的そうな見た目をしている割に、脳筋だと!?

完全に外観詐欺ではないか…。

 もしかしてアレか?

上層部は荒治療のつもりで、私に投げたと言う事なのか?

 Oh……神童、今度会ったら絶対ぶん殴る。

「流石ベテランは違いますね…!」

「いや、君達も勉強不足だと思うよ?」

 そう言うと、誰もが目をそらした。

ああ、君達「も」脳筋なのね…。

「取りあえず、申請書の書き方を覚えなさい。そして、書類仕事は文官に任せなさい」

「はっ!了解であります」

 疲れた顔ながら、覇気が戻ってきた。

これでここはどうにかなりそうだな…。

 今度こそ天野将軍を教育せねば…。

私の足取りは重いのであった……。


 官僚に追われてキングコングになっている天野将軍を見付けたのは、日が暮れかけた時であった。

近くにあった無線アンテナ塔に上り、その下では官僚達がいつ下りてくるのかと待ち伏せている。

 手には何故にかレンガが握られており、上ってこようものならそれで迎撃するつもりなのであろう。

「君達、この様なところで何をしているのかね?」

「これは小野田幕僚。丁度良いところに」

「もしかしなくても、天野将軍かね?」

「ええ、そうです…」

「丁度いい。私も彼女に用事があるのだ」

 そう言って、小野田海将補の方を向けば軍刀片手に上る準備を始めている。

「見上げたら、ロースハムになって頂きますよ?」

「アハイ」

 彼女はこの様な事になるとは思わなかったため、ズボンではなくスカートを履いている。

まぁ、色気のない下着なのは分かる。

 と言うよりも、見たら本当に生ハムに様にされてしまうだろう。

官僚達と共に後ろを向いて、待つ事にするのであった。

「ひぃぃいい!こないでぇ!」

「はいはい、大人しくしなさい」

「きゃう!引張らないで…!」

「自分で降りないなら、ここから落としますよ?」

「降りたくない!降りたくないですっ!」

「このっ……」

「ぎゃぁあああ!パンツは!パンツは引張らないで!」

「見せる相手もいないのに、勝負下着なんて…なんて可哀想な娘なのかしら」

「悪かったですね。未経験で…って、どこに手を突っ込んで!」

「せいや!」

「ぎゃぶろぴ!?」

 ドンガラガッシャンと音がしたので、容赦無く叩き落とされたのであろう。

すたりともう1人が降りた音がしたので、振り向くと非常に残念なパンツが目の前にあった。

 頭から地面に突っ込んだ天野将軍。

まるでギャグ漫画の様に頭が地面にめり込んでいるのだが、そのためにスカートがめくれて下着が見えている。

 正直な話、全く似合わない。

確かに勝負下着だが、赤色のレースである。

ついでに二ーソックスまで履いており、絶対領域を広めに確保しているが、色気が全くと言っていいほど無い。

 む?そう言えば殺気がする……。

「声をかけるまで、振り向かないでと言った筈ですが?」

「あ」

「まぁ、所詮天野将軍のですので今回は許しましょう。今度は無いですよ?」

「ア、ハイ」

 官僚達は未だに全員が振り向いていないのでセーフだった。ちくせう。

 仕方ないので、地面から引き抜くと天野将軍は目を回していた。

もうしょうがないので、官僚達には解散を命じて天野将軍の執務室へと向かうのであった。

 しかし、軽い。小野田海将補よりも……いや、何でも無いので首筋にナイフを当てないで頂けますでしょうか…?


 執務室直前で目を覚ました天野将軍だったが、容赦無く執務室へ。

「あばばばばばばば……」

「はぁ、天野将軍」

「っ!ななななな、なんでしょうかかかかかか!?」

「君を教育する。なので、明日から私のところにひと月ほど出向しなさい」

「え?教育ですか??」

「ああ、そうだ」

 キョトンとして私の顔を見る彼女は、心底不思議そうな顔をした。

私の言葉では不足だったため、小野田海将補が補足を入れる。

 ようやく納得した様に頷くが、それと同時に冷汗をだらだらと垂らしている。

ようやく重大な事になっていると気付いたようだ。

「こ、この事は内密に……」

「それでもいいがね…。だが、神童はぶん殴る」

「それでは意味がないではないですか!」

「それ程、私は怒っていると言う事だ。分かったのなら、私が殴りに行かないよう励む事だ」

「うぅ……了解であります…」

 それからは細かい注意点と、この場で教えられる事をずらずらと。

部屋に残っていた武官が必死にメモを取り、天野将軍が質問をする。

 そう言う事をしたために、宿舎に戻ったのは午前0時を過ぎたあたりになってしまった。

「はい、寝る前の1杯ですよ」

「ああ、済まないね」

 小野田海将補から熱燗を受け取り、自分と彼女の御猪口にそれぞれ注いだ。

「どうにかなりそうで良かったですね」

「フツーならどうにかなる。そうでなければ、今日にでも殴りに行く」

「あはは…お厳しいですね」

「そうかい?小野田秋詩(おのだあきか)海将補ともあろうお方が…?」

「うっ……。しょうがないじゃないの!私は情報部の人間なのだもの!いつまでも引きずるなんて、お父さんの意地悪!」

「はいはい、そう言う事にしておくよ」

 ああ、今日も仕事が終わったとようやく実感できる。

我が娘との短いながら、安らげるひと時は終わりを告げ明日に備えなければならなかった。


小野田幕僚がボケと言ったな、アレは予定だったのだ!

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