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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第1章 何が起こるんです?
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004話

追加の登場人物


+.天野技術幕僚長

 渋い顔をして我々海軍が提案…もとい、要求した内容を聞いていた彼は、秘書官の方へ振り向いた。あまり表情を作らない人物が渋い顔をしているため、彼は相当困惑しているだろう。ついでと言っては何だが、私もである。

「戦艦は分かる。だが…」

「……ええ」

 戦艦は予算が下りそうだが、空母は駄目だと言うのか!?まさかの展開過ぎる……。もしや、日本共和国では航空機では戦艦を沈められなかったのだろうか……?いや、聞く必要はある。

「何が、問題なのでしょうか」

「大変言い難い事なのでな…。な?」

「わ、私に振らないで下さりませんか?航空戦術は専門ではありませんか!」

 この男、これでも航空戦術の専門家だったのか…。

「基地航空隊の運用は……できるが、フツーの空母になんて乗ったこと無いぞ」

 は?空母に乗った事がない?

「私もです。それに、私の専門は補給ですので、お答は致しかねます」

「我々が持つ知識では答えに窮するな」

「はい。技官が必要ですね」

「説明できそうな技官は?」

「横須賀にはいるでしょう。多分」

「……、では呼び出してくれ。それまで、一時休憩しようではないか」

 航空機の運用に関して疑問を持っている訳ではなさそうだが、空母の事に関して渋い顔をした理由が分からなかった。いや、分からない事だらけだ。日本共和国……。彼らは一体…?

 と、そこに、東條さんを連れた天野将軍がやってきた。こめかみを押さえ、相当呆れた様子で小野田幕僚の部屋に入ってくる。非常に不機嫌な東條さんを見ていると、あちらも大変なのだなと遠くを見てしまった自分が居た。


「取りあえず、技術関係は私が説明しよう。話を始めるがいいか?」

 天野将軍が、陸軍側でも航空戦力の拡充案が出ているため、海軍側と折衝しなければならないとやってきた。大変残念ながら、国防費はかなり低く設定されているらしく、陸海で別々のモノを開発できる予算は無いそうだ。

「技術以前の問題なのですね…」

「そんな事は無い。同じモノを使えばいいだけの話だ。ただし、我が日本共和国と共有する必要があるがな」

「空母も共有ですか?」

 天野将軍は秘書官の問いに目くじらを立てて否定した。

「バカを言うな!こんな低予算で動かしたら、数日で年間予算をオーバーするぞ!そもそも、我が国で最近建造された正規空母は数千年も前の「雲龍型」まで遡らなければならんのだぞ……」

「もしかして、その空母が建造されたのは……」

「西暦で言えば、1940年代の中頃。皇紀で言えば2600年代一桁台になるな」

 彼と秘書官は、目を大きく開いて呆然としている。

「そ、そんな…」

「何と言う事だ…」

 2人して深刻そうに頭を抱えてしまった。実際には、深刻そのモノなのだろうが。

「山本さんも東條さんも意味が分からないだろうから、簡潔に言うが、我が日本共和国は君達が行う「通常建造」…竜骨を据えてそれを軸にして建造する方式を採用していないのだ。「モヌン船体構成構造」と言う方式を用いているため、君達がこの方式を取得しない限り、一切の相互性がない。もし、新規で空母などの艦艇や車両を製造する場合、君達が持ちうる技術で揃えてもらう事になる」

 それ程深刻だと思えるかと言われれば、否定できるような気がする。非常に曖昧なのは、その確証がないからである。

「例えば、そのモヌンなんとかという方式では、何が違うのでしょうか」

 東條さんの質問に、天野将軍は「ふむ」と答える気ではある事を見せた。

「……。総てが違うと答えられるな。例えるならば、戦艦を造ろうとしよう。長門型戦艦だ。ドックに資材を搬入してから、船体が完成して、就役するまで、通常で5年はかかるとしよう。では、モヌン船体構成構造の場合はどうなのか。特殊な建造設備は必要だが、資材を搬入して3日もあれば就役できる状態にはできるだろう。ざっと見て、建造費は1/5程度に抑えられるだろうな」

 そのあまりにも信じられない答えに、心臓が止まったのではないかとも思える衝撃を受けた。陸奥の就役に端を発した陸奥完成問題(ワシントン軍縮条約)。当時を思えば、あれ程苦労する事をたったの数日で済ますことができると豪語したのだ。信じられる筈は無かったが、数千年の月日があれば問題としては解決可能なのだろうな。そう思おう。驚きすぎて、非常に心が疲れてきてしまった。

「ああ、ちなみに重量も軽くできるな。どれくらいかは、計算しなければ分からないが、数百トン単位にななるだろうな」

「軽く…なる……?」

「そうだ。モヌン船体構成構造は、リベットや溶接を殆ど行わない方式なのだ。まるで、立体的なパズルを作る様に部品を接合するため、防御も向上するぞ」

「……」

 説明とは、一体何だったのか。私も東條さんも、限界を迎えたのかほぼ同時に気絶する事となった。この歳になって、知恵熱で倒れようとは思いもよらなかった。


 数日の時を経て、また持たれた折衝。日本共和国人曰く「勝てる気がしない」とはこのことか……。技術的な説明の不備を補うため、技官が呼ばれた様だが、小野田幕僚曰く「マッドな人キター(・∀・)」らしい。

「相も変わらず、失礼な。上官侮辱で憲兵に突き出しますよ」

「うっ……。も、申し訳ございません」

「解れば宜しいのです。では、改めて自己紹介させていただきましょう。私は天野美樹(あまのよしき)、階級は技術幕僚長になります。日本共和国6軍、陸海自衛軍、陸海空自衛隊、海上保安庁の装備の開発・製造の責任者を務めさせて頂いております」

 ああ、これは駄目ですわ…。確か、幕僚長は各軍の最上位群長であり、その上は幕僚総長と国防大臣、内閣総理大臣ぐらいだと聞く。幕僚クラスは何十人もいるが、幕僚長は1人のみ。これが「ラスボス」と言う奴なのか……。私の心は一撃で折れそうになったが、なんとか持ち直す。

「空母が欲しいと言うお話でしたが……?」

「はい。国防のため、空母によるアウトレンジ攻撃を行い侵攻してくる敵に被害を生じさせる、または撃沈すると言った方法を用いることにより、我が国が受ける被害を未然に防げると確信しております」

「それはそうでしょうね。空母艦載機の航続距離と、砲口兵器の射程と命中力は同一次元では語る事は出来ないでしょう」

 技術屋と聞いて作戦に興味がないと思いきや、中々の好感触を得る事が出来た。しかし、安心するのはまだ早い。返答はまだ続くのだから。

「ただ、貴方の言い方では、アウトレンジ攻撃ができるならば、別に空母である必要性は無い。そうも、解釈できますが?」

「え?あ、い、いや。大規模な航空基地を設営できる島嶼は数が少ないため、どうしても空母は必要になります」

「言い方が悪かった様ですね。超遠距離(水平線の彼方へ)攻撃ができるのであれば、航空機を使わなくてもよい。と、言う様に私には聞こえましたが?」

 なん…、だ…と?

「射程4000km程度ならば、誘導機能を備えた砲弾を射撃できる列車砲が存在します。列車砲では防御が不安だと申されるのでしたら、それを連装砲塔化(艦載砲化)した物も存在します。そちらでも、宜しいでしょうか?」

 あまりの衝撃に心臓が止まる。列車砲と言うからには陸軍の装備品と言う事になる。陸海空全ての装備品を管轄するだけあって、想像を絶した答えが返ってきた。

「あ。でも、艦隊からは空母の必要性を説明された事がありましたね。その時は「おーるらんぐふりすと(改造空母)」で我慢していただきましたが…。次の参考にするための試作艦建造に協力していただけるのであれば、私の方から別途予算を組む様に総長に進言しますよ?」

 固まっている間に話が進んでしまった様だ。

「取りあえず、既製の船体を使用したいですね……。と、なると加賀函館級かな?」

「廃止された艦を再度建造するのですか!?」

「確かに、廃止はされましたが、勿体無いじゃないですか。それに、予算を抑えられるので数も揃えられますよ?どうせ、1隻ではどうしようもないのですよね?」

「防御力が低いから廃止された艦を再利用するなんて……」

「別に、技術的には低くありません。ヴァイタルパート(重装甲区画)が100%あってほぼ零距離射撃の80cm砲弾を水平/垂直どこから受けても弾く物を防御が低いなんてありえません。ただ単に、不必要になっただけですから」

 現場曰く「対80cm砲弾防御は紙装甲」だと言うのか……。何と言う非常識な。

「で、山本さんは、天野技幕の提案をどう思うかね?私としては、試作艦の建造に協力するべきだと思う。なんせ、空母の建造費は技術幕僚長(技術研究本部)持ちになるのだからな」

「加賀函館と聞いて喜んでいるだけではありませんか。まぁ、試作艦はこの際なので建造しようと思っています。1隻だけか8隻か。お好きな方をお選びください」

「話に乗っかると8隻も造ってくれるのか…」

「技術供与のついでですので。本来なら、駆逐艦などでもよかったのですよ?」

 私に選択肢など無かった。ほぼ、勝手に決まった様なものだが、空母の建造が認められ、同じ船体を用いた戦艦の建造も認められる事となった。この結果に大変満足した私は、小野田幕僚の気持ち悪いほどの笑顔の意味を図り損ねる事となった。


日本が苦手とするファミリー化による、費用の削減をさらりとする技術屋《MAD》。しゅごい

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