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お前らいい加減にしろっ(A)  作者: 加賀函館
第3章 ちんどん欧州訪問()
34/72

033話

アメリカ式問題児の登場になります(案外長いな…)

 唐突な登場に、各国の反応は一様にして同じだった。流石に、主催者であった英国の様な反応を見せたところは無かったが、それを目撃した軍人達は顔をしかめ、ある事実にたどり着いて驚愕する。そう、フッドの艦長の様に……。

 だからこそか、ニーナ・バレンディア・ブラウン特務曹長は、上官であるウィリアム・フレデリック・ハルゼー大佐と共に鹿島を訪れる事になった。

 当初、ハルゼーは顔に皺をよせ、ニーナの前では見せない様な嫌そうな顔をしていた。

 しかし、この唐突な挨拶に、行かざるを得なくなったため、覚悟を決めていた。

「迎えに来ましたよ」

 一部のランチが不調であるため、近隣艦に頼んで一緒に乗せてもらう事となった。特に、鹿島見学は見学希望者が殺到したため、乗り切れなかったのだ。

「ありがとうございます」

「いいえ、隣国のよしみです。しかし、お美しいお嬢さんですね」

「美しいなんて、御冗談を」

「冗談を言えるように見えますか?」

「う、そ、そうではなくて~~~」

 ニーナが迎えに来たランチの乗員に、ハンティングされている事に気付いたハルゼーは猛進し、割って入った。

「何してやがる」

「何をと言われましても、緊張していらしたので、やわらげようかと思いまして。ハルゼー大佐は、お気に召しませんでしたか?」

「余計な事をするな。乗せてもらう事には感謝するが、余計な世話は焼かなくてもいい」

 ランチの乗員だと思った男は、大佐の階級章を着けていたため、この男も見学者である事は分かった。

「トノマツ大佐、早くしなければ日が暮れてしまいますよ?」

「そう()ぐな。急いだところで、何も良い事は無いぞ」

「大佐の、何も良い事は無い、はフラグなのですが…」

「事実そうだ。この2人は、日本共和国から要注意人物として目をつけられている。急いだだけ、損だぞ?」

 トノマツと呼ばれた男は、操舵室から声をかけてきた青年将校にそう答えた。

「おい、それはどう言う事だ」

「気になりますか」

「そう思う様に、言っているではないか」

 男は、低速で向かう様に命じ、ハルゼー達の方を向いた。向くと、表情が分かりにくいと言われる東洋系の顔立ちでありながら、確実に悪い顔を浮かべて理由を説明した。

「日本共和国にとって、お2人は歴史上の人物と言う事になります。そして、特に、ニーナ・バレンディア・ブラウンさん。貴女は、危険人物扱いです」

「え、私!?」

「はい。我々も調べましたが、貴方がまさかの「ブラウン提督」のお母様であるとは。いやはや、それは警戒して当たり前でしたね」

「母親って…、私はまだ結婚していませんが…」

「そうです。この時代、この世界では結婚されていません。ただし、日本共和国のある世界では、大戦中にご結婚されていますよ」

 話しが分からなくなってきた。ブラウン提督と言うくらいなので、日本共和国にとって厄介な軍人と言う事になる。しかし、大戦?まるで、また世界大戦が起こる様な言い草だ。

「しかし、私とその提督さんが、これから関わるようになるのは、当分先なのでは?」

「そうです。ですが、貴女も優秀な特務情報官でありますから。警戒に越した事は無いでしょう。そこまで、日本共和国にはバレているのですよ」

 それは想定外であるし、この男さえも調べてしまった事から、ニーナがかなりの有名人である事は疑いようが無かった。

「大佐。それ程有名な方、なのですか」

「いや、調べないと分からなかった。彼女の父親であるニールス・ブルーノック・ブラウン氏は、キンメル派の参謀だったのですぐに分かったが…なぁ」

「よく、お調べになりましたね」

「面倒くさくなって、ブラウン提督本人に聞いたのさ。代わりに、会わせろと言われたがな」

「え、では……」

「そうさ、今は鹿島に居る」

 この男。ニーナに情報収集をさせないつもりか!?ハルゼーは黙って聞いていればと、トノマツ大佐に殴りかかろうとしたが、軽く足をはらわれ、甲板に腹から叩きつけられた。

「ブラウン提督の事です、身内には甘い。ハルゼー大佐の心配する様な事は無いでしょう」

「大丈夫ですか、おじ様…」

 ニーナによって引き起こされるが、強打したところが痛んだ。骨は折れていなかったが、内臓に負担が来てしまった様だった。

「取りあえず、痛み止めです。内臓をいためてしまったのでしょう?鹿島で診てもらいましょう」

 錠剤と水を渡され、それを一気に飲むと、すぐに痛みが引いていった。その事に驚き、この薬について聞こうとしたが、ランチが鹿島のすぐ横に設置してある浮き桟橋に接舷したため聞く事は出来なかった。


 浮き桟橋から見上げた鹿島の乾舷は、客船の様に高かった。これをラッタルで上がるのは一苦労であると思ったのだが、艦尾舷側に開いた開口部からスロープが艦内に伸びており、見学者はここから艦内に入って行っていた。

 見学者名簿を確認していた士官に、トノマツ大佐が話しかけると、笑みを浮かべていた士官の表情が、一瞬にして突き刺さる様な異様な目に変わった。

「アメリカ合衆国海軍のウィリアム・フレデリック・ハルゼー大佐と、ニーナ・バレンディア・ブラウン特務曹長ですね。ようこそ、我が鹿島へ」

「は、はひぃ!」

 ニーナの名が呼ばれると、他の兵からの視線も向けられた。今にも襲いかかろうとする獰猛な肉食獣のソレだ。

「貴様ら、何をしている」

 艦内から士官や兵に対して大声で怒鳴る声が聞こえた。恐らく日本語であろう。意味は分からなかったが、目の前の士官の反応から見ても、注意を受けた事は間違い無かった。

 そして、声を発したであろう人物が艦内から出てくると、士官の動揺具合は更に増した。

「案内は私が勤めよう。貴官らは、今まで通りの職務を続けよ」

「か、艦長!しかし……」

「いいから、命令だ」

「っ。了解であります」

 英語にて行われた会話によって、この小柄な女性軍人が、鹿島の艦長であると知った。先程の様な視線は無くなり、よそよそしい雰囲気になる。

「大変失礼した。私が本艦の艦長に就いている鹿島だ。階級は海上少将となる」

「ガイテナル・トノマツです。階級は1等空軍大佐です」

「サダメリア・グロスです。階級は2等海軍中佐であります」

「ウィリアム・フレデリック・ハルゼーだ。階級は海軍大佐」

「に、ニーナ・バレンディア・ブラウンであります!階級は海軍特務曹長であります!」

「ふむ、了解した。アメリカ合衆国から2人、ファスサから1人、レキシントンから1人で間違いないですかな?」

 その問いに疑問を浮かべたのは、アメリカ軍の2人だった。

「間違い無いです」

「では、まいりましょうか」

 トノマツ大佐が、他が声を発する前に肯定したため、聞くチャンスを逃してしまった。仕方なく、鹿島艦長の後ろを付いて行く事に。

 最初に目の前に現れたのは、巨大な格納庫だった。乾舷の高さからして、何かしらの空間である事は分かっていたが、まるで空母の様に広い空間がそこには広がっていた。

「ここは、車両や艦載艇を格納する格納庫になります。水上機も搭載できなくはありませんが、カタパルトなどの発艦装置の無い本艦では、運用は困難であります」

 艦尾側は、仕切りによって区切られてしまっていたが、それが防火シャッターである事に何人が気付いたであろうか。

 代わりに艦首側には、車両や搭載機が展示されており、他の見学者が興味深げに見ている。

「こちらは、本艦のクレーン作業車になります。本来、陸軍の装備品でありますが、海軍仕様に改められておりまして、重耐塩使用になっております」

 そこには、青く塗装された大型クレーン車が展示されていた。車体は戦車の物なのだろう、幅の広い履帯を着けている。そして、凄まじく大きい。この様な大きさの車両を、間近で見る事はそうそうある物ではない。

「このクレーン車は何をするために?」

 トノマツ大佐の問いに、分かっているだろうと言う顔の後に、2人の顔を見てそう言う事かと質問に答えた。

「様々と言えますが、主に搭載艇の回収時。物資の搬入時に使用します。後は、航空機の搬出時でしょうな。輸送任務を行う事もありますので」

 なるほど。航空機の運用はできなくても、輸送任務程度であれば可能だと…。しかも、この広さなので解体梱包する必要性も無いと言う事になる。

「次に我が艦の搭載艇になります」

 移動用の台車に乗せられた作業艇や、運荷艇が並べられているが、一番人だかりができていたのは、砲艇の展示スペースだった。しかし、トノマツ大佐は興味が無いと言いたげに運荷艇の方を見て質問した。

「この運荷艇。珍しいと言うよりも不思議な形ですな」

「それは特14m運荷艇と言う、元は陸軍の装備品ですよ。通常の運荷艇よりも、多くの物資を搭載できます」

「うむ?陸軍の?では、陸軍はどの様に使用しているのでしょうか。陸軍が艦隊を運用している訳でもありますまい」

「……。それは、海軍軍人である私の権限の範囲外ですよ、トノマツ大佐」

「でも、御存知なのでしょう?」

「答えられない。そう言っているではないか」

「そうですか。なら、私が答えてもよいと言う事ですね?」

「好きにしろ」

 トノマツ大佐は、ニーナとハルゼーにこの運荷艇の本来の使い方を教えた。この運荷艇は上陸用舟艇であり、この大きさなら戦車も搭載可能であると。

「なっ!何だと!?」

「ただし、Typ89までですよ?日本共和国の戦車は載せられません」

「貴様…何者だ!何故、そこまで知っている…!」

「何者も何も、私も情報将校なので知っているに過ぎません。そして、日本共和国の同盟国であるレキシントンの軍人でもあります」

「どう…め、い?」

「何を驚かれているのです?それでは、これから先に起こるであろうことに耐えられませんよ?ねぇ、鹿島艦長?」

 鹿島艦長は、眉間にしわを寄せトノマツ大佐を睨みつけた。

「さっさと行くぞ。早くせねば、ブラウン提督が何を仕出かすか分からんからな」

「そうですね。それは大変だ」

 ドス黒いオーラを纏った2人の目が、怪しく光って3人に早く来るようにせかした。余りの異様な光景に、3人は従う他無かった。


 格納甲板から上部甲板に移動するのに、艦内エレベーターを使った。ただし、車両用の大型のものだ。それで、艦尾航空作業甲板に出れば、後部艦橋を見上げる形になった。

「ここから艦尾までは、100m程あります」

「ちょっとした軽戦闘機ぐらいなら飛び立てそうですね」

「上部構造物が邪魔で、合成風力が得られないでしょうね。では、次です」

 そう言うと、艦内に戻り艦首方向へ歩きだす。途中、魚雷発射管と補給用設備を見た後、航海艦橋へやってきた。

「ここが本艦の航海艦橋になります」

 中はかなり広く、客船のエントランスの様な広さだ。しかし、他の見学者はいないのか姿は見えなかった。

「ほえーかんちょー、ここは見学外ではー?」

「総長と提督はどこにいる」

「CICですー」

「なにっ!?」

「副長が案内ちゅーですー」

「そうか。では、1530に食堂で落ち合う様に伝えてくれ」

「あいさー」

 へなりとした敬礼をした女性軍人は、また居眠りの形をとっていびきをかき始めた。

「まさか、あの方は……」

「む。彼女を知っているのか?」

「知っているも何も、樺太の航海長をしておられていたではありませんか!?何故、この艦に!」

「再来年には定年でな。それに、本人の希望でもあるのだ」

 定年と言う年齢には全く見えない。外観的には、ニーナとどっこいだろう。しかし、当のニーナはガタガタと震えていた。どうしたと言うのだろう。

「東洋の神秘……羨ましい…」

「人種が違うから、貴官は諦めろ」

「ぬわーぁぁあああああ!!!!」

 女性が、おしゃれや若さに対する姿勢は物凄い。凄まじい……。怖いよぅ…。

 次に訪れたのは艦首甲板だった。2つの砲塔が背負い式に配置され、離れた位置に単装砲が配置されていた。

「艦首の第1第2砲塔は41cm45口径速射砲。艦橋直前の第3砲塔は56cm試作電磁砲です」

「試作?」

「そう、試作。単装タイプは、貫通力が低いので貫通力を増すために長砲身化したタイプだ。ただ、短砲身でもコンデンサの静電容量によって、無理矢理貫通力を持たせることは可能だがな」

 もう既に、恒例となった鹿島艦長とトノマツ大佐の問答だが、ハルゼーもニーナも話しに全く付いて行けていなかった。グロス中佐は苦笑いしているが、彼も殆ど理解できていない。

「そちらはそう言う方式か…」

「貴国のグイーントッシは、砲身加速式と砲弾加速式の併用だと聞くが、効果のほどは?」

「それは、お答えできませんなぁ」

「先程の仕返しか。知っていながら、答えなかったのは、どうしようもないとは思うが?」

「うーむ、仕方ないですね…。正直な話、砲身が融解しやすいのです。各砲塔に機関を無理矢理搭載して、強制冷却してはいますが、冷却機が故障すると一瞬で砲身が気体化するほどの熱量を発生してしまうのですよ」

「なっ…!耐熱温度2億℃のメタルガ・イスト超合金が、気体化する!?どんな無茶をしているのだ貴国は……」

「技研も無茶は承知ですよ。しかし、量産化するとして悠長に製造はできませんので、安価で簡易である必要性があるのですよ。貴国の様な「技術力の方向音痴」な技術者は我が国にも殆どいませんので……」

「あいつらはしょうが無い。MADに正気を保てとか、無理だから」

「全く、電磁加速砲と名乗っているにもかかわらず、リニアガン式では無く、コイルガン式でそれを達成できる事が不思議でなりません」

「どこが違うかはよくわからんが、私に聞くな」

 トノマツ大佐は、凄まじく呆れてしまっている。うなだれる様に両手両膝を甲板に着いて、盛大なため息をついた。

 話しが終わった様なので、艦首の方の砲塔の前まで行くと変なのがいた。

「ここでは、私が説明いたしましょう」

「お前、大丈夫なのか…?」

「お気にせず。お客様に見せられないだけですので」

 指し棒を持ち、包帯でぐるぐる巻きにされた男がそこには立っていた。特に、顔は過剰なほどに巻かれており、パッと見で雪だるまではないかとも思えた。

「この砲塔の紹介をさせていただきますクニトキ・ハブであります」

「おお、貴官が噂の!」

 復活したトノマツ大佐は、ハブと名乗った男の手を握る。それに握り返す形で返事をするハブ。

「耳が早いですね」

「そうですかね?しかし、その怪我はどうなされたのか…」

「聞かないでください……」

「それは、申し訳ない。しかし、驚きました。まさか、第10艦隊司令の羽生提督にお会いできるとは……!」

 殆ど出回っていない情報だが、艦隊が新設されたと言う事は噂程度に広まっていた。まさか、その艦隊司令官がこんなところで、解説に立たされていたとは驚きだった。

「これも、経験です」

「そうですか。では、解説をお願い致します」

 この砲塔は、日本砲遁(にほんほうとん)と言う企業で造られている艦載専用の砲で、装填は全自動。1分間に1門あたり90発の速射ができるとの事。

 砲弾は、超質量砲弾と言う種類の砲弾を用いる。通常、41cm砲弾であれば1トン弱だが、この超質量砲弾はとある方法で2.2トンの砲弾重量にしていると言う。

 2.2トンの砲弾はどれくらいなのかと言えば、おおよそ53cm砲弾に相当すると言う。その様な巨砲は、前時代的な前方装填式砲ぐらいしか、実例が無く。そう言った砲弾でも、その様な大重量にはなっていない。

 陸上用であればマレット臼砲と言うモノはあるが、何にせよ艦船用として使用はできない。

「この砲を搭載した艦を日本共和国は、配備する計画があるのでしょうか?」

 ニーナの質問に、羽生は鹿島艦長の方を向いた後、再度ニーナの方を向き直して答えた。

「あるとは、伺っています。しかし、これから乗員の教育を開始するため、早くても5年後。本格的な配備となれば、10年は考える必要があるでしょう」

「5年……」

「しかし、その艦を通常の戦闘に投入する事はありません」

「へ…?」

 鹿島艦長は何も言わず、次を促すだけだった。しかし、それに答えたのは羽生では無かった。

「出雲級は、日本共和国の最後の切り札なのですわ。ですので、例えば日本本土を攻撃するために接近しない限りは、出会う事など無い。そう言う事になりますわね」

 続きを言われ、羽生は答えた人物の方を向く。その人物の第一印象は、似ているだった。誰にかと問われれば、ニーナにである。

 ニーナに似付かず、おっとりとした顔立ちに、プラチナブロンドに見える銀髪。藍色と言えるほどの深い青い瞳の女性であった。しかし、遠目からはニーナと見間違えるのではないか、そんな印象を持つ。

「もしかして、ブラウン提督…ですか?」

「はい、そうですわ。ブラウン曹長」

 含みを孕んだ笑顔で、そう返したブラウン提督。待ち切れずに、来てしまったようだ。ヒールを履いているせいか、頭半分ほどブラウン提督の方が高い。そのため、ニーナは頭を撫でられてしまう。

「ブラウン提督」

「あら、遅いですわよ?待ち切れずに、探しに来てしまいましたわ」

「航海長に伝言を託したのですが?」

「本埼総長に黙って来ましたの。ですので、知りませんわ」

 にこやかに、さらりと流そうとするブラウン提督だったが、その時首に腕が回り、締めあげられてしまった。ブラウン提督よりも小柄な女性だったが、その力は半端無かったためか、少し暴れた後にブラウン提督は気絶した。

「そこの君、ブラウン提督を医務室に。なに、多少雑に扱っても問題は無いよ」

 凛々しい姿には似つかわしく無い、可愛らしい声が聞こえた。成人女性のそれと言うよりも、成人前の少女の様な声だった。

「幕僚総長!?」

「騒がせてしまったみたいだね」

「別に、宜しいのですが…。お時間は大丈夫なのでしょうか…?」

「少し早いが、終わらせてきたのだ。国王も、我々のプレゼントを喜んでいたしね」

 女性にしては、男らしい出で立ちと言葉遣いだった。ニーナからすれば、余りにもはしたない気がしてならなかった。

 しかし、話しはハルゼーによって遮られる事に。先程の女は何者かという質問に始まり、本埼幕僚総長に関しても説明を求めてきたのであった。

 なので、ここでの長話は疲れるだろうと、食堂へと招き入れられる事となった。


 早々に復活したブラウン提督は、膝の上にニーナをのせソファーに腰掛けた。その右側にハルゼー、左側にトノマツ、グロスの順で座る。それに対面するように、本埼幕僚総長。右側に鹿島、左側に羽生が腰かけていた。

 先ず、最も気になっているであろうブラウン提督についてであった。大方は、トノマツ大佐に説明された事と同じだった。

「ノックス・ブラウンですわ。今は、日本共和国の同盟国で軍鞭を振っておりますわ」

「おい、待った。あんたの生まれた合衆国はどうなった」

「それは、お聞きにならない方が宜しくてよ?それにわたくし、合衆国に見切りをつけていますので、そこはご了承くださいな」

「な…にぃ…」

 額に青筋を浮かべて、喰ってかかろうとするハルゼーにブラウン提督は、気にも留めていない様に流す。それが更に気に障ったのか、掴みかかろうとするが、するりとひと捻りにされてしまい、捻られた左手をさすって悶える事となったハルゼー。

「はあ、では、次は私の事に関してですね……」

 本埼幕僚総長は、自己紹介をする。自分は、日本共和国全軍の最高責任者であると。そして、男でもあると。

 特に、男であると言うのは信じ難く、ハルゼーやニーナだけでなくグロス中佐も疑わしい顔で見ている。しょうが無いと、本埼幕僚総長は席を立つと、ニーナのすぐ横まで歩いてきた。そして、その手を取ると自らの股間にその手を当てた。

 一瞬固まったニーナだったが、涙目になり、悲鳴を上げる。

「お解り、ですか?」

 ガタガタと震えるニーナを、あやす様に撫でるブラウン提督。GJと親指を立てるが、それを無視して話しを進める。

「はぅう……。お、きぃ…」

「何してるんだ!お前ら!」

 とうと暴れ出したハルゼーを、宥め様とする羽生とトノマツ大佐。しかし、全く止まらずどこからそんな力が出るのかと思えるほど暴れる。

 仕方無いと、ツボを突かれてその場に崩れ落ちるハルゼー。もう、大丈夫だからとニーナに説得されて要約大人しくなったが、その瞳は次に何かしたらただでは済ませないと息巻いている。

「私は天皇陛下の名代として、この場におります。そして、本来ならこの様に他国の軍人の前に出る事も無い筈でしたが…。ブラウン提督の独断専行により、この場でお話しさせていただいております。ただ、私達日本共和国としては、ブラウン提督を招待したレキシントン側に説明を求めたいのです、宜しいでしょうか?ガイテナル・トノマツ1等空軍大佐」

 急に話しを振られたトノマツ大佐は、冷汗をかき、しどろもどろとなってしまう。しかし、その前にレキシントンとはどの様な国なのか。ニーナは説明を求めた。

「それを知った場合。貴国、アメリカ合衆国に天文学的な被害が発生しますが。それでも、お知りになりたいでしょうか?」

「どう言う…意味でしょうか…」

「そのままですよ。貴国の国防概念が破綻してしまうでしょうね」

「では、日本共和国から見たレキシントンを教えてください」

「……。そうですね、レキシントンは我が国よりも遥かに大きな国。そう、お答えしておきましょう。ファスサと言う「植民地」を持っているのですから、お分かりになるでしょう?」

 ファスサを植民地にしている国である。そう、答えが返ってきた。また、大きいの意味は判明しないが、余り希望観測ができない意味である事はよく分かった。

「そうですか……。ありがとうございます…」

「では、今度はトノマツ大佐にお答えいただこうか」

 以前、グロス中佐に「絶対に口論したくない」とぼやいていただけに、こうなってしまった事に動転してしまっている。

「っ……。では、お答えいたしましょう。我が国も、情報を収集していたのですよ。特に、ブラウンの名を持つ軍人がその線上に上がったので、最も詳しいブラウン提督に情報提供を願い出た。そして、情報提供の条件として、ブラウン特務曹長に会いたいと言うモノでした。しかし、我が国の参加艦は既に出航しており、致し仕方なく出航が遅れていた鹿島に便乗を要請したのであります」

「それは、貴国がもう1隻用意すれば、解決した事では無かったのですか?それとも、そのル・ジューラ級は本格配備はしないのですか?」

「う、そ……その通りです…。そこまで考えが浮かばなかった、本官の落ち度であります……」

「まぁ、良いでしょう。貴官も1人で大変でしたでしょうからね」

 今度は無いので、よろしく頼むと言う事である。たった、数分であったにも関わらず、トノマツ大佐は全身にびっしょりと汗をかいていた。

 そんな事はどうでもよいと、ブラウン提督はニーナを抱きしめたまま離さなかったため、ニーナだけは帰艦する事が出来なかったのであった。


バービー人形と言うよりも、等身大ドールと言うべきか…

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