045話
レキシントンの戦車が暴れ回って、ドイツを含む枢軸軍に大被害をもたらします。
その戦車を派遣させるために、チャーチルは強請るネタを集めるために……。
日本共和国人ではないが、言わせてほしい。
もう、こいつらだけでいいんじゃないか…?
タラント軍港空襲及びタラント湾海戦の結果、イタリアは戦艦4隻と巡洋艦7隻、多数の駆逐艦と潜水艦と魚雷艇を失った。これは、戦力半減どころでは無く、潰滅したと言っていい程であった。
特に、戦艦や巡洋艦はタラント湾で撃沈されたため、サルベージは不可能。サルベージ可能な湾内で撃沈された艦艇も、殆どがスクラップ状態であり、再度戦力とする事は難しかった。
出航に反対したイニーゴ・カンピオーニ提督は、空襲に現れた航空機から、空母艦載機であり、潜水艦が港湾外に待機している可能性を説いたが、これ以上の艦隊損失を嫌ったムッソリーニによって艦隊は出航。そして、この結果である。
カンピオーニ提督は、警戒を疎かにしたとして、解任されている。
だが、護衛艦が警戒を疎かにしていた訳では無かった。無駄遣いを承知で、周囲に爆雷を投下。待ち伏せの潜水艦をいぶり出そうとしていた。
しかし、常識的な潜水艦ならば、その戦術に間違いは無かっただろう。そう、常識的な潜水艦ならば…。
サラメアと言うよりも、レキシントンの艦艇が搭載する魚雷は、ATSと呼ばれる魚雷を装備している。ATS…自動列車停止装置では無く、自動魚雷統制装置と呼ばれる装置である。
これは、索敵装置と連動して、使用する魚雷を自動的に選別、最良の方法で攻撃を行うシステムなのだが、登場当時は「魚雷を多種類搭載する意味が分からない」とバカにされた。
ちなみに、それは水上艦や潜水艦に搭載して、言われている。本来は、航宙艦艇用に開発されたものであり、魚雷で対空攻撃もできる万能装備である。
なお、これを知って日本共和国は、反重力推進魚雷を開発している。そして、魚雷による対空攻撃を実装した。
そして、当然ながら射程も長く、隠密性も高い。長射程/無航跡誘導魚雷を使用するならば、艦隊に接近する必要性も無い。そのため、艦隊から15kmも離れた地点から雷撃したのだ。
雷撃に使用された魚雷は、撃ちっ放し式と呼ばれる方式を採用しており、射撃すれば勝手に誘導するため、方向さえ合っていれば潜望鏡を上げる事さえしなくていいのだ。
そのため、当初イタリア軍は、機雷が敷設されていたと思っていたが、後日イギリスの新聞がイギリス軍とサラメア軍の共同作戦だったと記事にし、それをイギリス政府が肯定したために、ようやく潜水艦による雷撃だと判明したのであった。
しかし、誤算もあった。サラメア側は、ついうっかり宣戦布告を忘れていたのだ。そのため、布告の無い攻撃だとして枢軸国から大バッシングを受ける事となった。
その後、マインの名を持って連合国への参加と、枢軸国への宣戦を布告する事になる。
そして、ギリシアは現在、ほぼ占領されていた。アテネで、最後の抵抗が行われているが、ここが落ちればもう島々しか残っておらず、クレタ島も占領されているため、船舶の航行もできずに居た。
戦力で、ドイツに圧倒的に敵わず、イギリスやサラメアからの支援にも関わらず、結果は変わらなさそうであった。
そのため、ギリシア政府は降伏の準備をしていたが、最後の足掻きだとサラメアは虎の子の戦車を投入してきた。
これは、本当の本当に虎の子であり、たった4両しかいない内の1両を潜水艦に搭載してきたのだった。
ドイツ軍を中心とした枢軸軍は、Eシリーズ戦車の配給を受け、機甲戦力の拡充を行っていた。その殆どは、E-10ルクス軽戦車であり、E-20ヴォルフ中戦車はドイツ軍にしか配備されていなかった。
そして、最初にソレに遭遇したのは、歩兵陣地を攻撃していたE-25シュトゥルムヴォルフ自走砲を運用していた砲兵部隊だった。
突如、歩兵陣地の後ろから現れた大型戦車。それが、発砲すると、1両のE-25とその周辺が吹き飛んだ。大型戦車はすぐに建物に隠れてしまったが、また現れ別のE-25を攻撃してこれを破壊した。
砲兵だけに、敵戦車が搭載する砲が140mmクラスの重砲であるとすぐに判断し、後方に報告するが直後に砲弾が直撃して、砲兵部隊は壊滅する。
その後も市街地を神出鬼没に移動し、その日の内にE-10を68両、E-20を22両、E-25自走砲を10両、E-25駆逐戦車を3両、破壊した。
この被害に、枢軸軍はアテネ市街地から撤退し、次の日は航空攻撃を行って、この敵戦車を破壊しようとしたが、Ju-87急降下爆撃機が11機、Bf-110重戦闘機が6機も逆に撃ち落とされる結果となり、足踏みする事となった。
そんな中、市街地に侵入した特殊工兵部隊によって掘られた落とし穴に落ちて、主砲が大破したため、敵戦車はそれ以降姿を現す事は無かった。残念だが、敵戦車は落とし穴を抜け出してしまったため、回収できたものは無かった。
その次の日には、ギリシアは降伏し、ギリシアの戦いは終わったのであった…。
ただし、この謎…、サラメアの戦車は枢軸軍に大いに警戒される事となった。いや、全く存在を知らされていなかった英国軍も、警戒する事となった。
しかし、英国の警戒度合いはドイツのそれよりも幾分かは低かった。それは、まだ友軍であった事と、サラメア側が情報を公開した事が影響していた。
名称:5号戦車パンターⅡ(L)リヒュン
耐久:1800
防御:対92cm砲弾防御
武装:
無人砲塔型127mm50口径腔線砲×1門
7.7mm主砲同軸機銃×1門
20mm連装自動砲×2基
速度はBT戦車と同等。127mmの攻撃力は重砲クラス。ゼロ距離射撃の203mm砲弾を弾く装甲板と、攻撃を寄せ付けないシールド装置。砲塔上部に搭載された20mm自動砲は対空攻撃も可能と、万能多砲塔戦車の完成形の様な戦車である。
ある意味、ドイツ軍の理想とする戦車と言える。
しかし、当然ながら陸軍戦力の無い筈のレキシントンが、何故戦車を運用できたのか疑問は消える事は無かった。その答えをチャーチルに答えたのは、グロス中佐であった。
「アレは陸軍の戦車では無いのです。空軍の、空挺戦車なのです」
「空挺戦車…?たしか、グライダーに搭載して空挺作戦で使われる、装甲車に毛が生えた様な戦車ではないのかね?」
その通りである。あまりに微妙な性能なため、歩兵戦闘車が発展すると、姿を急激に減らしたが、レキシントンでは未だに運用されていた。
そもそも、レキシントン空軍が運用するのは輸送機ではなく、航宙輸送艦なので搭載制限に引っ掛かる戦車自体がほぼ無い。着地用スラスターさえ取りつけ出来れば、もっと大型の戦車も運用する事は可能ではある。なお現在は、リヒュンが最大の戦車なので、運用的に問題は無い。
そこまで説明したが、チャーチルはすぐに返答を返さなかった。正直な話、リヒュンを投入できれば、ドイツを追いたてる事は可能と言えた。だが、投入数の少なさから分かる様に、この方面に存在するリヒュンの数は凄まじく少ない。少ないと言うよりも、ファスサとサラメアを合わせて5両(ファスサに1両、サラメアに4両)しか無い。
「この戦車を追加配備できないのかね?」
グロス中佐は海軍の軍人であるため、答えられないと返答した。それに、グロス中佐が見た事があるのは、5号戦車パンター(L)リゲルブや5号戦車パンターM(L)マルヌであり、リヒュンは初めて見たのである。
この2種類の戦車も今は殆どおらず、T-34系列の戦車を州軍が使用しているのが現状だった。正直、陸軍戦力は年々不足する一方だった。
「この戦車さえあれば、反攻もしやすくなるだろうに。全く、惜しいものだな」
葉巻に火を付け、一気に吸い込んだ。煙を資料に吹きかけ、葉巻をくわえたまままた考え込む。レキシントン側に戦力増強を頼んでも、リヒュンが増備される可能性は限りなく低い。そのために、何か相手にさらなる譲歩をさせる妙案を思い付かなければならなかった。
たしか、マウントバッテンがサラメアの特別顧問は、レキシントンの旧王族だと紹介されたと報告していた。つまり、この旧王族を利用する他無いと言う事だ。
マウントバッテンの報告書を、怪しまれない様に探し再度読み返す。この報告書に書かれた「マイン」と言う人物が、これはまた難解な人物だった。
その特徴を読み返すが、「緑色の鱗に覆われた爬虫類の様な男」では、意味も訳も分からない。ふと、「レキシントンの神話にも載るほどの有名人」の箇所に目が行った。これは、聞くしかあるまい。早速、グロス中佐にこの男、マインディリストコリエンティア・ファスサ=サラメア・レキシントン:ベツレヘムについて聞いてみる事にしよう。そうしよう。
グロス中佐は、神話がどう言ったものだったか、ハッキリとは覚えていなかった。一先ず、分かるところだけを説明する事にした。
まずは、レキシントンと言う国の成り立ちだった。歴親沌保存帝国は、元来レキシントン帝国と言う竜人達の国だった。そこに、別世界から現れた軍事組織から戦争を仕掛けられる。
それを、レキシントン帝国側が倒し、倒された彼らを新たな仲間として、迎え入れたことで今の歴親沌保存帝国につながる国、歴親沌保存公国が成立した。
神話は、このレキシントン帝国から伝わるモノであった。
レキシントンのある世界を創成した神、破壊神レギオンは戦いに敗れ、異世界からやってきた神だった。身体を癒すため、安住の地に隠れるために世界を創成した。
破壊神レギオンを打ち破った神は、落ち伸びるならば逃すとして、追ってはこなかったが、それでもレギオンの警戒は止む事は無かった。
そのためレギオンは、また戦う事となった場合に備えて、神兵を創り出して備えた。しかし、孤独には耐えられず、生命を生み出す。生み出した生命が、いつかヒトになる事を願って、レギオンは眠りについたのであった。
それから幾星霜の月日が過ぎ去ったあと、レギオンが望んだヒトが現れた。それが、竜人であったレキシントン帝国人だった。レギオンはヒトに知恵と、自ら創りだした神兵の一部を与えた。その与えられた男が初代皇帝となり、その息子がマインディリストコリエンティア・レキシントン:ベツレヘムであった。
マインはその後、異世界の軍事組織との戦争を経験し、彼らを迎え入れる事を提案した人物でもあった。そのため、破壊神レギオンから直接力を与えられたとも言われている。
しかし、破壊神レギオンが自らの娘である神兵リゼギア・ゼグストロームによって肉体を失う事態になり、レギオンが封じていた力が解放される。それにより、竜人が世界を支配した時代は終わりを迎え、長い冬の時代の後に、今の人間の時代となった。これが、レキシントン神話である。
異世界の国の神話とは言え、そのスケールの大きさに、チャーチルは驚く。特に、異世界と言うのはかなり多く在ると言う事を証明する、破壊神レギオンの存在は貴重だった。だが、大変残念な事に、グロス中佐がこのくらいまでしか記憶していなかったため、知りたい事の多くを我慢せざるを得なかった事だろう。
そして、マインを利用しようとしても、彼自身が神から力を授かっている可能性があると言う事実に、その様な存在に触れれば、こちらに返って来るしっぺ返しが多くなる事は予想できた。それが、例えキリスト教の神以外であってもだ。
「たしか、破壊神レギオンは今でも、保存帝国本土で暮らしていると言われています。その証拠に、娘である国津神レキシントンと神兵リゼギア・ゼグストロームが、存命を公表していますから」
「む……?まって欲しい。それでは、まるで神が現世におられると言っている様なものだが?それを理解しているのかね」
「神は現世に存在するものではないのですか?それは、初耳ですね」
グロス中佐は、神は身近にいると言うよりも、すぐ隣の家に住んでいるではないかと言った。神が分からないとは、あり得ないとも。
「貴官の国では、珍しく無いと言う事かね?」
「ん?んんん?意味を理解しかねます。私の妻は、神と竜人のハーフですが、それを不思議に思われた事はありません」
チャーチルは、今のは聞かなかった事にした。この話は、もう終わりだと言って切り上げたのだった。
おそらく、グロス中佐はもん・くえのルカさんの様に、襲われているだけかも!?
それはそれで…(ゴソゴソ




