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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第4章 マインの詩
50/72

048話

禿げているのに禿げあがるチャーチルと、独ソ戦が始まります。


なお、モントゴメリーも(精神的に)禿げる!

 大変残念なことながら、この戦果に対して叱咤の嵐を食らったのであった。ベツレヘム元帥から、中々怒らないと聞いていただけに、怒っている今の現状は、中々マズイのではないかと思う。

「君は聞いているのかね」

「聞いております。しかし、本官は職務を全うするべく、反撃を行ったまで。そして、任務をしかと遂行致しました。訓告を受ける理由が不明であります」

「や・り・す・ぎだ!」

 某おかんの様にグリグリを食らった。これが、かなり痛い。通常の人間の力ならまだしも、古代レキシントン人は馬鹿力で有名だった。骨格が歪む!マジで歪む!と言うほどゴリゴリされてしまった。なお、両方のこめかみが赤く腫れてしまったらしく、サージトッシが氷を入れた水袋で冷やしている。

「これだからファスサは…」

 マインは、ファスサ・アメリカーナにあまりいい印象を持たない様だった。確かに、沈む事前提だったら、そう言って欲しかったものだ。まさか、軍港に入りきらないとは夢にも思っていなかったのだ。仕方がないので、改インヴィンシブルと改アーレイ・バークには、ポートサイドに向かわせる事となった。それでも一部は入りきれず。明日、ベンガジへ向かわせる事と決まった。

「君も当分、艦に乗艦する事を禁止する」

「はへぃ!?何で!」

「では、どうしてフランス海軍と、イタリア海軍が潰滅したのかね?」

「あいつらが弱かったから!」

 速攻で拳骨を食らった。反動で床に顔から叩きつけられ、鼻血が…血じゃないけれども。まぁ、言いたい事は分かる。本来ならば、イギリスにもある程度の戦果をあげさせる必要があった。その機会を奪ったと言う事は、政治的にはマズイ事になるのだろうとも。

 鼻血をぬぐい、真正面を見なおしてからは真面目に答える事にした。なんだかんだで、強いので。

「確かに、本官が艦隊制御を行わなければ、突撃艦隊に被害が出た事は認めましょう。そして、燃料弾薬の不足したイタリア及びフランス海軍は、要塞港艦隊戦術に出るしか無くなり、イギリス側にも戦果をあげさせることもできました」

「まともに言えるなら、最初からそうしてくれ…。私とて、ヒマではないのだからな」

「それは、申し訳ございませんでした。ですが、我々エマステイルヴは強さを求めます。それが分からなければ、大人しく付き従う理由にはなりませんので」

「ふん、こんなおいぼれが強いねぇ。なら、トノマツ君やクロちゃんの方が体力的にも強いと思うよ?」

「そうではありません。ですが、説明しきれないのも事実。ですので、我々の独自基準に基づけば、マイン様は我々を統率するに値する人物。そう言う事になります」

 何となくだが、その基準に心当たりがあるのか、マインがひくりと眉を動かした。その目は、不気味なものを見る目に変わり、それが愉快でたまらなかった。つい、口の端がつり上がってしまう。

「サージトッシ」

「はい」

おとせ(シャットダウンしろ)

「…はい」

 それにかかるか!と、彼女の手を掴んで阻止したが、その後ろにいた別のサージトッシの攻撃に気付かず、おねんねする事に…。でも、やわらかい胸に倒れ掛かって、幸せ気分だよ… スヤァ。 


 地中海の枢軸軍が潰滅的大ダメージを負った事は、本来ならば喜ばしい事なのだろうが、政治的にも軍事的にも全く嬉しくない。特に、政治的に。

 大英帝国連邦の盟主よりも、どこぞの馬の骨のファスサの方が対処力があると言う最悪な状況になりつつあった。そのため、唯一の活躍の機会である陸戦だけは勝たねばならなかった。しかも、自国製装備で。

 記念観艦式に来た日本共和国兵に、「本場の英国面はやっぱり違うなぁ!」と馬鹿にされており、早急な改善が必要だったが、その暇さえなかった。

 ただ、北アフリカの殆どが砂漠や荒地であり、重戦車の運用に向いていないと言う立地条件があった。これを利用して、勝利を重ねるしかなかったのだが、早速こけた。

 対戦車戦闘を行う戦車と、対歩兵戦闘を行う戦車を分けた結果。榴弾で攻撃したい車両が投入され、甚大な被害を受けてしまったのであった。マルダー対戦車自走砲。強力な75mm砲を搭載しているが、オープントップ(戦闘室天井無し)である。そのため、榴弾攻撃が有効だが、マチルダⅡ歩兵戦車は肝心の榴弾が撃てなかったのだった……。

 仕方なく、T-34/25自走榴弾砲(T-34に25ポンド(88mm)榴弾砲を無理矢理搭載した自走砲)を急遽揃え、砂漠での戦闘を優位に進める事になった。

 それに対し、ヘッツァー駆逐戦車なども配備されると、一気に枢軸側に優位が傾いてしまった。その優位を失わない様にと、新型のFw190が投入されると、高速とは言え艦爆である彗星は、バタバタと撃ち落とされ、北アフリカでの制空権を一挙に失ってしまったのであった。

 それでも、枢軸軍がエジプトに侵入してこないのは、軍港にはファスサ艦隊が常駐しており、その艦隊が運んできた戦力が未だ健在だったからだった。

 だが、アレクサンドリア軍港にイタリア軍の人間魚雷が侵入し、改インヴィンシブル型4隻が大破したのを皮切りに、対潜水艦戦闘能力の低下が顕著となり、制海権すらも怪しいものとなって行った。

 と言う事で、サラメアが艦隊を出して、周辺海域の対潜哨戒を実施する事となり、被害は一気に減った。ついでに、英国の威厳も減った。


「はい?」

 その報告を受けた時、つい疑問符が口から出てしまった。タイミングとしては微妙であり、効果は限定的であろうと。

 だが、向かい側に立つ男は、いくつかの資料を見比べている。一緒に報告を聞いていた割に落ちる居ている事から、事前に知っていた可能性が高い。本当に、食えないと思う。

「ソ連がドイツへ侵攻ですね」

「何故、今なのだ?もっと前。それこそ、地中海海戦直後の方が良かった気がするが……」

「当時は、新型であるIS-1が完成していなかったという事でしょう」

 そう言って、差し出して来た資料には、丸い砲塔を持った重戦車の写真が添付されており、122mm砲の文字があった。

 この戦車は、日本共和国の重戦車ハニと戦う事を念頭に設計されているらしく、最初から大口径砲を装備している。そして、特徴的な傾斜装甲を持っており、対戦車戦闘の巨人と言ったたたずまいを見せていた。

「この戦車は本来ならば、第二次大戦後に登場する筈の車両ですが、何を間違えたのかこの時期に登場しています。これに対抗する戦車は、今現在のところ3種類しか存在しません。我が国のリヒュン。日本共和国のハニ、日本帝国のチニです」

「つまり、枢軸側に対抗できる戦車は存在しないと?」

「そもそも、対抗できる火砲がまだ存在しません」

 一撃で装甲を破壊できないため、多数方向から多数撃ち込んで黙らせる方法しかないと、グロス中佐は言った。それこそ、海軍の巡洋艦艦砲を自走砲に改造するなどで対処する必要があるだろうとも。

「想定外の強敵に、北アフリカに軍を張り付かせる訳にもいかない…か」

 それも微妙な線であった。この方面の主力は、イタリア軍であり、その後方にフランス軍が待機する形であった。11人以下なら欧州最強と、言われる彼らに高機動対戦車自走砲を配備したドイツ軍が恨めしい。

「ならば、ファスサの陸軍戦力を……!」

「陸軍は、興味がないと言ってきません」

「では、リヒュンの貸し出しを……!」

「ダメです」

 現状、このままいけばサラメアは、攻撃を受ける可能性が高かった。つまり、占領などの行為に及ばれる可能性が高い。そうであるにもかかわらず、グロス中佐の落ち着きようが気になった。だが、聞いて後悔するため、後で調べさせるしか無いだろう。

 かく言う我が国も、新型戦車の開発をしなければならない時期に差し掛かっているのだろうが、ドイツの新型機への対応で手一杯状態が続いていた。航続距離がブリテン島南岸付近であるため、都市部に被害は限定的だが、港湾部の被害は甚大だった。特に、哨戒艇や魚雷艇、潜水艦に被害は大きく、ドーヴァー海峡の警戒網に支障をきたし始めている。

 こう言った行動を取るのは、上陸作戦の前触れや、向こう岸で何かを行っていると言う事であり、とにかく知られたくない事をしているのは確かだった。

 だが、対応の後手後手さに、自分でも情けなくなって来ている。本来ならば、潤沢な情報網を使って、情報を集めるところだが、尽くレキシントンや日本共和国に邪魔をされている状態であり、一部の情報網に穴が開いていた。

 特に、ソ連関係はボロボロだ。モスクワ付近は、統制がきついため、ウラル以東にてやり取りをしていた長期潜伏者(ロングスイーパー)が、例の艦砲射撃で木端微塵になったと、当時の情報局長が愚痴をこぼしていた。

 そして、自分のところも例外では無く、折角アメリカから譲歩を引き出せそうになると、ファスサとの海戦が発生し、結果支援を送りつけてくると言うこの状況である。なぜ、こうなった?


 独ソ戦が始まったのが1940年の10月11日と、随分遅い時期だった。何が遅いのかと言えば、この時期になるとソ連は、冬に入ってしまう。冬に入ると物流がほぼ死ぬため、戦争どころでは無くなる筈なのだが、そうならないために、南方やギリギリ氷に閉ざされない地域に物資集積所を設営したり、鉄道網の拡充を行って最低限を後方から送れるようにしていた。

 そのために、準備をしていた筈のドイツ軍は、ソ連の新型戦車によって蹂躙され、弾薬の心もとない筈の新型戦車は、燃料弾薬の不足を気にせずに進撃出来ていた。

 この状況に、E-35を大量に戦線投入して対応したドイツ軍だったが、122mm砲の前に装甲板は障子紙の様に撃ち抜けれてしまっていた。

 また、砲兵の支援砲撃もバカにならない量を投入され、ワルシャワ占領も時間の問題となってしまっていた。それを救ったのが、まさかの鉄道であった。

 ソ連は鉄道による輸送を重点的に行っていたが、ソ連とドイツの鉄道規格が違っていたため、線路の敷設をやり直すか、積み荷を載せ換えるかのどちらかをしなければならなかったのだ。

 最初のうちは、積み荷を載せ換えていたが、空襲による駅の破壊により、壊れた線路を自国規格に直す工事を始めてしまったのだ。これにより、予定は予定でしか無くなり、精確な運行が出来なくなってしまっていた。

 だからと言って油断はできず、早々にトラックによる輸送に切り替え始めていた。それを航空機で襲撃し、届く量を制限することで、ドイツ軍もどうにか戦線を維持している。

 問題のIS-1は、相当数が戦場に送られたが、半分以上が戦場に到着する前に故障しており、1940年12月20日までに完成した1800両の内、戦線に投入されたのが843両。その内、458両が1度目の戦闘で故障。残りの385両のうち、まともに使用できたのが初期生産ロットの80両だけだった。

 そのため、故障して放置されたIS-1を調査されて、早々に弱点が露呈する事となった。

 まず、装填速度が遅い。これは、大口径砲を搭載する車両に付きまとう問題で、1発撃つとIS-1の場合手動装填を行うしかなかった。

 次に、視野が極端に狭い。通常の戦車も視野は狭いが、IS-1は更に狭い。車内も重戦車であるにもかかわらず、中戦車よりも狭い。そのため、身動きがとり辛く、車長が砲手を兼任していた事もあって、周囲に対する警戒はおのずと緩くなっていた。

 次に、足回りが重量に対して弱い。52t近くある重量を、45tクラスの車体を支える機構で運用していたのだ。当然の様に壊れる。壊れていない部品同士を10個1にして修理し試験をするが、多少のデコボコ道を通ると、サスペンションがすぐに逝く。そらもう、ボッキボキですよ…。

 次に、無線が装備されていない。ただ、ソ連に限らず無線が潤沢に装備されている軍の方が、まだ珍しいため欠点とは言い切れないか?だが、これから先の戦闘を考えるのであれば、無線搭載の有無は重要となって来るだろう。

 そして最後に、エンジンが非力だった。亡命者から入手したT-34のエンジンに手を加え、気筒数を増やしたモノを使用していた。あからさまに、無理矢理装備した事がうかがえる。足回りの弱さと合わせれば、欠点と言っていいものだった。

 だが、脅威なのは変わらなかった。多くの故障車を出しても、1両で多数の戦車を屠る。戦場に投入さえされれば、足回りが故障しようが、トーチカとしては使用できるので、危険極まりない存在だった。ただし、当然の様に航空機には弱いので、新型の対戦車襲撃機であるFw190B-jpの配置が行われると、被害は一挙に少なくなっていった。

 Fw190B-jpは、機首から突き出した30mm機関砲と主翼に15mm機関銃を装備し、ロケット弾20発、50kg爆弾12発、250kg爆弾2発を同時に搭載できる。特に、ノーズコーンより遥かに長く突き出た30mm機関砲により、アーマイゼンベーア(アリクイ)の愛称で呼ばれている。

 とはいえ、ソ連の戦線投入は止まらず、東ベラルーシやルーマニア方面では多数の戦死者と残骸が放置される事となっていた。

 今は冬だが、夏になった場合、放置された死体が腐敗し、疫病の原因になる事は明らかだった。しかし、戦場となっている場所でおいそれと埋葬作業が出来る訳ではないため、それ相応に問題となりつつあった。


 そして、ソ連の大攻勢の理由が判明した。それは、アメリカが支援していたのであった。本来イギリス支援に使用される筈だった一部が、ソ連に横流しされていた…いや、政府が公認で行っていたのだから、支援と言っていいだろう。

 アメリカとしては、ソ連を利用しているのだろうが、本当にそうだろうかと疑問に思わないのだろうか?ただ、そう思うべき地位にいる人間が、真赤である場合は自浄作用が働かないので、気付けと言う方が無理である。

 だが、戦車開発に出遅れていたアメリカは、ソ連からそこはかとなくドイツ戦車の情報を得て、新型戦車の開発を始めていた。中戦車として76mm砲を搭載したM3中戦車、重戦車として90mm砲を搭載したM4重戦車の開発を行っていた。特に、M3は量産性を重視していたため、多少の対弾性の低さには目をつぶっている。

 このM3中戦車が大量にソ連に届き、1941年2月のリトアニア攻勢で使用された。その数はなんと2400両にも及び、E-10の火力では歯が立たなかったが、E-20の75mm砲は十分対抗可能であり、同じ物を搭載し装甲の厚いE-35とは戦える戦力では無かった。

 だが、壊れない。故障で作戦に参加できなかったM3中戦車は5両程度であり、それも輸送時の不手際による人為的なものばかりであった。

 そのため、ソ連はE-20などが殆どいないルーマニア方面へ多数投入して戦線を押そうとしていた。ただし、E-20の代わりにマルダーやヘッツァーは投入されており、膠着状態は未だに続く事となっていた。

「日本に攻勢の動きあり…か」

「まぁ、当然でしょうね…」

 英国は、地中海での制空海権をほぼ失っていた。かろうじてサラメアとその周辺を押さえていたが、時間の問題とも言える状況だった。ドイツアフリカ軍団(D  A  C)の軍団長エルヴィン・ロンメル将軍の采配により、英国アフリカ方面司令のモントゴメリー将軍は苦しい状況に置かれていた。

 それを打開するべく、ファスサがモロッコに上陸作戦を行い、その撃退の為にDACも投入されるに至って、危機を一時的に脱していた。

「揚陸した海軍のオレンテアリス級と戦車240両は予定通り、カサブランカを占領して、遅滞戦闘を開始しています。ですが、海軍のオレンテアリス級は本来、艦艇乗員として使用する目的で製造されているため、通常の兵士よりも、多少身体能力に優れるだけにとどまります。残念ですが、弾避けとして使用するにも、柔らかすぎるのです」

 オレンテアリス級だからこそ使い捨てが出来ると、笑って見せるグロス中佐。植民地兵よりも扱いが酷いが、反乱がよく起こらないものだと思う。と、言うよりもこちらが使いたいくらいだ。

「こちらも立て直そうとは思う。でだ、貴国の機甲戦力を使わせてもらうが、宜しいのかね?」

「宜しいも何も、最初から使えばこの様な事にはならなかった。そうではないのですか?」

「…………」

「まぁ、宜しいでしょう。ただ、マイン様が増援の指揮官として数名を送ると言っていましたので、要注意が必要でしょうが…」

「指揮官?」

「ええ、サラメア増援の折に送ったシュペーに乗艦していまして…、地中海海戦の大戦果を起こした張本人です。罰として戦闘補佐を申し使っているとの事でした」

「大丈夫なのかね、その人物は…」

「…………」

 中々言う事を聞かない人物らしく、珍しく命令を聞いているため、信じるしかない…と、返答があった。ま、モントゴメリーの事だ。どうにかなるだろう。と、責任を放り投げて、別件を片付ける事にしたのであった。


おバカそうに見えて、エマステイルヴ級は加賀函館級とほぼ同じステータスを持っているのです。


なお、この個体は戦闘狂な変態。

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