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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第4章 マインの詩
52/72

050話

 モントゴメリーに任せよう。彼も、苦労すればいい。そう思っていた時期が、ワシにもあった。1940年11月2日に、ビシーフランス領チュニスが英歴連合軍によって占領され、地中海の制海権の半分を取り返す。

 孤立して潜水艦による細々とした輸送により持っていたマルタに、久々に輸送艦が到着し住民は歓喜の声をあげたと報道されていた。

 モントゴメリーも最初は困惑した様だが、相手の指揮官の采配により、瞬時に頭を切り替えて砂漠を疾走したようだ。

 彼の部下の報告では、レキシントン兵は人外の強さを持ち、その戦い方は以前報告書で読んだ、日本共和国兵のものに似ていたと報告をされている。

 トノマツ大佐が、サー・ホルテに漏らしていた情報によると、日歴は同じ世界にある隣国同士であり、同じ同盟に参加しているのだと。確か…「スウレン」だったか…?

「スウレン……。もしや、枢軸連合国国家共同体ではありませんか?」

「どうであろうな、報告を受けただけなのでな」

「しかし、何故この話題なのでしょうか?」

 それを言葉にすることは憚られた……。だが、グロス中佐には適度に情報を隠しているが、次の日には心得ていると、資料と共に解説までしてくれるのである。

「ただ、予想は出来てしまいますがね…。北アフリカでの戦いについてでしょう」

「全く、君に隠し事はできないではないか」

「それは申し訳ありませんでした。では、諜報員には情報の重要度も添付するように伝えておきますね」

 やはり、諜報員を紛れさせていたか…。レキシントン兵の中には、周囲と溶け込む様に目視できなくなる兵がいる。クリステリアと言っただろうか、これが厄介だった。自身だけでなく、触れたモノも任意で隠す事が出来るため、発見する事は相当難しい。今、兵の質を底上げするために海軍陸戦隊と合同で訓練を行っているが、クリステリアとジェシカが異様に強い。

 接近戦を得意としつつも、銃撃戦も通常の歩兵と同様に行う。と言うよりもあれは異形だが、通常の歩兵と同等と言ってもよいだろう。

 ただし、重機関銃の銃撃に耐える装甲を持ち、地面を蹴れば5階建ての建物の屋上まで跳躍でき、遮蔽物の向こう側を見通す事が出来る特殊な「目」を持っている。

 陸軍には「オレンテアリスーツ」なる、オレンテアリス級を疑似体験できる装備があるそうだが、実戦では使えないらしい。ただ、兵の能力をあげることには十分使えるらしく、陸軍に貸出を要請しているとのことだ。

 話はそれたが、諜報を恐れていては何もできない。レキシントンの諜報員は放っておこう。対策もほぼ不可能である以上は…。

「諜報するのであれば、対価に敵の情報を頂きたいものですな」

「その程度で宜しければ、文章にまとめてありますが。必要でしょうか」

「……過去分を含めて請求しましょう」

 今ある分として受け取った資料には、レキシントン側が想定していない事が起きているらしく、ヒトラーの恋人である「ミカド・ブラウン」の事が重点的に書かれている。報道ではおっとりとして、おしとやか。ヒトラーの様な根暗男には勿体無い御仁であるとされ、1度だけ会った時も物腰の柔らかさと気品あふれる雰囲気に、本当に一般諸氏の娘なのかと疑問を持った程だ。無論、調べたがそれらしき情報は手に入らなかった。

「何故、彼女なのかね?」

「それは、我々の歴史では「エヴァ・ブラウン」と言う、彼女の従姉に当る人物が、恋人となっていたからです。彼女は正体不明である、根暗で陰険な筈のヒトラーを常識人として引っ張っているため、これからの戦局に与える影響は甚だしいでしょう」

 本来ならば、精神を病んだヒトラーをエヴァは支えきれず、2人で自殺するのだが、このミカド・ブラウンは母親の様に時に優しく、時に厳しくヒトラーを律している様であった。裏では容赦なく頬をつねり、それでも落ち着かないならば殴るそうだ。

 それでいて勘が良いらしく、レキシントンの諜報員が既に10名見つかってしまっており、その内2名は、殴られて大破する重傷を負っている。

「この事に関しては、日本共和国側が情報収集しているでしょう。しかし、貴国に情報提供すると言って、情報が引き出せる確証を得られません。いくら彼らがお人よしと言え、これから戦争になるであろう国に情報を出してくる事は無いでしょう」

「分からんぞ。なので、資料請求を要請する」

「分かりました。あまり期待しないで下さいね」

 胸ポケットからスマホを取り出すと、電子メールを送るグロス中佐。その様子を便利で羨ましいと見るチャーチルであったが、どうせ扱えないのだろうなとも思っていた。

「……これだから、日本共和国は…」

「どうしたのかな」

「賭けはチャーチル殿の勝ちです。駐英日本共和国大使が資料を持ってくるそうです」

 それを待つ間、これからの地中海はどうなるのかを話し合った。レキシントン側はモロッコまでを占領し、せめて地中海の南半分の制陸海空権を、得るべきだと考えているそうだ。その提案に我が国も賛成であり、できる事ならば1カ国でも枢軸国から蹴り落とせれば良いとも考えていた。ただ、英国に二正面作戦を行う戦力がないため、本来ならば米国をその気にさせられれば良かったのだが、米国世論が別方向に目を向けている現状では難しかった。

 そこにドアをノックする音が聞こえ、駐英日本共和国大使が入ってきた。彼は資料を渡すと立ち去ろうとしたが、引き止めて解説をしてもらう事にした。

「自分の様な者が、貴国の戦略に関わる事に関わるのは、よろしく無いと思われますが」

「それでも説明されなければ、分からない事は多々ある。それに、これは貴国の同盟国である歴親沌保存帝国も望んだ事なのだよ」

 駐英大使はグロス中佐の方をみて、溜息を吐くと渋々と言った様子で了承する。

「何をお聞きになりたいのでしょか」

「ふむ、では我々の中で生まれた疑問について先ずは話そう」

 先程話した事を駐英大使に伝え、大方何を聞きたいのか下準備をさせる。駐英大使は右手で顎を隠し、真剣な目でワシの方を見つめている。

「ミカド・ブラウン。そうですか、彼女に行き当たりましたか」

「その様子では、何か知っている様だね」

「ええ、まぁ…。……これから話す事は、他言無用で。下手をすればバチカンだけでなく、全世界の宗教関係者を敵に回す事になりますので」

「ぐむ…。貴国がその様に言うほどなのかね、彼女は」

「ええ、当たり前です。彼女は、この世界を創成した創成神ですので」

 グロス中佐共々、耳を疑ってしまった。創成神?

「正しくは、「元、神の転生者」ですが」

「君の言っている事に理解が及ばないのだが、それでは「神は死んだ」と同じ事になるのだが…」

「貴方方の宗教神が、どの様な方かは分かりません。が、少なくとも創成神と宗教神は別モノです」

 創成神ミカドが、創り出したこの世界に神と言えばミカドただ1柱だけであると言う。一部を除いて。

「一部?」

「創成神ミカドは力を失ってしまったため、別に世界を管理する神が現れる事を願って、知り合いの別世界の神に世界の維持管理を託しました。ですので、今の管理者。星神はクリスと言う神なのです」

「クリス…クリスト…」

「それは、分かりません。彼は基本的に表には出てきませんので、どこで何をしているのか……」

 基本的には出てこないが、暇を持て余した結果現れる事はあると言う。近年では、今上天皇即位式に列席した事が分かっていると言った。

「何故!?」

「クリスは八百万の神なので、宮内省が招待状を送ったと言われています」

「馬鹿な馬鹿な!君の話は出鱈目だ!」

「ですが、事実です。…話しはそれましたが、ミカドに関してです。彼女は転生することで、人々の中から神となる人物が出ることを期待したのですが、人口が増えた今ではその望みはほぼ叶えられない状態となっているようです。人の魂が薄くなって来始めているのです。ここら辺で一気に減らさなければ、世界が滅んでしまうでしょう。ですので、彼女は戦争を起こす事にしたのです。それが先の大戦であり、今大戦なのです」

「この戦いが、神の望みだと?大量の死者を望んでいると?ふざけるな!」

「別に、ふざけている訳ではありません。ですが、もっと良い方法もあるのです。取りあえず、我が国は彼女にその方法を伝え、了承を取る事に成功しておりますので、早急に大戦を終わらせて欲しいのです。無論、我々も早々に終わらせる予定ではありますが」

 既に執務机の上は大惨事となり、いくつもの調度品が駐英大使に投げつけられ、床に転がっていた。それを尽く避けたため、チャーチルの顔は怒りで真っ赤になり、青筋を浮かべている。

「つまり、ミカドを殺せば我が国の勝利で戦争が終わると?」

「無理でしょう。彼女には、ランスロットと呼ばれる護衛(カラドルド)が付いていますので。ただ、本人も相当お強い。彼女も一応、今は生身の人間ですが、どこを間違えばこうなるのか……」


名称:ミカド・ブラウン(三迦堂皐月)

種族:元神

職業:無職

レベル:120

HP:15840(×6)

MP:11440(×6)

SP:11440(×6)

ATK:11088(×6)

DFS:10868(×6)

INT:12672(×6)

SPD:15664(×6)

HIT:11220(×6)

運:100(×6)

耐性:最強

EXP:0

称号:女の鏡、(神の転生者)、総統の恋人

スキル:装備管制3(強)、手加減(強)、元星神、鑑定無効(強)、自動回復(強)


 レベルは軍の特殊部隊員の2倍以上。強さは軽くレキシントン兵を屠る事が出来る代物であり、暗殺は不可能と言っていい。こんなのが付近にいるのでは、ヒトラー自身の暗殺さえ不可能と言っていいかもしれない。

 兵力レベル区分表を初めて見たチャーチルは、これで何が分かるか!と暴れたが、説明を受けるうちに顔が青くなっていく。この強さなら、IS-1の主砲徹甲弾の直撃を受けても、かすり傷で済むと言われたからだ。

「ぐぬぬ……」

「これは、北アフリカを平定後は、大人しくしている他ありませんね。それに、アジア方面の事もある…」

 駐英大使は、大体の説明が終わったためと言って、退室していった。

「日本共和国が動く兆候があるのだったな」

「正確な日時は分かりませんが、シンガポール攻略作戦が準備段階に入っている様です。作戦名は「発動!ハワイ占領作戦」です」

「なるほど、シンガポールをハワイに例えたか…」

「ほぼ、アメリカ向けの欺瞞工作だと思いますが?」

 ハワイ攻略作戦などと、大層な名が付いていれば、米国はそちらにも戦力を配置する必要性があり、フィリピンに配備される戦力にも限度がある。

 最近、軍備を増産している様だが、攻撃を受けてからでないと、国民感情は動きそうになかった。

「とは言え…」

「何か問題でも?」

「ええ、彼らは致命的なミスを犯しておりまして…。現在の技術では、解読不能な暗号通信を用いているため作戦名どころか、目的さえも漏れていないのです」

「つまり、電子メールの様な手段を用いていると?」

「ええ、そうです」

 電子機器が一切使えない諜報員が、情報を得る事は不可能である。指紋認証などの存在も知られておらず、多くの諜報員が放置状態であるにもかかわらず、使える情報が中々入らない状態であると言う。

「そこで、大変申し訳ないのですが、そこはかとなくアメリカ側にお伝えいただけないでしょうか…?」

「ほう、交渉材料にしても構わないと?」

「ええ、使い方はお任せします」

 チャーチルはようやく、対等に交渉できるであろう相手と話す事が出来ると、先程とは打って変わって悪い顔で笑っている。

 その代わりに、グロス中佐は難しい顔で何かを考えていたが、今はそれどころではないとチャーチルは悪だくみを頭に巡らせたのであった。


最強のモブ子登場。勿論、モブですよ…?

彼女の性格は、

人間時代のオタエツキー・オターズ

星神時代のマジメツキー・ヤルーズ

転生後のキタコレツキー・エローズ

の3つに分かれます。



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