表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第3章 ちんどん欧州訪問()
41/72

040話

天皇「老害タヒね!」

鹿島「お前の方が年上じゃねえか!」

 大敗。の2文字に、海軍は頭を抱えた。ただの失敗なら、ある程度理解も示しただろう。しかし、今本土にいた海軍軍人の3/4に当る人員が一挙に消滅すると言う、甚大過ぎた被害に言葉さえも見つからなかったのだ。

 その知らせに、日本共和国本土で訓練を受けていた将兵も言葉が見つからなかった。とは言え、日本共和国人でさえも、やり過ぎだと声を上げる始末であはあったが。

 ただし、日本共和国軍が考えなしにそんな大虐殺をする訳も無く、殉職者と再起不能になった全員を機人として復活させたのであった。そう言う問題では無いのだが、少なくとも人員は減ってはいない。ただし、多くの問題が起きて、山本海幕部長の髪が抜け去ったのであった。

 そんな事を羽生と宇垣を含めた、英国派遣戦隊上層部に説明している永野GF長官は、清々しい様に見えてフクザツな心境を時折見せていた。

 それは当然で、こうならない様に努力してきたのに、どこかのバカのせいで台無しになってしまったのだ。なお、そのバカも機人そして復活させられており、今は呉市街で清掃作業の指揮を行っている。

 撃沈された駆逐艦と陸奥は、エネルギーを再構築して元に戻したが、大破した長門は長期ドック入りが決まってしまった。艦中央よりも後部は無事なので、艦前部側を再建する事となった。

 だが、これが思った以上に難工事だった。大破した衝撃で竜骨が曲がり、その矯正から始めなければならなかったのであった。

「で、そのバカとは、誰だったのですか」

「それ、聞いちゃうのクニやん?」

「まぁ、一応は…」

「……。牟田口廉也って言う、元は陸軍にいた人よ。左遷されて、海軍陸戦隊で修業させられてたらしいの。でも、言葉が上手いらしくて、それに乗せられた人間があれだけいたってことなのよねー」

 無表情でそう言う永野GF長官に、誰もが顔を見合わせた。元陸軍軍人が、あれだけの事を起こした?いや、無理だろうと。それは、永野GF長官も分かっているらしく話しを続けた。

「でも、牟田口の相談に乗ったのは、東郷平八郎元帥だったの。それは、やまもん(山本五十六)も知らなくて大問題よー」

 その名を知らぬ日本人は、いないほどの大英雄である。よりにもよって、東郷が動いていたと聞いて、宇垣も顔を青褪めさせた。それを見て、永野GF長官は少し安堵した。少なくとも、山本も宇垣も大きな処分はされないだろうと、予想が出来たからだった。

「まさか、東郷元帥が処罰されたのですか!?」

「いや、それはまだ分からないわ。でも、天皇陛下もお怒りでねー。最悪、処刑されるかもしれないって、小野田幕僚は言っているのよー」

「そんな、のんきな…」

「でも、何もできないもの。あとは、天皇陛下次第ね」

 誰もが口を真一文字に閉じ、俯いた。


 その男は、なまじ意見を言える立場にあったため、今回の事を引き起こしたと言えた。彼の名は、東郷平八郎。日露戦争の大英雄にして、海軍元帥の地位にある人物だった。

 天皇のためを思っての行動だと主張したが、その天皇自らが叱責に加われば、東郷の言い分は通らなくなってしまったのであった。

 この世界では、二二六事件は起こらなかったが、代わりにこの件が「六二二事件」と呼ばれる事となってしまった。

 間接的に陸軍将校が起案、それを東郷が叶えてしまったこの事件は、お目こぼししてきた天皇本人を深く傷つけた。

 しかも、ストッパーたる鹿島は未だに太平洋のド真ん中にいる。航行中の艦から、制御機人を転送する事は禁止なので、最低限トラックに寄港してからの召喚になるだろうが、間に合うかはその時は分からなかった。

「ぶっ殺してやる!」

「我が主、落ち着け!」

「HA☆NA☆SE!」

 度々、御所からこの様なやり取りが聞こえるため、皇居では厳戒態勢が敷かれていた。日本共和国憲兵隊も出動し、近衛に交じって天陽も警戒に当たる始末だった。

 そのため、ようやく戻ってきた鹿島に慰められ、天皇はどうにか平静を取り戻したのであったが、鹿島が傍らにいないと、いつ暴れ出すか分からない状態でもあった。

「よし、死刑な」

 東郷に、さわやかでにこやかにそう宣言した天皇だったが、鹿島に金的を食らって床と抱擁を交わすこととなった。

「いい加減にしろ!しっかりと、聞く事は聞く。言う事は言う!さっき、そう確認したばかりじゃねえか!」

「僕の豆腐ハートじゃ、もう無理だよ……。かしまぁ、代わりをたのむ…ガクッ」

 あまりの衝撃に、そのまま動かなくなってしまった様だ。死んではいないので、そのまま放置して審議を再開しようとするが、東郷やほかの常識人達が鹿島を睨んだので仕方なく、ベンチに寝転がらされたのであった。

「でだ東郷元帥、何か申し開きはあるのか?」

「勿論だ。ワシは陛下に幾度となく、君達日本共和国と縁を切る様に進言してきた。そして、致し仕方なく今回の事に到ったまで。ワシに対して何故、陛下がお怒りになるのか。全く分からないのだ」

「コイツは正直言って、外見おっさんの子供だ。東郷元帥、あんたがどう思おうと構わんが、コイツが良かれと日本共和国を招いた以上、その邪魔をしたあんたをコイツが許す訳無いだろ?」

「君に、何が分かると言うのかね」

「さてな、分からんよ。だがな、あんただってわかんねえって事だろ?おあいこじゃねえか」

 東郷が処刑される可能性は低いと、誰もが思っている様だが、このままでは復活さえも許されない可能性が高いと、鹿島は思っていた。

「しかし、君は陛下が良かれと思ったと発言したが、その様なたわごとを誰が信じると言うのかね?」

 この場での発言力は、東郷に圧倒的有利であった。特に、天皇が倒れている以上、鹿島の言葉に信憑に値するもの無しと言う論調である。

「それは、誠じゃぞ東郷」

 少なくともここに紗々鬼(ささき)がいなければ、の話だ。従士長である紗々鬼の言葉は、天皇の次に重きを置かれる。それに、天皇が東郷絶対有罪と暴れるために、東郷の方が不利でもあった。

「紗々鬼従士長、誠とはどういう事でしょう」

「何をいけしゃあしゃあと、鹿島は真実を述べておる。この紗々鬼が証明しようぞ」

 これにより、少なくとも鹿島が虚偽を発している訳ではないと、証明する人物がいる事になった。

「よし、死刑な!」

 いつの間にか復活した天皇が、般若の様な形相で東郷の首を締め始めた。これには紗々鬼も鹿島も慌て、もう少しで本当に東郷はあの世行きになるところであった。

 後日、天皇のいないところで審議が行われ、東郷は予備役に退き、軍には一切かかわらないと血判をしたためる事となった。

 流石の東郷も、あの本気を受けては、抜け殻のようになってしまい。故郷で静かに余生を送る事となったのであった。


日本共和国の登場により、寿命が延びてしまった東郷元帥。ただ、史実でもお節介によって、現場を混乱させていたので、今回の様な事を起こした可能性も無きにしも非ず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ