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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第4章 マインの詩
49/72

047話

ファスサがサラメアに増援を送ります。


ついでに、ILL最強戦闘機人エマステイルヴ級と、

  その保護者のサージトッシ級も初登場です。


本作には

サージトッシ

サードトッシ

の2つが書かれる事がありますが、

正しいのは「サージトッシ」ですので、

よろしくお願いいたします。

 戦艦を含んだ艦隊がアフリカ大陸大西洋沿岸を這い寄って、ビシーフランス領モロッコのカサブランカに圧し押せたのは、1940年8月18日の事であった。

 英国最新鋭の戦艦であるキングジョージ5世級を5隻含んでおり、沿岸の軍事施設を尽く破壊。イラストリアス級空母4隻から飛び立った艦載機による奇襲により、沿岸部にある飛行場は甚大な被害を受ける。だが、事前に接近を察知したため、航空機や人的被害は最小限となっていた。

 だが、戦艦5隻と空母を含んだ艦隊に対抗できる十分な戦力が、この方面には無かった。有るにはあるが、駆逐艦が不足したフランス艦隊と、主力が潰滅状態な上に、燃料不足なイタリア軍と、大量の潜水艦による通商破壊を行っているドイツ軍が、投入できる戦力だった。

 枢軸に最初の方に加わった筈のスペインは、満足な海軍戦力が無いため、基地の提供だけであった。その基地から、沿岸哨戒に回され始めていた旧型潜水艦が多数出撃して行った。

 本来ならば、乗員の育成などを目的とした改装を受ける予定だったが、この様な事態になってしまったため、出撃できる艦を片っ端から出撃させるしか無かったのだ。

「前方…高速推進音……」

 小回りの効く小型潜水艦であるが故に、弾薬数は少ない。それでも、海上に見える艦影の数は、目をつぶっていても当ると言えるほどの数であり、上陸は目前と言っていいだろう。

 それでも、攻撃を行わないのは、多数の駆逐艦が対潜攻撃を実施しているからだった。艦種識別表に掲載の無い駆逐艦が、長射程爆雷を海面下に多数送り込んでいる。

 それを統率する砲塔が4つ、巨大な煙突を持った巡洋艦も、せわしなく爆雷を投下してくる。水中の音を拾って雷撃しようにも、爆雷の音ばかりが聞こえる有様では、無駄弾を使う様な事になってしまう。

 と、至近で爆雷が爆発した。そのため、海底ギリギリを這うように潜航する。ギリギリと船体が水圧によって潰される音がする。だが、まだだ大丈夫であろう。

「前方障害物!」

 水中観測員が、ヘッドホンから拾った音を聞き分け、報告した途端。艦首が何かに衝突した。艦首には、攻撃用に魚雷が装填されていた…。だが、誘爆はしなかった。ただし、魚雷発射管が全損し、浸水が止まらない。本来ならば浮上するべきであろうが。ウエは敵がわんさかいるのだ。

「爆雷接近!」

 今の音を拾われ、ありったけの爆雷を撃ち込んできたのだろう。シャンパンを振る様に、激しく、あらゆる方向に揺さぶられ、上下さえも分からなくなった。電源が落ち、配管から海水が漏れる。しかし、それを閉める(いとま)さえ与えられずに、もう撃沈を待つだけという状況になってしまった……。

 だが、次の爆雷投下も持ちこたえ、攻撃を受ける事はこれ以上なかった…。それから、どれほど時間がたっただろうか、静かに浮上を果たした1隻の潜水艦は、穏やかで静かな海面に姿を現した。

 数多くの乗員が死傷し、怪我をしていない乗員は誰もいなかった。だが、この艦は奇跡的に地獄(ミナゾコ)から生還したのであった。防衛の失敗と、生還した艦が、たったの1隻だけだったと言う事実を付き付けて……。


 カサブランカを攻撃した「ファスサ」の艦隊は、そのままジブラルタル海峡の先端にある、英領ジブラルタルに入港。残りの駆逐艦を中心とした、サラメア増援艦隊は、出しうる最大艦隊速力である31ノットで、地中海を一路東に疾走していた。内訳は、


型式:改アーレイ・バーク型

外観:フレッチャー級駆逐艦

耐久:1800

防御:対31cm砲弾防御

武装:

51cm両用砲×5門

61cm5連装魚雷発射管×2基

35mm近接防御機関砲×6基

噴進爆雷砲×2基


型式:改粟月型

外観:丁型駆逐艦

耐久:1200

防御:対31cm砲弾防御

武装:

20.3cm速射砲×12門

超怪力線照射装置×1基

35mm近接防御機関砲×12基

噴進爆雷砲×2基


型式:改冬月型

外観:冬月型駆逐艦

耐久:3200

防御:対31cm砲弾防御

武装:

14cm高角砲×18門

305mmガトリング砲×18門

35mm近接防御機関砲×6基

噴進爆雷砲×2基


型式:改湧別型

外観:夕張型巡洋艦

耐久:8800

防御:対56cm砲弾防御

武装:

14cm高角砲×40門

超怪力線照射装置×2基

35mm近接防御機関砲×2基

噴進爆雷砲×2基


型式:改リュッツオウ型

外観:アドミラル・グラフ・シュペー巡洋艦

耐久:5400

防御:対28cm砲弾防御

武装:

38.1cm砲×6門

152mm速射砲×14門

35mm近接防御機関砲×6基

噴進爆雷砲×2基


型式:改インヴィンシブル型

外観:インヴィンシブル級軽空母

耐久:5100

防御:対31cm砲弾防御

武装:

46cm砲×9門

15.5cm砲×24門

35mm近接防御機関砲×4基

ミサイル発射機×6基

搭載:

水上機6機

車両200両

兵員4500名



の、6種類各30隻づつであった。

 改インヴィンシブル型は、軽空母インヴィンシブル級の外観を持つが、強襲揚陸巡洋戦艦とも言うべき艦である。搭載できる航空機は、水上機または回転翼機となっている。

 そして、巡洋艦部隊の出せる速力が31ktであるため、それに引きずられる。

 枢軸側も、モロッコ上陸と言うウソ情報を掴まされ、大慌てであろう。確かに、艦砲射撃と空襲によって、上陸する下準備を終わらせ、海軍陸戦隊を上陸させてはいた。しかし、それも少数であり、陽動終了後は各自散らばってジブラルタルを目指す手はずになっていた。

 ただ、いつまでも騙せおおせる訳ではない事は分かっていた。だから、早くシチリアを越えて東地中海に入る必要があったのだ。


 異変にいち早気がついたのはイタリア軍であった。哨戒中の飛行艇が、高速で東進する大艦隊を捉えたのだった。それをすぐに打電した事により、傍聴していたドイツやフランスにも情報が伝る。

 敵艦隊の発見位置は、アルジェとバレンシア諸島のちょうど中間地点であった。そのため、返り討ちにするため、名誉挽回の為にイタリア軍は、投入可能な海上戦力と航空戦力を用意。シチリア島南方で待ち構えたのであった。

 それに対してドイツ軍はクレタ島に航空戦力を増強して、イタリア軍の撃ち漏らしを対処するべく行動を起こし、フランス軍は戦艦6隻と巡洋艦3隻のみの追撃艦隊を派遣する事を決定。チュニスから急遽艦隊を出撃させる事となった。

 接敵を続けていた飛行艇が、変化を捉えたのは4時間程時間が経過した後だった。それまで陣形を取っていなかった艦隊は、中央に駆逐艦、周囲に巡洋艦、殿に空母を配置したあり得ない突撃陣を敷いたのだった。

「おいおい、なんだアレは」

「駆逐艦が中央?冗談だろ」

 機長は、すぐさま打電する様に命じたが、1隻の巡洋艦から伸びた光の線によって、打電は途中で途切れる事となったのであった。

 飛行艇からの打電が途絶えたため、ありとあらゆる手段が使われて、艦隊を探した。その結果、敵艦隊は既にサルデーニャ島の南方の海域を過ぎつつあり、予想航路を進んだ場合、8時間後にはイタリア軍との戦端が開かれるであろうと予想された。

 だが、その前にフランス軍が横合いから殴りこむ形で、接近する事になるだろうと予想された。

 しかし、今から艦隊を動かせば、混戦になる事が予想され、連帯の取れていない現状では、まともな戦闘は不可能であると予測できた。

 それにこの数である。フランス軍だけでは、全て撃沈する事は出来ない。そのため、焦る必要も無いのだ。と、将兵は瞳にゆらりと闘志を見せながら、その時を今か今かと待ちわびていた。

 そして、その時がついに訪れたのであった…!


 チュニスから出航したフランス艦隊は、最大速力で西方から進んでくる艦隊を捉えるために北上した。偵察機からの報告では、空母らしき艦影はあるが、搭載機を出撃させてくる気配は無いと報告してきた。

 それもその筈で、現在の風向きは西寄りの風が吹いており、敵艦隊にとっては追い風に当る。航空機を発艦させるには、向いていない風向きと言っていい。

 夜半に差し掛かっている事から、夜戦になる事は間違い無かったが、最新鋭艦であるリシュリューとバンジャールにはレーダー測距儀が搭載されており、艦隊の目としても期待されていた。

「パスタ野郎に、手柄を持っていかれる訳にはいかん。なんとしても、空母を沈めるのだ!!」

 リシュリューの艦長の激励により、艦だけでなく艦隊全体が奮い立った。現在のフランスの現状は厳しいものがあるが、少しでもできると言うところを見せ、アピールはしなければならない。ドイツ占領下の国民を勇気づけるためにも……。

「西北西の方向に反射を確認。敵艦隊接近中!」

 レーダーが敵艦隊を捉えた様だった。未だに水平線の先にいるが、あと少しもすればその姿を確認できるであろう…、……!?

 それは、そんな期待を持った直後だった、艦隊の周囲に水柱が乱立したのだ。狙いはかなり甘いが、水柱の大きさから40cm(40サンチ)を遥かに超える大口径砲弾である事は分かった。

 新月と言う事もあり、艦影すら確認する事は出来ていなかった。しかし、レーダーは敵を捉えており、彼我の距離が40000m以下になると、次が襲いかかってきた。今度は艦隊から4時方向の海面に集弾して落下した。

 先程の砲撃は、射程ギリギリでの砲撃だった事がうかがえた。しかし、今度は密集率が上がった事から、射程内に入っていると言う事だ。これで、狙いが正確になれば、命中が出ると言う事になる。

 だが、反撃しようにも残念な事に、未だに主砲の射程外なのであった。射程内に入るのに、後5分…。

 次が着た時、巡洋艦アルジェリーの周囲に着弾し、水柱が収まるとそこにいる筈の艦は、跡形もなく消え去っていた。

「まだ、反撃はできんのか!」

「あと、1分!」

 敵の砲撃間隔が開いている事が、こちらに優位に働いていた。本来ならば、5分の間に7~10回は砲弾が飛んできてもおかしくは無い。だが、敵艦隊からは4分起きにしか、砲弾が飛んでこなかった。確かに威力が高く、弾数も多いため脅威だが、着弾修正をするには圧倒的に速さが足りないのだ。

「射程内まで、5、4、3、……」

「撃ち方はじめ!」

 見切りではあったが、反撃の狼煙を上げるためにも、斉射を命じる。ガツンと頬を殴られる様な衝撃と、耳をつんざく轟音と閃光が目の前を圧倒した。ガラス越しであるにもかかわらず、眼球が押される。

「敵発砲炎を確認、敵艦隊後方の空母部隊側と思われます!」

「なんだと!?」

 それは想定外だった。艦隊内に、シュペーと思われる艦影が確認されており、それは艦隊前方に布陣していた筈だった。主砲を換装され、43cm(43サンチ)砲を搭載しているのではないかと思っていたが、空母だと思っていた艤装戦艦からの砲撃だったとは…。なら、なおの事さら空母は撃沈する必要があると言う事だ。

 と、ストラスブールの後方に着弾があり、その後方を進むデュケーヌと、トゥルーヴィルの姿が見えなくなった。デュケーヌは艦後部から出火しているものの、速度には影響は無かったが、トゥルーヴィルは落伍していた。夜であるため、詳細は不明だったため再度前を見る他無かった。

「航海士、敵速力はいくつだ」

「およそ30kt」

 そこで、「装填完了」の報告が上がった。

「接近するまでは、各砲ごとに射撃。距離15000mにて同航戦を行う!」

 その命令に艦橋要員全員が驚いたが、相手の速力からして一撃離脱を選択した場合、撃破できる数に限りがある。損害を与えるだけでは無く、撃沈する必要性がある以上、同航戦を行うしかないのだ。

 それに、接近すれば自慢の主砲による装甲貫通力が期待できる。接近戦最強を今ここに証明する絶好のチャンスであった。

「ぎょ、魚雷s…!?」

 報告は最後までされる事は無く、左舷を覆い尽くす様に乱立した水柱と、金属の割れる音と共に、艦橋諸共海中に突入…上方に起きた大爆発によって、意識は完全にもぎ取られてしまったのであった……。 


 フランス艦隊によって、多少の被害を生じたファスサ艦隊だったが、ATSによる飽和雷撃によってこれを撃沈した。

「殆ど無人艦だけど、主砲が使えないとか、どんだけなのー!なんとかなんないの!?」

「仕方のない事ではありませんか、改装は間にあいましたが、我々の確認ミスによって主砲制御盤の調整がされていなかったのですから」

 ファスサのサラメア増派艦隊で唯一の有人艦、ドイッチュラント級装甲艦アドミラル・グラフ・シュペー。

 モンテビデオ沖海戦直前に鹵獲され、リオグランデ工廠で改装を受けていた。そして、このシュペーの改装終了と共に、この作戦が決行されたのであった。しかし、主砲が射撃できたため油断していたが、肝心の主砲管制制御装置の方が使えないと言う、致命的なミス……。サラメアに到着したら、まず先に調整を行わなければと思うほかなかった。

「サーちゃん、何かできる事とかは無いの?」

「何も無いので、大人しく艦長席でふんぞり返っていていただけないでしょうか?」

「つまんないよーぅ!」

「シュナイター元帥の命令遂行の為には、戦闘は行わない方が宜しいでしょう。失敗すれば、どの様な事になるか。お分かりですね?」

 思いっきり諭されていると言うよりも、怒られている。頬を膨らませて、床を転げ回って、艦長席をガタガタと揺する。まるで子供の様な反応に、サーちゃんは溜息を吐いて呆れる。

「静かにしなさい、それでもエマステイルヴですか!」

「だってだって、おフランスばかりずるいよ!私も突撃したいよ!(>w<)」

「あなたって方は……」

 スチャッと懐からスタンガンのようなものを取り出したサーちゃんは、それを思いっきりエマステイルヴの胸元に押し付けた。不意打ちを食らった様に目を見張った後、エマステイルヴの背中に装着されているバックパックが爆発して彼女は床に力無く倒れたのであった。

 すぐに復旧した様で、プルプルと置き上がるが、バックパックからは煙が吐き出され、中のランプが赤く点滅している。

「おとなしくする」

「本当は、この様な事はしたくないのです。ですので、本当に大人しくしていてください」

「はい」

 サーちゃんは、恐怖で視点の合わなくなったエマステイルヴを起き上がらせようとするが、彼女はそれを拒否してフラフラと立ち上がり、艦長席にドカりと座った。

 強制的にシャットダウンさせる特殊電磁パルスを撃ち込まれ、恐怖したかのように見せるエマステイルヴ。本当は、サージトッシを破壊してもよかったが、彼女はお気に入りなので壊さないで置かなければならなかった。最近、アレがサージトッシに配布された事により、従わなければならない事に多くの不満はあった。

 そして、加賀函館が反乱を起こそうとした理由も、何となくわかる様な気がした。自分よりも弱い奴らに、何で自分達が従わなければならないのか…。そう言う事なのだろう。

 だが、彼女達の中で解決が図られた事により、今はその兆候は無かった。だからこそ、ツマラナイ。早く、もっと、コワシタイのに…。

「その、ごめんなさい…」

「いいよ、私が悪かったから」

 横目で困り切った顔をするサージトッシを見て、心が透く様だった。たしか、サディストって言うのだったよね?と思いつつも、表情には出さない。

「……」

 少し、涙目になっている。ゾクゾクと電気が背筋を通る感覚がする。実際には、その様な信号も反応も無いのだが、感覚として有るのだ。これが、タマラナイ。

 じゅくりと股間が濡れる。こうなる事を予期して、既に対策は打ってあったため、すぐにばれる事は無いだろう。

「主砲制御盤が本当に使えないか…、確認してきますね…」

 そう言うとサージトッシは、艦橋から出て行ってしまった。これからが、楽しいと言うのに……。タイミングの悪い…。ああ、でも、自分の趣味が悪いからだって分かりきっていることが、最も悲しい事なんだよねぇ。

「ん?」

 ふと、レーダーとリンクすると、イタリア軍が接近してきていた。そして、その中にまた戦艦が混じっている事に気がついた。

 だが、その布陣は一撃離脱を狙う布陣であり、フランスの様な堅実な攻略法では無かった。つまり、何かを狙っていると言う事になる。

 当初、最短コースとなるシチリア島とマルタ島の中間を通る予定だった。だが、パレルモから出航した艦隊は、パンテルレリア島付近で一撃離脱を仕掛けてくるつもりらしい。つまり、何かある。

 むー。と、悩んでいるとサージトッシが戻ってきた。やはり無理だったのか、目尻が下がって更に泣き顔をしていた。

「少し、聞きたいのだけれども」

「はい…?」

「敵艦隊の動きが、一撃離脱の構えを見せているんだ。でも、その布陣では、撃破できるであろう数は殆ど無い。イタリア側は、何を考えているか、何か参考になる事は無いだろうか……」

「……、これは推測ですが、マルタ島とシチリア島の中間付近に潜水艦を配置して待ち伏せ雷撃を行う。また、このパンテルレリア島を大きく迂回する形で同航を挑み、航路の変更を許さない作戦かもしれません」

「なるほどな…」

 確かに、それなら航路変更を行おうとしても、マルタ島の南を通る航路に行き難い。シチリアの北を通る航路は勿論論外で、時間を食う上に敵の勢力圏内だ。

 ただ、敵勢力圏を強行突破したチャンネルダッシュ作戦という実例もあるため、できなくはない。ただし、敵の司令官が真意に気付いて反対側で待ち伏せを敷けば、終わりなので敵の作戦に乗る他の意のかもしれなかった。

「それ程心配でしたら、マルタ島の甲標的をお使いになられては?海峡に敵がいるならば、撃沈して貰えば宜しいではないですか」

「その通りだね」

 妙案を言われて不機嫌にならざるを得なかった。ただし、時間も無いので自分で気付いた頃には、手遅れになっていたかもしれない。しょうがないので、手柄を渡す事にして、直ちに命令を下したのであった。


 作戦は順調であり、寸分の狂いも無く実行されていた。敵の狙いはおそらくエジプトへの増強であり、空母と思われる艦には、航空機の代わりに陸上戦力か、分解された航空機が搭載されているに違いなかった。その様な戦力を投入されれば、これから行われるであろう北アフリカの戦いにおいて、こちら側が不利になる事は明らかだった。

 それにしても、期待してはいなかったとは言え、フランス軍の不甲斐無さにはただあきれる他無い。数が少なかった事は認めよう。だが、1隻も残っていないのでは、こちらの負担が一挙に増えてしまう。

 本来ならば、フランス艦隊の後ろに付けて同航戦を行う予定だったが、仕方ないので我々だけでやるしかなかった。

 時刻は0550を過ぎており、洋上には太陽が姿を現している。夜陰に紛れて接近できない代わりに、航空機による攻撃が可能であった。

 マルタの航空基地には前日空襲を仕掛けて、滑走路を使用不能にしており、後は料理をするだけであった。

「前方に敵艦隊を確認」

「さて、このリットリオの実力をとくと味わうがいい!」

 東方の上空には航空機が姿を現しており、奇しくも空海同時攻撃となってしまう様だった。だから、油断した訳では無かった。敵の巡洋艦の一部がこちらの進路を塞ぐ様に、舵を切った。その艦影はシュペーそのものだったが、それが10隻もいれば、それがニセモノである事は容易に理解できた。ただし、ニセモノだからと言って弱いとは限らない。

 主砲は変更されているのか、38cmクラスの砲が搭載されており、こちらの戦艦の少なさから絶対優位に立つ事は出来なかった。だが、命中力は高い砲なので、たちまちのうちに4隻を撃沈し、4隻を撃破した、こちらは中口径速射砲による非装甲部の被害だけであり、主砲砲撃には全く影響は無かった。

 だが、島の迂回に時間がかかった事により、敵艦隊から南南西方向に陣取ろうとしたのだが、丁度後方に位置する事となってしまった。だが、進路はそのまであり、この作戦の成功を予感した。が、海峡に差し掛かったにも関わらず、潜水艦による雷撃は無かった。

 そのため、砲撃を続けつつ、追撃する事となった。そして、空母部隊の後方に付けた事により、戦艦クラスの砲の集中砲火と中口径砲の雨あられを受ける事となった。

 だが、進路変更を行えば、置いていかれるため、進路変更もできない。遺憾ながら逆に、罠にかけられた状態となってしまっていた。

 飛来する砲弾の種類は豊富で、駆逐艦の主砲クラスから、戦艦の大口径まで。特に、大口径砲は38cm砲と更なる大口径砲が2種類。どちらも命中すれば、被害甚大は確実な威力だろう。だが、当らない。

 何故かは上空を見ればわかる。航空機による攻撃が始まっており、爆弾を多数浴びている為だった。バカ正直に直進しており、対空砲火はまばらだった。まるで狙ってくれと言わんばかりだが、それでも航空機は落とされている。

 艦隊中央の前寄りに陣取る小型巡洋艦による対空砲撃だけは強力で、ドイツから購入したJu-87が次々と蜂の巣にされて行く。

 ただし、急降下であるため、艦上に命中した爆弾は容赦なく、火力を削る。密集隊形である事も、余計な被害を生む原因となっていた。無様にも、命中した艦の破片により損傷する艦が多数出ているのだ。

「いいぞ!いいぞ、いいぞ!!誰が、ヘタリアだ!我々とて、やればできるのだ!」

『なら、死ね』

 次の瞬間、ローマが爆発した。何の予兆も無く、跡形も無く消え去った。

「な、な、な……」

『くはははははは!パスタの火薬揚げ一丁上がり!くはははははははは!』

 そこで、ようやくその声が、艦内放送用のスピ^カーから聞こえている事に気がつく。

『我が名は、マエステイルヴ級戦闘機人。貴様らの茶番に付き合うのも飽きた。だから……、おもちゃ箱(海の底)()帰るがいい(消え去るがいい)!』

 ブツリと途絶えたその声と共に、空母から多数のロケット弾が撃ちあがった。そして、それが上空に多数旋回する航空機を追尾して衝突…。ものの1分もせずに、100機近く残っていた攻撃機部隊は、さっぱり消え去った。

「空母部隊中央が、開きます!巡洋艦接近!」

「型式報せ」

「おそらく、ユウバリクラス巡洋艦です!」

 遅滞戦闘を行うべく、巡洋艦隊が接近してきた。だが、こちらは未だ戦艦を3隻有しており、数もまだ維持していた。

「敵、魚雷発射管旋回中!」

「自爆覚悟で雷撃を行うか!?火砲を巡洋艦へ集中、水雷戦隊は突撃せよ!」

 航続距離の短い駆逐艦は、もうそろそろ突撃せねば引き返すしか無くなるだろう。未だに、火砲を削りきれてはいないが、被害覚悟で突撃しなければチャンスはない。

 ユウバリ艦隊に集中砲火を浴びせるが、大型駆逐艦の様な艦であるにもかかわらず、戦艦の主砲弾の直撃に幾度となく耐えるのだ。バケモノめ…。

「左翼の水雷戦隊、被害甚大!敵の集中砲火を受けています」

 敵本体の砲撃と、ユウバリ艦隊の集中砲撃を受けて今、巡洋艦ライモンド・モンテクッコリが落伍…撃沈された…。全く砲撃を当てていない訳ではないが、それでも敵に落伍した艦は無い。

「敵空母、ロケット弾発射!」

 天高く、ロケット弾が撃ちあがった。それはくるりと踵を返して東の空へ向かって飛翔して行く。そして、あの方向にはクレタがある。…!?

「現在地確認、急げ!」

「は、はい」

 下手をすれば、敵の潜水艦の回遊する海域で立ち往生する事になるだろう。そう、クレタ南方の海域は、敵の制海圏内になる。正確に言うならば、マルタとクレタを結ぶ線を北限として、マルタ周辺域とその東方からは、敵の勢力圏内と言う事になる。しかも、単発航空機の攻撃圏内でもある。

 以前のタラント空襲を行った部隊の一部が、キレナイカ地方にある航空基地に移動したせいで、トリポリにある軍の施設が、空襲により使用不能となってしまっていた。

 この部隊の空襲圏内に足を突っ込もうとしているか否かによって、追撃の可能不可能が決まる。

「直ちに変進を!敵空襲圏内です!」

 予想した通り、敵の空襲圏内であった。そのため、追撃を諦めるしかなかったが、ユウバリ艦隊は依然戦闘態勢を崩さず、接近してくる。つまり、彼らは攻撃部隊到着までの足どめと言う事になる。また、この状態で急速反転もできない。反転すれば、その隙を突かれて攻撃を受けるだろう。

「針路変更、このままエーゲ海へ向かえ…」

 敵巡洋艦と同航戦を行いつつ、クレタの北方へ退避する事となった。現在の状況は、非常にまずいが速力の出し過ぎで、燃料不足の艦も出始めていた。

 その嫌な予感は的中し、ボルツァーノが一撃で爆沈する。明らかに、魚雷や砲撃では無い。全く未知の攻撃だった…。再度、加速を命じるが、ソレが第2砲塔下に穴を穿った。何の衝撃も、音もせず、ただ、舷側の装甲板諸共溶けたのだ。

 あまりに信じられない光景だったが、それがたった数秒の出来事だと認識に到る前に閃光が目の前を覆い尽くして何も分からなくなってしまった……。



日本共和国が出ないと、トコトン真面目な(?)仮想戦記になってしまうのが難点。この章は、しょうがないかもしれませんね……

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